BS 9月に放映される名作映画案内 Part3 | アラフォー世代が楽しめる音楽と映画

アラフォー世代が楽しめる音楽と映画

結婚、育児、人間関係、肌や身体の衰え、将来への不安...
ストレスを抱えるアラフォー世代が、聴いて楽しめる音楽、観て楽しめる映画を紹介します。
でも自分が好きな作品だけです!    

 21世紀に生きる今、40年以上前の一大映画ムーヴメントだった“アメリカン・ニュー・シネマ”なる造語は死語になった感がある。そもそもニュー・シネマとはそれまでの映画とはどこが違い、何を基準に区切るのだろうか?
 “アメリカン・ニュー・シネマ”とは更にその10年前に興ったフランスの“ヌーヴェル・ヴァーグ”同様、映画批評家達が用い始めた言葉である。これは特定の制作手法、或いは固定化された理論や思想上の制約は無いので、明確な定義を与えることは難しい。そう考えるとどの作品が該当し、どの作品が対象外であるか選別するのもあまり意味が無いような作業に思える。
 しかしながら一般的に“アメリカン・ニュー・シネマ”と呼ばれる作品群の中から、特色と意義を当時の時代考証から整理することは可能だ。

 第2次世界大戦下のヨーロッパ諸国は国土を爆撃で破壊された。従ってイギリスもフランスも厳密な意味での戦勝国ではなく、敗戦国ドイツやイタリア同様に食糧確保、建造物再建、経済復興が急務であったにも拘らず、その道程は困難を極めていた。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 これに対し、本土を戦争の脅威に晒されなかったアメリカは唯一の戦勝国と言え、終戦直後から50年代までの10余年は経済的繁栄に満ち、人々は自信と誇りを持っていた。しかし60年代を迎えると、それまでの勢いに陰りが見え始める。ケネディ大統領の暗殺、ヴェトナム戦争の泥沼化は若者達に漠然とした不安を与えるようになった。それまでの強い国の神話が崩壊し、アメリカの陰の部分が明かされてくる。人種差別問題が高揚し、学園闘争が激化する。嫌気が差した若者はヒッピー文化に傾斜してドラッグに手を染めていった。いつしか若者達の間で、それまで信従していたもの、美徳とされていたものに異議を唱える考え方が芽ばえていったのである。
 そんな時代の空気は映画にも反映された。造成された絢爛な映像美、正義感や倫理観を問う内容、ハッピーエンド...映画自体は素晴らしくても、自分達の生活と乖離したものは敬遠されていった。価値観が大きく反転し、主人公達は最後に無残に死んでしまう映画に共感を抱くようになっていく。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 こうした“陰の時代”を告げる映画として真先に登場したのが、ウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイ主演の『俺たちに明日はない』である。
 実在したボニー&クライドの鮮烈な青春像を綴ったこの作品は夢物語を否定し、若者達が身近に感じている閉塞感にスポットを当て、誰もが自己投影されるような内容になっている。時代は1930年代の大恐慌真っ只中、テキサス州ダラスを中心に派手に暴れ回りながらも、何か満たされないボニー&クライドの心の様相を描いている。
 その荒廃した感情が60年後期の不穏な空気と見事なまでに合致し、67年12月にタイム誌がボニー&クライドのカバー・ストーリーを組むに至り、『俺たちに明日はない』は俄然当時のアメリカを象徴する映画となったのである。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 処で『俺たちに明日はない』のボニー・パーカー役は、ウォーレン・ベイティ達ての希望でかつて『草原の輝き』で競演した元婚約者ナタリー・ウッドに打診していたそうだ。だが何らかの都合で破談となり、代わりに何らかの理由でフェイ・ダナウェイに決定したのだ。
 結果的にボニー役はフェイ・ダナウェイが最適だったと思う。それは彼女が映画の中で“現実感あるフェロモン”を放ったからだ。例えばボクは絶世の美女ヴィヴィアン・リーやカトリーヌ・ドヌーヴに煽情的な衝動は起きないし、そもそも求めていない。あまりにも端然たる顔立ちに非現実的な雰囲気を感じるからであろう。肉感的なマリリン・モンローでさえ、それが演出だと判っているからこそ何処か醒めた目で観ているのだ。
 しかしフェイ・ダナウェイは違う! 彼女はボニー・パーカーをさも身近にいる女性のように演じたのだ。少し神経質なところがあり、惚れた男には一途で愛されることを願いながらも少し神経質なところがあり、波長の合わない人には悪態をつく。常に感情に正直な女でありながら、心が傷つき易い弱さも持っている。ボクはボニー・パーカー(=フェイ・ダナウェイ)のセクシーな容姿と強烈な個性に見惚れてしまったのである。
 この現実感が“アメリカン・ニュー・シネマ”のその後の路線傾向を確立したと思う。

