12月に放映される名作映画案内 Part2 | アラフォー世代が楽しめる音楽と映画

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ストレスを抱えるアラフォー世代が、聴いて楽しめる音楽、観て楽しめる映画を紹介します。
でも自分が好きな作品だけです!    

 折りしも昨日、アンジェイ・ワイダ監督の新作映画『カティンの森』が公開された。非情に不謹慎な言い方だが「まだアンジェイ・ワイダ監督は、現役だったのか!」というのが率直な印象だった。
 所謂“巨匠”と讃えられる映画監督のうち、イングマール・ベルイマン、ミケランジェロ・アントニオーニは一昨年、相次いで亡くなっており、現存する中でもジャン=ジャック・ゴダール、エリック・ロメールは数年おきに新作を発表してはいるが、半ば引退状態だ。
 それらの“巨匠”に比べ、83歳になりながら創作意欲が衰えないアンジェイ・ワイダには敬意を表さずにいられない!

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 実際、カティンの森虐殺では、アンジェイ・ワイダの父親が犠牲になっている...アンジェイ・ワイダは生きているうちに、是が非でもこの映画を製作したかったのだろう!
 『カティンの森』公開に意図的に合わせたわけでもないと思うが、今週のNHKBSはアンジェイ・ワイダ監督を中心としたポーランド映画の特集が組まれている。

 地理的条件が大きな理由であるが、極東に住む日本人にとってポーランドは馴染みが薄い国だ。ポーランド出身の有名人を挙げれば、ワレサ議長やヨハネ・パウロ2世が思い浮かぶ。しかしこれは歴史や宗教に興味があったからこそ出てきた人物だ。勿論、映画ファンならロマン・ポランスキーだろう!
 更に文化や科学に造詣が深い人なら、ショパン、コペルニクス、キュリー夫人等を挙げるかも知れない。しかしそれは極めて稀だ。仮に一人も思い浮かばなくとも何も恥じることはない! それだけポーランドは遠い国なのだ!

$アラフォー世代が楽しめる音楽と映画 ヨーロッパは陸続きに国々が連なっている。政治経済、軍事的に強い国もあれば弱い国もある。日本人には仲々理解し難い政治信条だが、かつて強国には、隙あらば隣国の制圧を虎視眈々と狙っていた歴史が存在していたのだ。
 特にポーランドはドイツとソ連に囲まれるように隣接していたので、第2次世界大戦勃発から戦後に至るまでナチスドイツの侵略とソ連共産主義の圧制により、人々は過酷な状況に置かれ、国家の存在そのものが脅かされていた。
 その真っ只中にいたのが若き日のヨハネ・パウロ2世であり、アンジェイ・ワイダだったのだ...。

 もう少し詳しい状況説明をすると、1945年の春、ナチスの占領下から解放された直後のポーランドは、解放の喜び束の間に今度はスターリンから侵略を受けることとなった。ナチスを追い出したのがソビエト軍だったのだ!
 若者達の間では、侵略者に対する強烈な反発からレジスタンスが醸成され、時を同じくしてロンドンにあった亡命政府は、ポーランド国内軍に旧体制を取り戻すべく、反共産主義の戦いを指示したのであった。
 しかし政府内には共産主義を支持するグループも存在し、ポーランドは複雑な国家体制になっていたのである。

 アンジェイ・ワイダ監督の代表作『灰とダイヤモンド』は、この時の政治状況を背景にしたものである。主人公マチェクは、ロンドン亡命政府系のレジスタンスの雄であり、新政府を樹立して権力を握ろうとするポーランド労働者党(ソビエト共産主義系)を後押しする大物政治家を暗殺しようとする一日を追っている...。
 この辺りの詳細は近日中に述べるつもりだ。


「“灰とダイヤモンド”の国ポーランド」

 それでは、いつものように、『NHKBSオンライン』で放映される映画リストからボクが観たい作品をピックアップしてみた。
 解説文は『NHKBSオンライン』からの抜粋である。
 ポーランドの悲しい歴史を知る為に、下記に連ねたアンジェイ・ワイダ監督4作品、イェジー・カヴァレロヴィチ監督1作品は是非観たいと思っている! 敢えて苦言を呈すれば、全て深夜に放映されるのが難である...。
 それにこれだけの名作が何故DVD化されないのか、不条理である!!

