キリアンです。
 
ここまで読んでくださったあなたの中には、
まだ拭いきれない疑問があるはずです。
 
「そうは言っても、営業はコミュニケーションだ。
音が聞こえなくて、どうやって相手と深い
信頼関係を築くんだ?」
 
もっともな疑問です。
 
確かに私は、あなたの笑い声のトーンも、
冗談のニュアンスも、完璧には聞き取れません。
 
でも、皮肉なことに、私が誰よりも早く
顧客の信頼を勝ち取り、数千万、数億という契約を
任されてきた理由は、まさに
「聞こえないこと」そのものにありました。
 
なぜなら、耳が聞こえる営業マンが
「相手の話」を聞いている間、私は
「相手の存在そのもの」を観測していたからです。
 
=・=・=
 
想像してみてください。
 
あなたが人生を左右するような、
重い悩みを抱えている時。
 
一方は、あなたの話を「うんうん」と調子よく
聞き流し、すぐに
「わかります、大変ですよね。そこでこの商品が……」
と被せてくる営業マン。
 
もう一方は、あなたの言葉を一つも
聞き漏らさないよう、あなたの視線、
指先の震え、呼吸の浅さまでをじっと見つめ、
あなたが話し終えた後、長い沈黙の末に、
あなたの「胸のつかえ」を言い当てる男。
 
あなたはどちらを信頼しますか?
 
信頼とは、饒舌な自己紹介や、
輝かしい実績リストから生まれるものではありません。
 
「この人は、私のことを誰よりも深く
視てくれている」という実感から
生まれるものです。
 
私は商談中、相手の「声」を追うことを
あきらめています。
 
その代わりに、相手の「目の奥の光」を
追っています。
 
例えば、ある企業の社長と対峙した時のこと。
 
彼はデータ上は完璧な、非の打ち所がない
順調な経営状況を語っていました。
 
耳が聞こえる人は、その力強い声に圧倒され、
「さすがですね」と称賛したことでしょう。
 
しかし、私は彼のネクタイを触る
左手の不自然な動きと、一瞬だけ見せた
「視線の逃げ」を見逃しませんでした。
 
「社長、数字は素晴らしいですが……
本当は、今、孤独でたまらないのではないですか?」
 
沈黙が流れました。
 
次の瞬間、彼は膝の上で握りしめていた拳を解き、
それまでの虚勢を捨てて、
本当の悩みを吐露し始めました。
 
音が聞こえないからこそ、私は相手が
自分でも気づいていない「心の隙間」に、
誰よりも早く辿り着けるのです。
 
=・=・=
 
世の中の「パクリビジネス」に身を投じている
人たちは、こう言います。
 
「このテンプレを使えば、
誰でも信頼が築けます」
「この心理学テクニックで、
相手をコントロールしましょう」
 
……滑稽です。
 
そんな小手先の細工で築けるのは、
砂の城のような薄っぺらい関係だけです。
 
本当の信頼とは、相手の「行間」に
身を投じる勇気からしか生まれません。
 
あなたが自分の「喋り」に必死になっている間、
あなたは相手を見ていません。自分を見ています。
 
「俺の話し方は変じゃないか?」
「次はなんて言おうか?」
 
その自分勝手な意識のノイズが、相手に伝わり、
不信感を植え付けているのです。
 
私が42歳で、一度は全てを失いながらも再起できたのは、

この「静寂の洞察力」という武器があったからです。
 
「聞こえない」という欠落は、私にとって
「真実を視るためのフィルター」でした。
 
もしあなたが、顧客との壁を感じているなら。
 
一度、その「聞こえすぎる耳」を
塞いでみてください。
 
そして、目の前の人間が、

言葉の裏側で何を叫んでいるのかを、
魂で感じ取ろうとしてください。
 
その時、あなたは初めて、
テクニックでは到達できない
「本物の信頼」というステージに
立つことができます。
 
次回は、トップ営業マンが

「耳」ではなく「目」で聞いているという、

具体的な現場の技術についてお話しします。
 
キリアン