 1931年夏、テキサス州ダラス。街は不況の真っ只中にあった。じっとり汗ばんでくるアパートの部屋。鏡に女の唇だけが映る。鏡で自分の顔を見ていたボニー・パーカーの全身は一糸纏わぬ裸身であった。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 ふと窓から外を覗くと、ダンディーな服装をした若い男クライド・バロウが車を盗もうとしていた。「ちょっと、それママの車よ。待ちなさいよ!」と叫んだボニーは急いで首から衣装を通し、階段を大股で駆け下りてきた。二本の脚はまるで頭上から覆い被さるような仰角で動く。
 これがボニー&クライドの運命的な出会いだった。クライドは強盗の罪で2年間の服役を終えたばかりだった。今まで何をしても上手くいった試しがないが、格好だけはつけたい性格のようだ。刑務所から出たばかりにしては似つかない高級な白のパナマ帽を被っている。ボニーはお洒落な身拵えのクライドに興味を持つ。
 ボニーは気の強いウェイトレス。毎日ピンクの制服を着ての下品な男性客の相手にうんざりしていた。それでも歌手になることを夢見ているのだが、現実は退屈で詰まらない日々。何か刺激が欲しかったようだ。
 そこに強盗家業の若者クライドが現れたのだから、興味津々となったのだ。クライドは胸のポケットからピストルを覗かせた。ボニーにとって銀行強盗して大金を手にすることは、考えもしていなかったことだ! 彼女は自分でもスリルを味わいたくなり、そのまま車に乗り込んだ。$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画

 クライドはボニーに良いところを見せようと小さな食品店に強盗に入った。大して時間は掛からなかった。クライドは外に出て、手に握った札束を見せる。強盗は上手くいったのだ。クライドは車から足がつかぬよう、近くに停まっていた別の車を盗み、ボニーを乗せて一目散に逃亡する。
 スリルを味わったボニーは大興奮して、クライドに抱きつき、キスの嵐。しかしクライドは嫌がる素振りをする。怪訝そうな顔をするボニー。どうやらクライドには性的コンプレックスがあるようだ...。
 二人はレストランで食事をする。クライドが「君はテキサスで一番の女だ! ドレスを着て高級なホテルに行きたくないのか?」と尋ねる。こんな刺激に有頂天になっていたボニーは、自分も度胸試しに強盗をしてみたいと思うようになる。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 それからの二人は銀行や食品店を襲う犯行を重ねるが、罪の意識は無かった。退屈な日々から一転、スリルと興奮に満ちた生活は二人を活き活きさせた。そして犯行が成功する度に二人の気持ちは駆り立てていく。流行の服装を着用するようになったボニーのモガ風ベレー帽は彼女のトレードマークになった。
 二人はガソリンスタンドでうだつの上がらない若者C・W・モスを仲間に引き入れた。ある時、誤って行員を射殺してしまう。この事件はニュースになり、アメリカ中にボニー&クライドの悪名が知れ渡ることになる。
 やがてクライドの兄バック夫妻が加入。“バロウ・ファミリー”を結成し、州を跨いでの大掛かりな犯行を繰り返していった。だが警察側の追跡も執拗になってくる。住処を警官達に囲まれた5人は派手な銃撃戦の末、命辛々逃げ出したのが、徐々に包囲網が押し寄せてくる。

