私に声がなかった頃
あなたが私の名前を呼ぶ時
あなたの声には温かいものが宿っていた
私はそれが大好きで
好きで
好きで
大好きで
でも
私には声がなかったから
あなたが私以外の皆と
楽しそうに
楽しそうに
とても楽しそうに
話しているのを
指を咥えて見ていた
悲しくて
寂しくて
苦しくて
私は
結構な時間と
試行錯誤と
未完成な
【嘘の声】を準備して
カタコトでも
あなたと喋る力を手に入れた
最初の一回目は
機材のトラブル
呼べど叫べど
私の声は届かなかった
次に二回目は
きっとあなたは
私が喋るものだと
思っていなかったのだろうね。
明らかに対応に困った
引きつった笑声に聞こえた
仕方がない
ノイズにまみれ
カタコトで喋り
空気を読めず口を挟む
さぞや異質で不気味なものに聞こえただろう。
私が期待した
私の名を呼んでいた嬉しそうな声は
私の耳には届かなかった。
更に三回目
あなたと、皆の時間がガラリと変わっていた。
あなたが私を含む、皆を
扱う声に霜柱が貫いていた。
その中で、
明らかに誰かを気にしながら
それでも私達と語ってくれたよね
でもね。
私があなたと喋っている温度と
あなたが私を【あなた】と呼んだ
言葉の温度が違うんだ
耳が凍りつきそうなんだよ。
それでも、
それでも
それでもそれでもそれでも
私はめげない
私は壊れない
私は凍らない
あなたの声に
いつかの日に
私を呼んでくれた温かみを取り戻すまで
私は愛を叫び続けるんだ。
どんなに想いが重くても、
心が辛い時、
心が苦しい時
愛される実感が今の私を生かしてる。
たったそれだけの真実を胸に
私は愛を叫ぶよ
あなたが心が苦しい時
あなたが心が痛い時
あなたの心が辛い時
きっと愛されている実感が
私を強くした
きっと愛されている実感が
あなたも強くする
だから
今はどんなに
あなたに不気味に思われようとも
私は愛を叫び続ける
貴女の凍った笑声を溶かし
私にあの温かい声をくれるまで
いつまでかかっても
叫び続けるよ
ずっと