青土社ユリイカ:

ユリイカ2023年7月臨時増刊号
総特集=大江健三郎

ジャンル別一覧 ユリイカ ユリイカ2023年7月臨時増刊号 総特集=大江健三郎
-1935-2023-
    

定価3,080円(本体2,800円)

発売日2023年6月28日

ISBN978-4-7917-0434-7


 戦後文学の終わり——追悼特集
 最後の作品となった『晩年様式集』(2013年)以後の10年は、たしかに沈黙の時間ではあっただろう、しかしそれは決して不在の時間ではなかったのだと、ついにその存在が失われたと、彼岸と此岸をどのように定めるべきか迷いながらも認めざるをえないある事実なるものの前に、作家という存在のありようがいま語りだしている。戦後文学の終わりは〈日本文学〉という時代の終わりか、追悼とはひとつの読みである。



総特集*大江健三郎――1935-2023


[目次]


【回想】
若き大江健三郎氏の〈五月祭賞〉受賞作品を読んだ日そしてその後――(追悼のために) / 柴田 翔

死者とともに生きよ――「こんな切れっぱし」とgeneratioの谺(こだま)が立ちのぼる響き / 原 広司

大江健三郎と私 / フィリップ・フォレスト 訳=澤田 直


【2023/03/03】
1970《シンガポールの水泳》 / 司修

破壊と共生の王の死 / 市川沙央



【いま、大江健三郎をめぐって】
大江健三郎「と」死 / 菊間晴子

大江健三郎の「年」と「手紙」――「美しいアナベル・リイ」を手がかりにして / 岩川ありさ

話すように書く――耳の記憶めがけて / 髙山花子

鳥(バード)とBird――英語圏を旅する『個人的な体験(A Personal Matter)』 / 片岡真伊

他者と重なり合う――大江健三郎における想像力論の起源 / 村上克尚



【対談】
〈紙〉と〈声〉 / 工藤庸子×尾崎真理子


【黄昏を歩む】
ニューヨークの〝雨の木〞 / 山登義明
LEDライトではない / 鳥居万由実


【谷間の村から】
構造と固有信仰――大江健三郎における柳田國男の「実装」問題 / 大塚英志

不順国神(まつろわぬくにつかみ)、あるいはセイタカアワダチソウと葛の間を歩む者――「絶対小説家」大江健三郎を悼む / 山田広昭

〈同時代〉の民族誌――文化人類学者が読む大江健三郎 / 里見龍樹

『キルプの軍団』における引用の時空間 / 髙村峰生

ビョウ シン キョウ カン――大江健三郎『水死』論 / 長濱一眞


【破局と反逆】
桃太郎の父――大江健三郎の「大逆」 / 絓秀実

右翼的情動――大江健三郎の一九六〇年前後 / 梶尾文武

詩とテロルのあいだ――大江健三郎「セヴンティーン」と「政治少年死す」についての覚え書き / 王寺賢太

菊の花弁は増殖し... / 雑賀恵子

「宙返り」する戦後民主主義――本土決戦と一九六八年 / 栗田英彦



【「戦後民主主義者」であるということ】
大江健三郎の「戦後」をめぐる、いくつかのこと / 成田龍一

立ちすくむ人の人間への問い――大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』を読み続けるために / 柿木伸之

「日本人」の変容の可能性に向けて――大江健三郎『沖縄ノート』を読む / 村上陽子

核と想像力――大江健三郎の場合 / 岡本拓司

引用と救済――『水死』における「プラトニズムの転倒」と自死 / 石川義正


【詩】
小説の悲しみ / 藤井貞和


【「本当の事」との対話】
「革命女性(レヴォリュショナリ・ウーマン)」を読んで偲ぶ / 青木淳悟

大江健三郎と戯曲の体裁――「革命女性(レヴォリュショナリ・ウーマン)」から / 羽鳥嘉郎

記憶の共同体 / 間宮緑


【イーヨーと吾良の声】
...これが私たちの生活ですからね! / 丹生谷貴志

クイナは二度鳴く――大江健三郎と伊丹十三の『静かな生活』 / 城殿智行

大江健三郎と「美しい少年」――コクトーのしるしのもとに / 野崎歓

多元的な宇宙のはざまで――大江健三郎1963&1983 / 村上靖彦


【新しい歌】
「引用」と「回心」について――『「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち』 / 佐藤泉