 逃亡の最中、ボニーは母親が恋しくなる。再会した母親の寂しげな言葉に、ボニーは初めて自分達の置かれている状況を悟った。そのうちバックが射殺され、妻ブランチは逮捕された。
 重傷を負ったボニー&クライドはモスの実家へ逃げ込んだ。二人は心の何処かで破滅を感じる。怪我を治療で平穏な日々を過ごすうち、二人は普通の人間として真っ当に生きることを考えるようになった。しかし二人の夢が叶うことはなかった。モスの父親が息子の罪と引き換えに、警察と裏取引に応じていたからだ。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 そして運命の日を迎える。買い物の帰り道、モスの父親が車の修理をしていた。クライドが車を降りて何事かと近づく。ボニーは車の中で待っていた。近くの茂みから数羽の鳥が羽ばたく...。一瞬の静寂、クライドはボニーの方へ駆け出すが、ボニーは死を悟ったのか、優しい眼差しでクライドを見つめる。それは天使のように美しかった。
 その時! 茂みに隠れていた警官達が、社会の疎外者となったボニー&クライド目掛けて一斉に銃弾を放った。クライドのサングラスが飛ぶ。弾丸が身体を貫通したボニーはシートから倒れ、車から落ちそうになる寸でのところで留まる。尚も容赦なく二人の身体に弾丸が撃ち込まれる。無防備の二人の身体は蜂の巣状態になり、やっと銃弾は止まった。
 それでもボニーは最期の一瞬に、自らの危険を顧みず、自分を守ろうとしたクライドに彼の愛を確認したのだ。もしクライドに出会わなければ、彼女の人生の歯車は狂わなかったと思われるが、それでもボニーは幸せを感じていたのだ。


『俺たちに明日はない』/ウォーレン・ベイティ&フェイ・ダナウェイ、ジーン・ハックマン [DVD]

 フェイ・ダナウェイは1941年1月にフロリダ州で生まれた。父親は軍人だったので、幼女期からアメリカ各地やドイツ等を転々として育った。ボストン大学演劇科で学び、在学中に出演した舞台の演出家の紹介でエリア・カザンと知り合い、彼の勧めでリンカーン・センター・レパートリー・シアターに入団する。幾つか舞台経験を積んだ後、製作者サム・スピーゲルに見い出され、66年『真昼の衝動』で映画デビューする。
 翌年、『夕陽よ急げ』を経て、アーサー・ペン監督『俺たちに明日はない』のボニー・パーカー役の好演が光り、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされて一躍注目を集める女優となった。奔放で欲望の赴くまま犯罪を繰り返すボニー&パーカーの姿は異端であれ青春を謳歌する当時の若者像そのままであり、ラストで87発の銃弾を浴びて絶命する二人の凄惨な最期が奇妙な陶酔を放ち、若い映画世代の共感を呼んだのである。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 彼女は翌68年、『華麗なる賭け』でスティーブ・マックイーンと共演する。大富豪トーマス・クラウンは実業家として成功している一方、裏稼業の銀行強盗で莫大な財産を得ていた。保険会社に雇われた犯罪調査員ビッキーはクラウンを黒幕と見抜いて彼に接近していくのだが、在らぬ恋に陥ってしまう物語である。二人のエレガントな衣装と心理的駆け引きが見ものだが、ここでのビッキーはボニー・パーカーが更生し、そのまま職に就いて現れたのかと錯覚するほどだった。それだけボクはフェイ・ダナウェイとボニー・パーカーを同一視してしまうのである。

