今回の話とはあんまり関係がないのですが、丸尾末広先生の短編漫画で「電気蟻 吾が分裂の華咲く時」というものがありまして。話云々よりも一層雰囲気が好きな漫画なのですが、特に面白いのは作品にお勧めのBGMを指定している所です。

 DAFの『愛と黄金』、そして早川義夫さんの『かっこいいことは何てかっこわるいんだろう』の二つなんですが、この漫画どれだけじっくり読んでも5分とかからず読み終えてしまえちゃいます。どう考えてもアルバム2枚も聞いている暇はありません。まあ、嫌がおうにも読み返さざるを得ない奇妙な味わいがある作品なので、読むごとにBGMを変えるのもいいかもしれませんね。曲を変えるだけで印象ががらりと変わるなんてこともあるかもしれません。どちらにしてもアルバムに合わせて読むには短すぎる作品ですが、何にしろ漫画にBGMをつけるという風潮はかなり面白いですね。今まで結構な数の短編を取り上げてきましたが、それら一つ一つに独断と偏見でBGMを指定したくなります。何て、偉そうなことができる程音楽に精通してるわけではないんですが。

 

 長くなりましたが、その点本作「ハイウェイスター」は音楽に通じていない私でも容易に脳内BGMを設定することができます。言うまでもなくディープ・パープルの「ハイウェイスター」まんまです。単にタイトルにかぶせて選んでいるだけでなく、本作にある疾走感が何ともブラックモアのギターに合っています。作者、大友克洋先生も狙ってのことなのは間違いありません。短編集の表題作にもなっているくらいですからね。

 アルバム『マシン・ヘッド』の一曲目にあたる曲なので、アルバム通してBGMにすることは無理でもダブルで「ハイウェイスター」の世界を堪能することはできそうです。

 

 そんな本作、お話としては至って単純明快です。ヒッチハイカーの女性がレース狂の男のおんぼろ車に乗っけてもらうお話です。ガソリンは他の車から盗んだものを使い、どこからか入手した警察の無線機で嘘の事故を報告し誘導。そして道行く車とお金をかけてスピード勝負をします。道路交通法違反、器物破損罪、窃盗罪、公務執行妨害、賭博罪etc…。何ともアウトローな男ですが、ヒッチハイカーもそんな男との旅が面白いようです。何より男は強い!ボロ車なので全員ホイホイ勝負に乗りますが、誰一人として勝てません。ギリギリの勝負を演出して、最後まで勝負を降りさせない駆け引きをする余裕だってあります。

 

 とまあ、そんなお話です。いつもの大友克洋作品ですが、だからこそ超面白い。丸尾先生が2つアルバムを指定していたので、こちらも対抗して、あと2つアルバムを挙げましょう。どちらもディープ・パープルのアルバムで『ファイア・ボール』と『ディープ・パープル・イン・ロック』を推薦します。決して私のセンスで選んだわけではなく、どちらのアルバムも作中に名残があるのです。それだけディープ・パープルを意識した作品だったという事ですね。是非それらの要素を作中で探してみてください。

 

(出典:『ハイウェイスター』大友克洋 双葉社 1979年10月)