「円安」の恐ろしさ | 日本の未来を考える

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吉野家の牛丼(並)が380円に値上げされました。
春先の280円から比べると、値上げ幅は実に3割以上。
円安による材料調達価格の高騰が主な理由です。

(マクドのハンバーガーと共に、学生時代にお世話になりました。最近は知りませんが、当時は「一度吉牛に行ってみたい」女の子が意外と多く、「美味しい」と感想を言われても、普段、単なる”食料”としか見ていない自分は戸惑ったものです。むしろ競馬やパチで負けた後の金欠の思い出の味が・・・)

「円安」の話に戻します

政府・日銀の発行する通貨・「円」の価値の取り決めが為替レートです。

歴史をおさらいしますと、戦後、1ドル=360円でスタートした日本経済。朝鮮戦争特需や欧米の需要があり、日本製品が飛ぶように売れました。高度成長期を経て、日本は世界第二位の経済大国となり、輸出立国として貿易黒字を拡大し続けます。

しかし米国レーガン主導の1985年のプラザ合意で、1ドル=230円から、1ドル=120円へ、大幅に円高となりました(この頃から、企業の海外移転が進み始めます)。
それでも成長を続ける日本経済は、”バブル”に突入します。「円高」、すなわち、海外の資産が安く買えるのですから、日本企業や資本家達は、今まで蓄えた豊富な資金で海外の不動産や絵画を買い漁ります。
バブル崩壊後、日銀の金融引き締め策もあり、一時、1ドル=80円まで円高が進行、これ以降、日本は「円高」が定着します。

企業は、北米や東南アジアなどへ海外移転(現地生産)を進め、人件費を抑え、同時に為替レートによる影響も抑制しました。
一方、国内では産業の空洞化が進み、労働者の賃金低下、少子高齢化などによる内需不足で、「デフレ不況」に突入しました。

というのが大まかな流れです。

このような状況で、一気に「円安」に誘導するとどうなるでしょう?

かつての「高度成長期」とは、日本の国内事情も、海外の状況もまるで違います。
日本の大手製造業はグローバル(多国籍企業)化し、海外生産比率が高まっているので、「円安」でも輸出はあまり伸びません。
さらに海外メーカーの追い上げが激しく、自動車を除き、日本製品の市場占有率も下がっています。
もはや、日本が「貿易立国」だった時代は過去の物です。

他方、輸入価格上昇は、日本経済に深刻なダメージを与えます。
輸出と無関係の国内企業(中小企業)にとって、原材料の高騰は利益を大きく圧迫します。
今回の吉野家のように値上げすれば確かに「物価」は上がりますが、企業の利益が増えるわけではないので、「賃金」は上がりません。
いわゆる、「タチの悪いインフレ(コストプッシュインフレ)」状態です。

国民の可処分所得以上に物価が上がれば、物は売れません。
円安分(輸入価格上昇分)を除いた本来の価格は上昇していないので、企業の収益は増えません。

つまり、日本は依然として「デフレ不況」のままなのです。

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やるべきことは、「内需拡大」です。
GDPの大半を占める内需が下落している限り、経済成長はあり得ません。

では、国内需要を喚起するにはどうすればいいのか。

最も有効なのは、1.最低賃金引き上げ2.減税3.社会保障の充実です。

欧米のように、最低賃金を時給1,200円程度に引き上げます。
(1日8時間労働で、約1万円)
特に消費意欲の高い若年層の需要が喚起されます(少子化対策にもなります)。
それで経営が成り立たないなら、元々そんな経営モデル(ブラック企業)がおかしいのです。

「減税」は、不況対策として経済学の初歩中の初歩です。
消費税率を5%に戻す、あるいは、0%にすれば、速攻、確実に効果が出ます。

「社会保障の充実」は、成熟国家の証です。
予算が足りないなら、相続税(属人=税金逃れを防止)や資産課税で補います。

「法人税」を下げる必要はありません。下げたところで、パナソニックのように「国内回帰はない」という企業が大半でしょう。
それよりも、「最低賃金を引き上げと減税」で、「国内需要を高める」方が、企業にとって魅力的な市場となります。

次に「円安」を是正します。
日本はもはや「貿易立国」ではなく、円安によるダメージの方が大きい国です。1ドル=100円程度まで是正します。

「公共事業」は、優先順位とグランドデザインを考え、長期計画を立てて行うべきです。
高度成長期に造られた既存インフラの更新ですら、今後2、3百兆円かかると試算されています。無駄な箱物、じゃぶじゃぶ公共事業など行う余裕はありません。各自治体に権限と予算を振り分け、効率良く行います。

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「インフレ」と「株価上昇」が目的化したアベ政権では、景気回復も財政再建も、絶対に不可能です。
輸入コスト上昇による「悪性インフレ」にはメリットがありません。
株価上昇も、資産効果はあれど、日本の経済成長にはほとんど寄与しません。

アベノミクスで、”億万長者”が増えました。
しかし、1人に1億円配るのと、100人に100万円ずつ配るのと、どちらが経済効果が大きいかは誰でも分かるでしょう。

量的緩和による「円安」(1ドル=120円)で、ドル計算では、日本の価値は3分の2に減少しました。
海外からの観光客が増え、日本で買い漁っていく様は、まるでバブル期の日本人のようです。

まさに、「ディスカウント・ジャパン
」状態です。

アベ首相の言う、「この道」とは、
すなわち、「日本の衰退の道」です。


上に書いたように、他にいくらでも「」はあります。
アベ政権が目指す道は、「いつか来た道」かもしれません。

いずれ、「吉野家の牛丼」が、ぜいたく品になるかもしれませんね。
(あるいは、「何の肉だ?これ」になるかも)


おまけ

katsukoさまブログより

壊国奴安倍はGDP世界9位から29位に落とした。



同じテーマ(円安)ですが、こっちの方が分かりやすいかも(・∀・)