 西部劇『小さな巨人』でダスティン・ホフマンと共演した後、フェイ・ダナウェイは何と!ルネ・クレマン監督のサスペンス映画『パリは霧にぬれて』に出演し、産業スパイの暴虐に嵌り精神自失するジル役を見事に演じた。彼女は比較的キャリア・ウーマン的な上昇志向が強い女性の役柄が多いのだが、今回は全く異なる普通の母親を演じているのが珍しい。
 個人的には『俺たちに明日はない』から『パリは霧にぬれて』までのフェイ・ダナウェイの顔立ちが好きである。『パリは霧にぬれて』での彼女は、ルネ・クレマン独特の映像手法によって、とても綺麗で魅力的に撮られている。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 70年代の半ばまでは特にフェイ・ダナウェイが輝いていた時季である。『ドク・ホリディ』『三銃士』と佳作に出演した後の74年、彼女はロマン・ポランスキー監督『チャイナタウン』でジャック・ニコルソンと共演した。新ダム建設での権益を巡るハードボイルド作品である。彼女の役柄は町の実力者である実父(何とジョン・ヒューストン監督が俳優として登場!)に乱暴され、娘を孕んだ過去を持つ退廃的な貴婦人イヴリンだ。
 普段のフェイ・ダナウェイは仲々の鉄火肌で、演技を巡って変人ポランスキー監督と激しい言い争いをしたそうだ。怒ったポランスキーは撮影中にも拘らず、彼女の髪の毛を引っ張って姿を消す騒動となった。それでも彼女は『チャイナタウン』の熱演で、『俺たちに明日はない』に続いて2度目のアカデミー主演女優賞にノミネートされた。『俺たちに明日はない』ほどでないにしても死に様が妙に印象に残る美しさだ。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 同年、彼女は大作『タワーリング・インフェルノ』にも出演し、ポール・ニューマンの恋人役を演じたが、出番が少なく役柄的には地味だった。
 この頃、彼女は驚くべきことにJ・ガイルズ・バンドのピーター・ウルフと結婚する。この意外な組合せを知った時、ボクは仰天してしまった! きっと恋多き女性だったであろう彼女はかつて『恋人たちの場所』で共演したマルチェロ・マストロヤンニとロマンスがあったのだが、破局して数年が経っていた。
 そんな時期に出演したのがロバート・レッドフォードと共演した『コンドル』である。彼女はレッドフォード扮するCIAに命を狙われたコードネーム“コンドル”が自分が所属する組織の暗部の真相を暴こうとし、事件に巻き込まれる女性写真家を演じている。$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画
 演技の幅を広げたフェイ・ダナウェイは翌76年の『ネットワーク』で、遂に過去2度はノミネートのみで終わったアカデミー主演女優賞を獲得し、名実共に大女優と呼ばれるようになった。彼女はアメリカのテレビ業界を舞台に視聴率の為には手段を選ばない冷徹な敏腕プロデューサー役だったが、氷のような冷たい美貌に加え、知性とエゴイスティックな強引さを併せ持った女性像を演じさせたらフェイ・ダナウェイを置いて他にいないと思った。
 しかしボクはこの映画での必要以上に痩せこけてしまった顔立ちが好きになれない。思えばこの頃から作品ごとに容貌が変化していった気がする...。

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 続いてフェイ・ダナウェイはサスペンス・ホラー『アイズ』で猟奇殺人者に命を狙われるプロの写真家役を演じ、女性の強さと意地を持ち前の演技力で上手く表現した。だが如何せんストーリーがお粗末だった。彼女に責任はないが...。
 翌79年には感動作『チャンプ』に出演し、自立心が強く仕事を選び、夫と幼い子供を捨てた母親を演じた。こういうキャリア・ウーマン風の役柄では彼女の個性は遺憾なく発揮されるようだ。ただ『ネットワーク』の時とは打って変わって、まるで妊娠しているのでないかと勘ぐるほど太り気味だったのが残念に思う...。

