【2021年1月1日付け拙稿】
2️⃣COVID-19下のサザン無観客配信ライブ第②弾

②サザンほぼほぼ年越しライブ★
わが軌跡への自負と誇り「その日は必ずやって来る!」
(セットリストそのものは前稿①に掲載)


桑田佳祐 2021

 

 










サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ 2020
「Keep Smilin’〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜」
supported by SOMPOグループ

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2020年12月31日(木)22:00配信
横浜アリーナ


 あらためて、天才、としか言いようがない。今年ダントツのライブを観た。私は画面越しに茫然としてしまった。そして、歓喜し勇気が漲った。
 6月の配信ライブについて私はこう記した。
 『超満員の<画面越し>に「愛する人よ」ーサザンオールスターズは無観客ライブという特殊な条件=逆境を逆手に取って、他ならぬリモートライブにしか成し得ない<新たな可能性>を切り拓いた。それは総力戦の勝利であると共に、満員御礼の聴衆をあたかも眼前にしているかのような想像力と創造力の勝利だった。』、と。
 だが、今回のほぼほぼ年越しライブは軽々とそれを超えてきた。桑田佳祐は一曲たりとも似た曲のない、多彩でカラフルな究極のポップスをずらりとラインナップしてきた。バンドもサポートメンバーも一体だった。
 サザンは、どうだこんな曲もあんな曲も出来るんだぞ!、と言わんばかりに、ありとあらゆる作家性の強い楽曲を見事な演奏で連打し、ついには「音楽関係・エンタメ業界は負けないからなー! ……嵐ありがとう」(桑田佳祐)と宣言した。
 「スタンド! アリーナ! 画面越し! その日は必ずやって来るぞ!」と絶叫した。何たる気迫! サザンオールスターズの軌跡への自負と誇りに燃えながら、彼らの底力を魅せつけるかたちで、画面越しのわれわれを鼓舞した。「〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜」とは、このことだったのか! まさに凄いものを観た。私は生涯この日のライブを忘れることはないだろう。

 冒頭からサザンは『ふたりだけのパーティ』『My Foreplay Music』『東京VICTORY』を続けロックンロールバンド然として仁王立ちした。一曲目は桑田がスライドギターを披露。TIGERとODYのコーラスは見事だった。地球儀を回しオリンピック選手の映像をバックとした『東京VICTORY』で、桑田の歌声は静かに横浜アリーナを完璧に支配した。

 続くブロックでは、驚きの連続だった。リトル・フィートばりの泥臭い演奏の『いとしのフィート』を皮切りに、レゲエ・ブルースと言うべき『恋するマンスリー・デイ』や隠微でダウン・トゥ・アースなディスコにしてブルース『夜風のオン・ザ・ビーチ』に、オールディーズやシティポップ、ブルー・アイド・ソウルな切なくもあたたかいナンバーをまぶし、極めつけはメランコリックなバラッドの傑作『Ya Ya(あの時代 (とき)を忘れない)』で締める目眩く音楽体験の連続。特に、『恋するマンスリー・デイ』ではTIGERとODYのコーラスがさえ渡り、原由子のレイ・チャールズばりのブルージィなピアノソロには参った。そして、まさか本当に『夜風のオン・ザ・ビーチ』が来るとは! 美しく泥臭いイントロが始まった瞬間の驚き! これぞ《サザンオールスターズ》のバンドサウンド! 『女神達への情歌』と並んで私がこの曲を今ライブで聞いたら死んでも良い、と10年くらい前に宣言した、サザンオールスターズにしかなし得ない傑作。これを聞いて私は、まだまだ世の中捨てたもんじゃない、COVID-19下で徹底的に生き抜こう!と勇気を得たので、生きることにした。サザンには参りました。誰も出来ない本物のポップスで勝負してきた。私は茫然としてしまった。そして、心のうちが踊った。なお、原曲では1981年の若き桑田が、淫靡に・エロティックに・欲情ムードたっぷりに・全編高音のファルセットで歌うパート「♪まるでエボシ岩に居るような/揺れる彼女の胸にすがって/濡れたまんまの背中にも/波がかぶるよに/I wanna thank you for the night(桑田)」をODYが任せられチャレンジしたのも見逃せない。そして、『夜風のオン・ザ・ビーチ』から『LONELY WOMAN』の流れは抜群で、桑田のファルセットは神がかっていた。山下達郎が評価するのも納得の名人芸。

 演奏テクニックを見せつけたバンド紹介に続いては、まず、スパニッシュ・ラテンものの傑作『愛は花のように(Olé! )』。誠のギターソロや山本ブラス隊が素晴らしかった。ここで、予告どおりテクノを全面化した全編英語詞のディスコ調シティポップ『走れ!!トーキョー・タウン』。エバトダンシングチームのテクノ風ロボット・ダンスが興を添えた。極めつけはレディオヘッドに当時影響を受けた桑田が書いたエレクトロニカの傑作『世界の屋根を撃つ雨のリズム』をついに披露。名盤アルバム『さくら』に収録時間の都合で収められなかったこの曲が今、よみがえるとは! そこからアコースティックな『栄光の男』『はっぴいえんど』が実に身に染みた。ここからラストスパートの煽りブロックに突入する。
 横浜の夜景映像をバックにボウリングフォームが見事だった『LOVE AFFAIR〜秘密のデート』ザ・ロネッツの『Be My Baby』を口ずさんでフェイドアウトするところが良いんだよな。続く『ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)』の1コーラスはジャズアレンジで、2コーラスはロックンロールに戻した趣向には驚き、そして聴き入った。ダメ押しで、聴衆にもっと来んかい!ならぬ「世の中ー!もっと来い!」とシャウト。ダンサーが黒い下着で宙を舞う『エロティカ・セブン EROTICA SEVEN』では今回桑田は前川清のマネはせず、楽曲を輝かせる見事な歌唱で歌い切った。
 立て続けに『BOHBO No.5』『マンピーのG★SPOT』の狂乱ぶりは圧巻。今回のマンピーを歌う時の桑田のヅラ「マンヅラ」は「嵐」のロゴ入り鶴のヅラ(笑)。疫病退散とかけて「ええじゃないか」を模したカオスが無観客のはずの会場を激震させた。青森ねぶた祭を始めとした全国の祭りを模した祝祭、祭りの法被や屋台にのぼりに神輿、この日ばかりは!と言わんばかりに桑田はクレーンに乗ってハチャメチャの限りを尽くした。そして、医療従事者・全業界への感謝を述べた上で、桑田は喝破した。「音楽関係・エンタメ業界は負けないからなー! ……嵐ありがとう」、と。

【ENCORE】
EN1. 希望の轍
EN2. 夕方 HOLD ON ME

「みんな負けるなよー! 仲良くね 頑張りましょうにっぽん!」
EN3. 勝手にシンドバッド
「死ぬなよー!」


 サザンオールスターズはわが軌跡に自負と誇りを漲らせながら、今だからこそ聴かせたい作品を全面化してきた。一つのバンドが一曲として似通った所のない音楽ジャンルの楽曲を釣瓶打ちしてくる様は見事だった。究極のライブを観た!としか言いようがない。切ない曲も尖った曲も心が踊る曲もエロも、すべてひたむきに生きる意志に漲った<愛の歌>として桑田は呈示してきた。<同じ思いでみんなが集まった時にこそ生まれるのが音楽>だ━━そういう確信に燃えて桑田は勝利を謳いあげた。《われわれは救済の対象ではない、再生の主体であり、まさに自己解放の主体なのだ》、と。
 ここにこそ、感動がやまない! 本当に凄いものを観た、そして勇気が湧いた。














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