『日本で暮らすチャイニーズガールを専門家が物語にしちゃいました』
■第2話 雇用契約
晴れてチーリンは念願の貿易会社「㈱サムライEXトレーディング」に就職が決まりました。
新天地での期待と不安に興奮を抑えきれない様子です。
久しぶりに再会した大学の先輩でもある社会人のれいなとの会話も弾んでいるようですが、入社に際しての手続きについてちょっとした心配があるようです。
チーリン「れいな先輩、教えて欲しいんですけど、入社時に会社へ提出する書類のリストに 『雇用契約書』っていうのがあるんですよ~。何のことだかわからないんですけど…」
れいな「あー、それね。 私も最初は何のことだかさっぱりわからなかったから無理もないわよ」
チーリン「何なんですか『雇用契約書』って?」
れいな「うん。他にも呼び方があって『労働契約書』や『労働条件通知書』って言ってね、要は入社するに当たっての給与や勤務時間なんかを会社とチーリンとの間で合意しましたよ~、って感じの大切な書類なのよ」
チーリン「へえ、そうなんですか! じゃあ、ちゃんと良く読まないとダメですよね!」
れいな「そうそう!入社時の説明と違う内容で契約とかしちゃうとあとで泣くことになるからね」
チーリン「そしたらウケますよね(笑)!」
れいな「…どの辺がウケるのよ(苦笑)」
チーリン「…」
【解説】(社会保険労務士 井上 信亨)
特定社会保険労務士&行政書士の井上です。
今回、チーリンの会社で入社時に提出する書類は「雇用契約書」でした。
ただし、一般的には「労働条件通知書」や「労働契約書」と呼ばれるものの方が馴染みがあるかも知れません。
上記3つのいずれの書類も労働者が会社で働くこととなる具体的な“労働条件”(労働基準法第15条)を定めたものなのですが、「労働条件通知書」だけは他の2つとはやや性格が異なります。
雇用契約書と労働契約書は、その名称に「契約書」と付いていることからもわかる通り、会社と労働者との双方が合意して初めて成立するものです。
一方の労働条件通知書はというと、労働者を雇用する立場の会社側が労働者の勤務することになる条件を一方的に通知する形式で行うものなのです。
会社側が労働者に明示しなければならない項目も法令等(労働基準法施行規則第5条)で細かく規定されており、違反者には罰則の適用もある極めて重要なものなのです。
入社時に交わすその契約(または通知)内容と実際に勤務したときの内容が異なっていれば、労働者は一方的にその契約を解除することも可能です。雇用契約書等に記載しきれない勤務条件は別に就業規則で定めているケースも多いので、契約書並びに就業規則はしっかりと確認しておくことをお勧めします!
~参考法令~
(労働条件の明示)労働基準法第15条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。