 ・『灰とダイヤモンド』     12月 8日(火) 午前0:45~2:25

   イェジー・アンジェイエフスキーの同名小説を、彼自身とA・ワイダ監督が共同で脚色し映画化した名
  作。
   1945年、終戦直後のポーランド。ソ連軍下の新政府に反発するマチェクは、ソ連から来た共産党地
  区委員長の暗殺を謀るが、誤って別の男を殺してしまう...。
   青年の孤独な生と死を通して、戦後ポーランドがたどった過酷な運命を描いた、ワイダ監督による抵
  抗三部作のうちの一つ。
   ベネチア映画祭国際批評家連盟賞受賞。

 ・『夜の終わりに』       12月 9日(水) 午前0:43~2:11

   戦時下におけるポーランドの過酷な運命を描いた「抵抗三部作」とは打って変わって、戦後の平和な
  日々を生きる男女の一夜の出来事を描いたアンジェイ・ワイダ監督作。
   昼は医者として働き、夜はバンドでドラムをたたく日々を送るバジリ。友人にそそのかされ、クラブの帰
  りに終電を逃した美女を自分のアパートに連れて行き、なんとはなしにゲームなどして朝まで一緒に過
  ごした。
   だが、目を覚ますと彼女はいなくなっていて...。

 ・『黒い画集 あるサラリーマンの証言』 12月 9日(水) 午後9:00~10:37
  
   今年、生誕百年を迎えた推理作家松本清張の短編集「黒い画集」の一編「証言」を映画化。
   エリートサラリーマンの石野は、部下でもある愛人の家からの帰り道、近所の顔見知りの杉山と偶然
  出会う。
   後日、杉山が殺人事件の容疑者となり、アリバイを証明できるのはあの日会った石野だけ。しかし彼
  は、保身のため証言を拒否し...。
   平凡な男が、事件に巻き込まれ転落していく様を描いた社会派ドラマの傑作。

 ・『約束の土地』        12月10日(木) 午前0:45~3:27

   19世紀末、ポーランドの工業都市で自分たちの工場を作る夢を追った3人の青年を描く。
   ポーランド士族の末えいカルロ、ユダヤ人のモリツ、工場主を父に持つドイツ人のマックスは、何とか
  かき集めた資金を増やすことに成功、念願の工場をスタートさせた。しかしカルロの不倫相手の夫が真
  相を知って激怒、放火常習犯を使って工場に火をつけ、彼らの夢は泡と消えてしまう。
   アカデミー外国語映画賞ノミネート作。

 ・『大理石の男』        12月11日(金) 午前0:45~3:27

   ポーランド映画界の鬼才、アンジェイ・ワイダ監督が、スターリン時代の歴史の裏側を1人の女学生の
  目を通して描き、後の歴史を暗示するような内容で話題となった衝撃作。
   映画大学の学生アグニェシカは卒業制作の記録映画のために、50年代のポーランドで労働英雄とし
  てもてはやされた男の取材を開始する。やがて、歴史に翻ろうされたその男の悲惨な人生が浮き彫りに
  なる。
   カンヌ映画祭国際批評家連盟賞受賞作。

 ・『夜行列車』         12月13日(日) 午前1:30~3:08
 
   ポーランドの鬼才・カヴァレロヴィチ監督が、夜行列車に乗り合わせた人々の人生の断片を通じて人
  間の孤独を浮き彫りにする秀作ドラマ。
   恋人との関係を断とうと見知らぬ男から切符を買い、夜行列車の寝台車に乗ったマルタ。列車はマル
  タを追いかける恋人、弁護士夫妻、牧師など、多くの乗客で混みあっていた。後にマルタの切符がもと
  で、妻殺しの殺人犯を追う警察がマルタと同室の黒メガネの男を連行し、車内は騒然となる。


「アンジェイ・ワイダ自作を語る」