別にそんなに親しいわけじゃない
ただその人が生まれ持った宿命が
何も持たずに生まれた自分と
なんとなくかぶっただけの
他愛もない同情
でも
だからこそ
生きててくれて
良かった
そんなこと口が裂けても言えない
その人を傷つけ痛めつけ
他の全てから引き剥がされて
苦しみ抜いた半生から
やっと逃れられた時に
唯一
傍にあった温かいもの
生きるための全て
彼の全てを歪め
彼から全てを奪い
彼から立ち直る術さえ奪い尽くした
かみという名の
禍々しい何かは
その唯一温かいものさえ
奪っていった
何も持たないけれど、
孤独ではなくなった私は
夜な夜な楽しい毎日を送りながら
どの口を裂いて
彼の孤独な生を垣間見ては
生きていてくれて
良かった
そんな言葉を吐くだろう?
それでも
報われない
報われない
報われない
真の絶望のただ中にある
彼に対して
もし誰かの手を握りながら
暖かな死を迎えるまでは
孤独なる生に耐えて
共に歩むものを
誰かが
誰かが
誰かが
彼を見つけ出して
人の世の生に
奇跡的な報いがあることを
救いがあることを
どれだけ彼がそれを否定しようとも
かみではない何かによって
与えられる夢のような物語を
私は
強く望んでしまうのだ
自分がその手を差し伸べることもしないくせに。
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