キリアンです。
「営業をやるなら、まずは雑談で場を温めろ」 「気の利いたジョークの一つでも言えないと、懐には入れない」
そんな言葉を信じて、必死に時事ネタを仕込んだり、相手の趣味をリサーチして無理に話を合わせようとしていませんか? そして、商談が終わった後に「今日も当たり障りのない話で終わってしまった……」と、自己嫌悪に陥る。
もし、あなたが「自分は口下手で、雑談が苦手だ」と悩んでいるなら、おめでとうございます。 あなたは、その他大勢の「喋りすぎる二流営業マン」を追い抜く、最大の才能を持っています。
なぜなら、ビジネスにおける雑談とは、仲良くなるための手段ではなく、相手の「ガードを解くためのノイズ」に過ぎないからです。
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世の中には、驚くほど「喋りの上手い無能」が溢れています。 彼らは場を盛り上げるのは得意ですが、肝心の成約には至らない。 なぜか? 自分が喋ることに夢中で、相手の心の「温度変化」を1ミリも観測していないからです。
私は音が聞こえにくい分、無意味な雑談を極限まで削ぎ落とします。 私が商談の冒頭で行うのは、場を温めるための「お喋り」ではなく、相手の「デフォルト(平常時)の身体反応」をインプットする作業です。
・この人は、リラックスしている時、どこに視線を置くのか。 ・手の位置は? 呼吸のリズムは? ・質問に対して、何秒の間を置いて答えるのがこの人の癖か。
雑談とは、この「基準値」を測るための観測時間に過ぎません。 口下手な人は、自分が喋らなくていい分、この観察に全神経を集中させることができます。
一方で、雑談が得意な人は、自分のトークで場が盛り上がっているという「錯覚」に酔いしれ、相手が心の中で引いているサインを見逃します。 「いやぁ、最近の景気はどうですか!」「ゴルフ行かれてるんですか!」 ……そんなパクリの質問を投げつけられている時、顧客は「ああ、またこの手の営業か」と、脳内に鉄壁のディフェンスを築いているのです。
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巷のコミュニケーション本には、「共通点を見つけて盛り上げよう」なんて書いてあります。 ……甘いですね。
プロの商談において、顧客が求めているのは「話し相手」ではありません。 「自分の問題を解決してくれる専門家」です。
私が42歳で、一度は社長から社員へ転落し、そこから再び這い上がってこれたのは、口の巧さがあったからではありません。 むしろ、「沈黙を恐れず、相手の変化を凝視し続けた」からです。
私が一言も発さずにじっと相手を見つめている時、相手は「この人は、私の言葉の裏側まで見透かそうとしている」という、静かな圧力を感じます。 この圧力が、相手の「適当な嘘」を封じ、本音を引き出す引き金になるのです。
雑談が苦手なら、無理に喋る必要はありません。 「今日は〇〇様の課題について、真剣に考えに参りました。ですので、無駄な世間話は抜きにして本題に入らせてください」 そう言って、まっすぐに相手の目を見てください。
その誠実さと、静かなる「観測」の構え。 それだけで、チャラチャラと喋り倒す営業マンの100倍、あなたは信頼されます。
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営業は、口でするものではありません。 「目」と「間」でするものです。
もしあなたが、自分の内気さや口下手さを欠点だと思っているなら、今すぐその認識を破壊してください。 それは、あなたが「市場(相手)」という真実に深く潜るための、神様から与えられたギフトなのですから。
次回は、精神論に逃げる営業マンを叩き切ります。 「『断られるのが怖い』あなたへ。拒絶は『声』ではなく『瞳の揺れ』で予測できる」という、恐怖を合理的に消し去る方法をお伝えします。
キリアン