『うる星やつら』のパイロット読切が楳図かずお先生、松本零士先生、赤塚不二夫先生、藤子不二雄先生らに絶賛され華々しくデビューされてから現在に至るまで永遠に第一線で活躍され続けているウルトラ漫画家、高橋留美子先生の短編です。大事かと思いきやそこまで大事でもない、それでも本人たちにとっては結構深刻、という狙って出すのは逆に難しいラインの日常コメディを数多く出されていて、「お礼にかえて」はその中の一つです。アニメ化もされた作品です。

 留美子先生の日常短編はおっさんが主人公の場合は若い少女との勘違いロマンスか、冷めた家庭への愛情がちょっともつれてまた再燃するかの2パターンが主流です。主人公が主婦の場合にも頻出するパターンがあり、その場合は姑とのいざこざやご近所トラブルの2つです。本作は主婦が主人公のご近所トラブルです。マンション内に君臨する女王に今一つパッとしない少数精鋭で立ち向かう構図はドラマ『さいとうさん』の序盤を彷彿とさせます。普段全くドラマを見ない私が全話きっちり見ためずらしいドラマです。けっしてハマっていたわけではないと思うのですが、当時小学生だったのでいまいち作品にどんな思い入れがあったのか思い出せません。


 頼りないパーティの一人である鵜飼おばあちゃんから預かった九官鳥の発したキーワード「カニしゃぶ」。そしてその言葉を聞いて血相を変える女王。貧弱パーティ、起死回生のチャンスか!?流石は留美子先生小規模なスケールでもこちらを引き込むマジックは完璧です。

 ネタバレになるので「カニしゃぶ」の因縁については触れられませんが、ルーミックワールドらしいストンと落ちるタイプのど真ん中コメディとして楽しめる、魅力いっぱいの作品です。『らんま2/1』を読んでる時もずっと思っていたんですが、高橋留美子先生のコメディ作品は最後の一コマがすごくのほほんとしていて癒されます。本作でも最後にパーティでカニしゃぶを食べるシーンがいい味出しています。舌鼓を打つ鴨下さんが可愛いです。

(出典:『高橋留美子傑作集 専務の犬』高橋留美子 小学館 1999年7月)