ばってん少女隊はどうしたらより多くの人に注目してもらえるのだろう?、と試行錯誤してきたのは確かだが、スターダストプラネットに所属するアイドルとしての彼女たちのスタイルが一変した訳ではない、と。むしろ、今、彼女たちばってん少女隊の試行錯誤がたわわに実を結んだ結果なるべくして成ったのだ、と。それは一言で言って、彼女たちの執念に他ならない。その結果、2020年の自主レコードレーベル設立を決定的区切りとして、本作『九祭』で完成させた、彼女たちばってん少女隊の現下の基本路線としてとらえ返しうる<和製(HAKATA) Lady Soul>の深化を勝ちとった。
和製ファンクっぽいテクノポップもしくはビートポップだが、この曲の根底にはBLUESが貫かれている。デビューシングル「おっしょい」が「おいさ」へとヒートアップしたとか、祭祀・祭礼をイメージしたダンス・ミュージックと説明されがちだが、この曲の核心は、肩の力を抜いて生きちゃえば?だ。元々は当時プライベートレーベルを起ち上げたばってん少女隊への渡邊忍的なエールだった。ひるがえって、ちょうどCOVID-19下で生きるすべての人々に寄り添う曲としての意義を持った。だから、この曲はダンス・ミュージックの仮面を被ったばってん少女隊<和製(HAKATA) Lady Soul>のブルース(リズム・アンド・ブルーズ)だ。
ラテンとファンクの要素を取り入れた異国情緒溢れるテクノポップ。長崎の真昼の情景と世界的にも有名な夜景を対比させながら、パラレルな世界観を浮き彫りにさせつつ、やがてまた同時に一体化させる歌詞は見事だ。マドンナの『La Isla Bonita』(ラ・イスラ・ボニータ〜美しき島)や『Live to Tell』(リヴ・トゥ・テル)のように、スパニッシュなラテンの官能性やエキゾチックなムード。そこにオリエンタルな風情が重なり合う。
テイストはザ・ビートルズ『ロックンロール・ミュージック』およびジョン・レノンのアルバム『ロックン・ロール』に代表されるブリティッシュ・サウンド(マージービート)、そして特にノルウェーのシンセポップバンドにしてニュー・ウェイヴを代表するa-ha「Take On Me」(テイク・オン・ミー)へのオマージュが捧げられている。中毒性のあるサビとキャッチーなメロディはパーフェクト!
以上のことから、前作から2年──10月19日にリリースされたばってん少女隊 4th album 『九祭(CUE-SAI)』(きゅうさい)は、<和製(HAKATA) Lady Soul>ばってん少女隊が満を持して発表した、プロのアルバムに他ならない。ばってん少女隊は今、長年自問自答してきた九州愛を語りつつ世界をのぞむ。この世のすべてを幸せにしたい━━ばってん少女隊の『九祭(CUE-SAI)』には彼女たちのありったけの愛とヒューマニズムが込められている。