今日がクリスマスだからというわけではないですが、ある青年への少女の純真なプレゼントのお話です。つげ義春先生は文学的なテイストを漫画に溶け込ませ、エッセイから時代劇、シュルレアリスムものまで多岐にわたる短編を描かれています。本作「古本と少女」はつげ作品では珍しい青春という言葉が似合う短編ですが、背景には古本屋や下宿といった下町の雰囲気や貧乏学生の暮らしぶりといったある種、とても作者らしいテイストを楽しむこともできます。
「欲しい!でも高い!」本屋に行けば100回は繰り返す思考ですね。この作品が描かれた1960年の1000円がどれほどの価値ったのかは分かりませんが、苦学生には出せない値段みたいです。そしてこともあろうか、その欲しい本に1000円が挟まっていたら…。よっぽどの聖人でもなければ主人公と同じ行動をとるでしょう。その理屈で行けば、最終的にお金を使わず持ち主に返しに行った主人公は聖人という事になります。
しかしこの話、少女のいじらしい行動が可愛らしくて大好きな短編ではあるのですが、この話。1500円出した本の持ち主には何も返ってこなさすぎではないでしょうか。せめて自分のものではなくても1000円くらいは受け取っておけばいいのに、ここまでやられると聖人君主を通り越して心配になります。この人もお金がないだろうに…。まあ、でもあんなに可愛らしいお手紙を見れば、こんな粋なことをしてやりたくもなるでしょう。
(出典:『紅い花』つげ義春 小学館 1995年1月)
