『ブレインダメージ』詳細情報
ブレインダメージ 駕籠真太郎 ワニブックス(GUM COM!CS) 2017.12
猟奇的なエロスと突飛な発想が見るものに絶大なインパクトを植え付けるカルト作家、駕籠真太郎による全編本格ホラー仕立ての短編集。Comic Gumで短期連載されていた。サスペンスから本格ホラーまで作者特有の奇想が詰まっているが、氏の作品の中では比較的なじみやすい入門編的一冊。ただし、Amazonでは一応R-18作品扱いのため、未成年は見ない方がいいかも?…ヴィレッジヴァンガードで普通に販売されているけれども。
『ブレインダメージ』各作品リスト
1.「4人の迷宮」……Comic Gum(2016.5)
とある閉鎖空間に集められた全く同じ見た目の4人の少女たち。そして、彼女たちを襲う覆面の殺人鬼…という謎だらけの展開で幕を開けるサスペンスホラー。全ての謎や不可解がオチで瞬く間に回収される様とその下らなさにいい意味で感情をすっぽ抜かれる名作。この作品一作で本書をお気に入り認定したくなるほど好きな漫画。ブログあり〼。
2.「呪いの部屋」……Comic Gum(2016.6)
心霊現象が次から次へと起こる部屋に住む少女とその衝撃の真実について取り扱った作品。『キャビン』という映画を何となく思い出す一作。全然違うんだけども。描きながらオチを考えていたというアクロバティックな制作背景があったりする。
3.「家族の肖像」……Comic Gum(2016.7)
とある家族の身の回りで起こる消失事件について取り扱った作品。ギャグっぽいノリで進んでおきながらのラストの喪失感で見せる緩急は見事の一言。AmazonにてR-18判定を喰らったのは多分この作品か出版社のせい。ブログあり〼。
4.「血の収穫」……Comic Gum(2016.8)
本書に収録されている中で多分一番王道なホラー作品。車に乗っている人間が突然怪死する事件を探るお話。怪奇が雑に対処される話はあまり好みのホラーではないので、本作もそこまで思い入れはない。でもやっぱり発想や描写が読みでがあって面白い。作者万歳である。
『ブレインダメージ』 感想
最初の作品詳細にて勝手に「入門編」と書きましたが、これは単に僕個人が初めて読んだ駕籠真太郎先生の作品だからに過ぎず、公にそう言われているわけではありません。ただ、本作が展開的にも描写的にも比較的マイルドで、猟奇作品に慣れていない読者でも受け入れられやすいというのは間違いないと思います。
またいつか別の駕籠真太郎先生の短編集を取り扱った際などに細かく言及したいですが、氏の作品は猟奇趣味が苦手な人にはもちろん、得意な人にも今度は複雑だったりダイナミックだったりするストーリーについてこられるかという第二の壁が待っている、非常に読む人を選ぶ作家さんなのです。繰り返しになりますが、本書はその点、エロもストーリー規模も緩やかです。
掲載作品は4作とちょっと少なめですが、かなり粒ぞろいなうえ、それぞれ話の方向性が異なるバラエティに富んだ短編集となっています。緩やかと再三言いましたが、それでも奇想は凄いですし、グロくてナンセンスな描写も盛りだくさんです。駕籠真太郎先生ファンにも、きっと楽しめる内容なのだと思います。本書を経て、いくつか先生の作品に触れて僕もすっかりファンの一人ですが、それでも本書は大好きです。
ただ、それほどまでに本書を推す背景には、各作品リストで語ったように「4人の迷宮」の存在が大きいようにも思えます。全体通してすこぶる名作なんだけれども、それでも一発目の爆発力がデカすぎる……山下達郎の『For You』みたいな短編集、という評価はいくら何でも双方に失礼ですね。