 実はボクのフェイ・ダナウェイ崇拝はこの『チャンプ』で終わっている。丁度この時期、ピーター・ウルフと離婚したことでも一区切りが着く。勿論、彼女は80年代以降もコンスタントに映画出演し、個性的な魅力を振り撒いているが、もはや主役として活躍する場を与えられなくなったのだ。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 不本意にもその原因は彼女主演の映画で起きた。主役を張ることが彼女の意志なのか、製作者側の強い意向なのかは判らないが、結果的に児童虐待を描いた『愛と憎しみの伝説』(81年)に出演したことが、その後の映画人生に大きなダメージを与えたと言っても過言ではない。
 この映画は往年の大女優ジョーン・クロフォードの伝記を描いたものだが、フェイ・ダナウェイのメイクアップがどぎつく、観客からは失笑が漏れたそうだ。それにも増してかつてのハリウッド・スターの私生活を辛辣に攻撃した内容が批評家から酷評され、児童虐待を扱った意欲作でも一般の観客からは敬遠されたのだ。
 彼女の演技は決して批判されるものではなかったのだが、ジョーン・クロフォードへの成りきり具合があまりにも強烈だった故に逆効果となり、異物を見るような目で受容れられなかったのである。こうして彼女は輝きを失ってしまう。

 たった一つの映画で女優生命を断たれた感のあるフェイ・ダナウェイは84年、まさかのSFコメディ『スーパーガール』に出演し、主人公ヘレナと壮絶な戦いを繰り広げる悪の魔女セレナ役を演じた。これでは際物ではないか! 余談ながらこの映画には彼女の他にピーター・オトゥールやミア・ファローも出演しており、彼らの良き時代を知るボクは一抹の淋しさを覚えてしまう...。$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画
 次第に活躍の場が脇役のみとなったフェイ・ダナウェイは90年代に入り、『アリゾナ・ドリーム』『ドンファン』と立続けにジョニー・デップと共演する。これはジョニー・デップが彼女の大ファンだったことから実現したと言われている。特に『アリゾナ・ドリーム』ではジョニー・デップが一目惚れをする40歳の未亡人という設定で絡むシーンがあるが、彼にとっては役得なのかも知れないが、観ているボク等は凄く違和感を覚えてしまう。もうフェイ・ダナウェイは実年齢50
歳を過ぎていたし...。
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 そういう面ではきっとピーター・フォークもフェイ・ダナウェイに好意を寄せていたに違いない。彼女は『新・刑事コロンボ』でゲスト出演したことがある。それは「恋に落ちたコロンボ」編で、彼女は大金持ちの淑女ローレン役で実娘の幸せを願って婚約者ニックを殺害する。捜査に来たコロンボに自分が疑われていることを知った後は、あの手この手の色仕掛けで迫り、撹乱しようとする。コロンボもほろ苦い思いをしながらも、最後は職務を全うするという内容だ。
 この時のフェイ・ダナウェイは久々に美しく見えた。当時のピーター・フォークは制作も兼務しており、やたら彼女が言い寄るシーンが多かったのは彼の希望だったのか邪推してしまう。因みにこのドラマで妖艶な雰囲気を醸した彼女はエミー賞を獲得している。

 一通り、フェイ・ダナウェイの代表作を追ってみた。彼女は魅惑的な女性なのだが、所謂正統派美人ではない。念の為、正統派美人とは顔の輪郭と目鼻立ちのバランスが整っている女性だとボクは解釈している。処がどっこい、あまりにも美人過ぎると男性は敬遠気味になり、特定の相手がいないケースが多い。(世の中、上手く成立している!)
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 勿論、フェイ・ダナウェイも充分なほどの美貌の持ち主である。しかしそれに勝る素養で人を惹きつけるのだ。改めて振り返ると、彼女には甘いロマンス、切ない女心等の女性像は似合わない。我がままで気が強い、上昇志向が強いので敗北を極端に嫌う。その反面、繊細で神経質なところもある...これがボクのフェイ・ダナウェイ観である。尚、上昇志向とは現状を打破しようとする気概、神経質とは過去の自分を執拗に恥じるうちに身についた感覚と捉えている。
 前述したが、彼女の父親は陸軍軍曹であった。兵の教育や実地訓練等で家を空けることが多かったと思う。一年の大半を彼女は母と暮らすうちに自立心が逸早く芽生えたのは想像に難くない。誰からも頼らないよう生きるには相当無理な努力と自制が必要だ。上手くいけば自信になるが、そうでない時はヒステリックにもなる。冷静になった時、自己嫌悪にも陥るだろう。彼女の何処か翳のある表情、目元や口元から感じるやや酷薄な印象がそれを物語り、主演作がそれを体現する。
 様々な葛藤がありながらも人前ではクールに装い、時として激情のあまり感極まることもある。ひた向きな変身願望と感情の脆さ...それが“女性の匂い”を感じさせるのだ。

