残るもの 変わるもの そして | Forest

Forest

なんか詩とか描いてます

戻ってきたの
もうなにもおぼえてないけど

もう小さい頃に後にした
生まれた街の近くに

歩きまわっても
何も思い出せない。


懐かしい記憶なんて蘇らない。


でもね

空を見上げる機会は増えた

高いビルに囲まれているはずなのに
意外と高く見える

遠くから見ると
光るビーズをぶちまけたみたい


昼間でも明かりが灯る空

夜でも淡く白い空


でも目線の高さの町並みはなお面白い



記憶に無い街

知らない道

見覚えのない建物


通った覚えのない商店街

この近くに生まれたのに。
九歳まではこの近くにいたはずなのに。

全然何も思い出せないけど


まるで初めて通った道のような
実際本当に通ったことがあるのかも

もう覚えていないはずなのに。


歩みを進めるたび
呼ばれてる気がする

誰とはなく誰でもなく

私を呼ぶのは誰?
私を呼ぶのは何?



記憶に残らない街

覚えていられない道

どこに行っても同じようにみえる建物



私の今まで通り過ぎてきた記憶

過ごしてきた町並みは
この街以外の町並みは

思い出せるんだ
思い出せるんだけど

なんだろう。遠い。
遠い記憶。
テレビを見ているような


記憶に無い街
見てるかもしれないけど見覚えのない街

本当は見たことがないかもしれないのに。

なんだろう。
戻ってこれた気がする。


私の大事だった人はもういない。

お父さんも。
お母さんも。

住んでたところもわからない。
もう。辿るすべもない。


でもね。

歩みを進めるたび
見知らぬ街を見るたび

なんだろう。懐かしい。


きっとこの国に最後に残った豊かさは

古い建物を残すことの出来る力は
新しいものに作り変える力は

ただ。私の中に残る感傷を

思い出せる記憶と
古い映像と
ただ見渡せる新しい景色の中に

幻のノスタルジアを呼び起こしてるだけかもしれないけど



失った記憶と
失った暖かさと
失った人たちの

存在したはずなのにもう
掬えない記憶たちへ


私は帰ってきました。


新しい記憶と
新しい暖かさと
私の仲間たち。


存在しないはずなのに。
確かにここにいる。


お父さんへ。
お母さんへ。

私は帰ってきました。

貴方達と過ごしたかもしれないこの街へ。


もう何も残っていないけど。
貴方達の記憶すら

もうすっかりこぼれてしまっていることに
今更気づくけど。

独りで旅立った私は
5人になって

残るもの
変わるもの


消えるもの…

貴方達はもういない。
生まれ変わってなんかない。

風に溶けて
雨になって

どこかに混ざって消えてしまったことでしょうけど


それでも残るもの
それでも変わるもの

消えるもの…

それでも


私は帰ってきました。
私は帰ってきました。

誰も待っていないこの街へ。

それでも。
「おかえり」の声なんて聞こえないけれど。



私は。
私達は。

まだ




諦めてないの。