 繰り返すがボクの中でのフェイ・ダナウェイは70年代で終わっている。もう彼女の新作は観たくない。今はただ若かった頃の映画を観るだけだ。多分、これから何度も『俺たちに明日はない』を観ていよう。


『チャイナタウン』/ジャック・ニコルソン&フェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン [製作25周年記念版DVD]

 それではいつもに従い、『BS映画の放送カレンダー』が掲載する放映予定リストの中から、作品の優劣は問わずにあくまでボクの嗜好に沿った映画をピックアップしてみた。従って下記に羅列した作品集は所謂お勧め映画の紹介ではなく、個人的な確認メモという位置付けであることをお断りしておく。
 尚、何処のBSデジタル放送局で放映されているか判り易くする為、作品名の接頭部に各放送局の略語を表記した。解説文は下記の各ホームページからの抜粋である。
         ・(N)=『NHK-BS』
         ・(日)=『BS日テレ』           ・(A)=『BS朝日』
         ・(T)=『BS-TBS』           ・(J)=『BSジャパン』
         ・(F)=『BSフジ』             ・(E)=『BSイレブン』
         ・(S)=『BSスカパー!』
 今年4月から「BSジャパン」局では週に二度映画放映をするようになった。即ち、毎週金曜の「シネマクラッシュ 金曜名画座」と土曜の「土曜キネマ」である。通常、前者は20時、後者は19時の放映開始となる。
 5月第二金曜日に、いつかは観たいと思っていた『キネマの天地』がラインナップに載っていた。その日は『キネマの天地』に合わせるように仕事を片付け、時間通りにテレビを点けた。既に映像が流れていたのだが、特に疑問に感じなかったのはイントロからいきなり中心人物が出て、後の重要場面に向けて伏線を張る演出だと思ったからだ。
 しかし物語が進むに従い、さすがに「これはおかしい...。」と気づき、改めて番組表を確認したら放映開始が一時間繰り上がっていたことが分かった。つまりボクは『キネマの天地』を途中から観て、ずっとそれに気づかなかったのだ。己の大呆けぶりが情けない!
 処でこのキネマの天地というフレーズ...何処か聞き覚えがあると思ったら、『蒲田行進曲』の主題歌の冒頭で出ていた。 「♪ 虹の都光の港 キネマの天地~...」
$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 『蒲田行進曲』は『キネマの天地』と同様に、松竹の蒲田撮影所を舞台に映画界に携わる男女の悲喜交々を描いたものだが、仲々面白かった。実際、映画は大ヒットした。本来なら松竹上層部は大喜びする筈なのだが、自分達の会社の過去を象徴する映画を東映出身の深作欣二が監督したことに忸怩たる思いがあり、改めて生粋の松竹関係者達で映画化しようと奮い立ったのが『キネマの天地』なのだ。
 当然、力の入れようが違い、キャストは松竹所属の俳優が勢揃いした。この映画で重要な役柄を担った寅さんこと渥美 清。それまで『男はつらいよ』は正月用と盆用に毎年2本制作していたのだが、この年だけは『キネマの天地』に専念させられて1本だけとなったくらいだ。
 浅草の映画館の売り子からスター女優になる主役の田中小春は、サイレント期からトーキー映画に変わろうとした時代にスター女優に上りかけた田中絹代がモデルとされている。当初、この田中小春役は藤谷美和子の予定だったが、映画さながらの降板劇によって、当時新人だった有森也実が抜擢されたも話題になったようだ。

 ・(N)『ギターを持った渡り鳥』        9月23日(月) 13:00~14:18

   ギターを背に函館に流れて来た滝伸次は腕を見込まれて土地の親分・秋津に雇われる。その仕事は娯
  楽センター拡張の為、住民達を強制的に立ち退かせること。だが出向いた先が秋津の実妹の家と知り、伸
  次はこの仕事を断る。何か過去の暗い影を持つ伸次に惹かれていた秋津の娘・由紀は、叔母の為に手を
  引いた彼に一層の好意を寄せた。
   ある日、神戸の田口組のジョージというやくざが現れ、伸次に「以前、何処かで会った。」と言うが...。

 ・(S)『牝猫と現金』                9月24日(火) 10:00~11:50

   銀行強盗が残した大金を巡って繰り広げられる抗争を描いた仏産アクション。『エヴァの恋人』のミレー
  ユ・ダルク、『地下室のメロディー』のモーリス・ビローらが出演。
   銀行強盗のピエールが警官に殺された。しかし彼が銀行から盗み出した四億フランもの大金は発見され
  ない。警部はピエールの愛人カトリーヌが金の場所を知っていると睨み、男の子を生んだばかりで産院に
  いる彼女の許を訪れるが、手掛かりは得られない。更にギャングの親分達もあの手この手を尽くしてみる
  が金の在り処は不明のまま。実はカトリーヌは金が山中にある家の“どこか”に隠されると知っており、山
  へと向かう。

 ・(N)『ワイルド・ワイルド・ウエスト』     9月24日(火) 13:00~14:47

   早撃ちの行動派ウエストと、発明と変装が得意な頭脳派ゴードンは西部開拓時代の連邦特別捜査官。対
  照的な二人は衝突しながらも大統領の命を受け、アメリカ征服を企む天才科学者ラブレス逮捕に乗り出す
  が...。
   60年代の人気テレビ・シリーズを『メン・イン・ブラック』のソネンフェルド監督とウィル・スミスのコンビで映
  画化。蒸気エンジンで動くレトロでハイテクな発明品の数々が愉快なSFXアドベンチャー。

 ・(N)『幸福(しあわせ)のスイッチ』     9月24日(火) 21:00~22:46

   東京のデザイン会社で働く新人イラストレーターの稲田 怜は、実家の電器屋で儲けにもならない仕事ば
  かりを引き受ける父・誠一郎に反発して上京。しかし現実は厳しく、上司と衝突して会社を辞めてしまう。
   そんな時、高校生の妹・香から「長女の瞳が倒れて入院した。」と知らせがあり、怜は実家のある和歌山に
  帰る。だが入院していたのは骨折した誠一郎だった。やむを得ず、怜は父の代わりに電器屋を手伝うことに
  なり...。

 ・(N)『めまい』                   9月25日(水) 13:00~15:09

   とある悲惨な事件をきっかけに高所恐怖症となった刑事ジョンは、警察を退職する。そんなジョンの許に
  旧友から「情緒不安定な自分の妻マデリンを尾行してほしい。」との依頼が入り、断り切れなかったジョンは
  その日の夜から尾行を開始。やがて彼女を愛するようになってしまったジョンの目の前で彼女は身を投げ
  た...。
   失意に暮れるジョンは、町を彷徨ううちにマデリンそっくりの女性と出会う。

 ・(N)『集団奉行所破り』             9月26日(木) 13:00~14:31

   元は海賊の一味で現在は宿屋を営む勘助は7年前、船役人に襲われたところを大阪屈指の回船問屋・河
  内屋善右衛門に助けられた。その後、河内屋の財産に目を付けた奉行所はあらぬ罪をでっちあげ、河内屋
  を処刑。勘助は河内屋の財産が眠る奉行所から金を奪い、彼の7回忌を執り行うという計画を実行する為、
  かつての仲間達を招集。個性豊かな彼らは其々の特技を活かし、行動を開始する。

 ・(N)『やればやれるぜ全員集合!!』   9月26日(木) 20:00~21:29

   東北の寒村の鼻つまみ者だった5人の男達が東京で一旗揚げようと上京する。碇矢と加藤の二人は仕事
  場の埋立地に食事を売りに来る娘・みつ子に揃って密かな想いを寄せている。そのみつ子がレストラン花園
  の社長・北小路に昔父親が借りた金の為に強引に結婚させられそうだと知った二人は、メンバー5人を集結
  させ、北小路を誘拐し国外に連れ出してしまうが...。
   あれやこれやと奇想天外な作戦が展開する大爆笑喜劇。

 ・(N)『シャイン』                   9月27日(金) 13:00~14:46

   実在の天才ピアニスト、デビッド・ヘルフゴッドが心の病を乗り越えて演奏家として再起するまでを、父子
  の愛憎を軸に描いた感動ドラマ。
   威圧的な父から夢を託され、過剰な愛情と厳しい指導を受けたデビッドは父の反対を押し切り海外へ留
  学。だが演奏中に倒れ、その後十数年間ピアノから離れることとなる。
   本編中のピアノ演奏の大半はヘルフゴッド本人によるもの。ジェフリー・ラッシュがアカデミー主演男優賞
  に輝いた。

 ・(S)『お加世の覚悟』               9月27日(金) 17:01~17:57

   日本舞踊の師匠の許に12年もいる内弟子・お加代は、写真道楽の若旦那・俊作への恋心を燃やし始め
  る。だがそれは儚くも崩れ去り、お加代は踊り一筋に生きる覚悟を決めるのだった...。

 ・(J)『ダーティハリー5』             9月27日(金) 20:01~21:40

   サンフランシスコ市警殺人課の刑事ハリー・キャハランは賭博の元締を逮捕したことで一躍有名人となっ
  た。その翌日、低予算映画に出演していた人気ロック・アーティストが殺された事件が発生。事件の聞き込
  み中に強盗事件に遭遇した男が死んでしまう。その男は殺害されたロック・アーティストが出演していた映
  画の経理担当者で、手に「死亡予想」と書かれたリストを持っており、そこにはハリーの名前も書いてあっ
  た。

 ・(N)『プライドと偏見』               9月27日(金) 23:45~25:53

   ジェーン・オースティンの名作を映画化。
   18世紀末、イギリスでは女性に遺産相続権がない為、年頃の娘が5人いるベネット家では良縁探しに必
  死だった。そこへ都会から独身の大富豪ビングリーが越してきて皆大騒ぎ。そんな中、次女のエリザベスは
  舞踏会でビングリーの友人ダーシーと知り合うが、彼のプライドの高さに嫌悪感を覚える。
   結婚をテーマに、上流社会の華麗な日常と素直になれない男女の恋模様を描いた秀作。

 ・(J)『キネマの天地』               9月28日(土) 19:02~21:34

   映画を愛する全ての人に。サイレントからトーキーへ移行する“日本映画の青春期”を山田洋次監督がオ
  ールスターキャストで描いた超大作!
   松竹大船撮影所50周年記念作品。物語の舞台は松竹が撮影所を大船に移転する直前の昭和8、9年の
  蒲田撮影所。
   活動小屋の売り子が監督に見い出され、様々な人達と出会い、支えられながらトップ女優への道を歩き
  始める姿を、当時の撮影所の雰囲気を再現しながら描いた作品。

 ・(E)『裸で御免なさい』              9月29日(日) 20:03~21:56

   『素直な悪女』で世界中に衝撃を与えたBBが、健康的でゴージャスな肉体美を存分に披露するお色気コ
  メディの傑作!
   パリに住む兄を頼って、親元を飛び出した作家志望のアニエス。一文無しの彼女は留守中の兄の屋敷か
  ら古本を持ち出し金に換えるが、何とそれはバルザックの初版本だった! また兄の住まいと思ったのはバ
  ルザック記念館だったのだ。本を買い戻す為、アニエスは賞金付きヌード・コンテストへの出場を決意する
  が...。


『密 告』/ピエール・フレネイ&ジネット・ルクール、ミシュリーヌ・フランセイ [DVD]