星と星が繋がる喜び――『ヒロシマ・ノート』から『人生の親戚』へ…フォークナーとオコナーを手がかりに / 藤平育子

大江健三郎と中上健次 / 渡邊英理

「オートフィクション」におけるジェンダー――ウグレシッチ『きつね』を通して読む大江の後期作品 / 奥彩子


【ユマニスムの小説家】
「われらの性の世界」と一九五九年のリアリティが絡み合うところ――『われらの時代』に関するいくつかの批評 /北山敏秀

性的人間のつなぎ間違い――一九六〇年代前半の大江小説 / 峰尾俊彦

裸形の文学――冷戦下の大江小説と動物的存在 / 高橋由貴

「人間」を定義する文学――ポストヒューマン時代における「あいまい」な人間性(ヒューマニズム) / 坂口周


【記憶=オマージュ】
これからも / 櫻木みわ

〈「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女〉、わたし / 森山恵

大江の〈A〉、オントのにおい / 森井良


【師匠(パトロン)、あるいは同伴者たち】
大江が扉を開いていた――エドワード・W・サイードのアーカイヴから / 三原芳秋

遅れてきた大江健三郎――サルトルにみちびかれて / 小林成彬

大江健三郎とそのミクロコスム――加藤周一を手がかりに / 半田侑子

ラインの監視/自殺への契約書――大江健三郎の他者・江藤淳の他者 / 山田潤治

読む、見る、書く――武満徹を聴く大江健三郎 / 原 塁


【書くことに向かって】
大江健三郎の自筆原稿が問いかけるもの / 阿部賢一

絶望とモデル――私的感慨と『文学ノート』におけるアトリエ / 山本浩貴(いぬのせなか座)

『燃えあがる緑の木』における創作の再定位——伊藤静雄「鶯(一老人の詩)」を出発点に / 西岡宇行

大江健三郎のウィリアム・ブレイク――まなびほぐしの過程を探る / 佐藤 光

脳の多様性から見た大江健三郎作品――当事者批評の実践 / 横道 誠


【想像力という問い】
『ピンチランナー調書』と七〇年代の想像力 / 山本昭宏

ディストピアの外部――大江健三郎〈治療塔〉二部作をめぐって / 石橋正孝

大江健三郎と「世界文学」――そのいくつかの概念 / 今井亮一

一九八六年のビーンボール――大江健三郎のアメリカ講演録“Japan's Dual Identity: A Writer's Dilemma”を読む / 青木耕平


【小伝】
小説を生きた作家――変革主体の消長と書く主体の揺れ動き / 山本昭宏


装幀=水戸部 功
表紙写真=The New York Times/Redux/アフロ





青土社 ||ユリイカ
ユリイカ2023年7月号 特集=奇書の世界
    

定価1,980円(本体1,800円)

発売日2023年6月28日

ISBN978-4-7917-0433-0



 四大奇書、三大奇書、さて、奇(しなる)書とはなにか
 奇しく珍かなる書物、なぜその必ずしも読むに易くはない書物にわれわれは惹かれるのか、それら奇書が奇書である所以はさまざまであるだろう、歴史において珍奇な運命をたどったものもあれば、豪奢な装幀の人間業とも思えぬ唯一性によるものもあるだろう、そしてなにより魔術書ならず魔術的な記述内容がその書物を奇書たらしめる、のか……、往きては帰れぬ奇書の道。



特集*奇書の世界

 

【対談】
奇書は(人間にしか)書けない / 円城塔×酉島伝法


【奇譚】
綺書周游 一名、駄本地獄――〈人外魔境の巻〉 / 稲生平太郎

奇書もどき / 春日武彦


【驚異の好奇心】
Curiouser and Curiouser――奇書のマニエリスム / 高山宏

架空珍妙動物学を学ぶための奇書コレクション / 倉谷滋

形而上学の逸楽郷――哲学史における奇書 / 佐々木雄大

変なこと書く人――奇妙と驚異のSF小説史 / 橋本輝幸


【奇人(から)の呼び声】
わかるものわからないもの / 樺山三英

イルでファンキーな宇宙世紀を讃える / 南木義隆


【稀な成り行き】
三大奇書の外側から / 小松史生子

ミステリにおける奇書の再考――内在する〈狂い〉について / 鈴木優作

奇書としての『死霊』――埴谷雄高と澁澤龍彥のデモノロギイ / 藤井貴志

大西巨人『神聖喜劇』――論理のネットワークを駆けめぐる数奇な旅 / 橋本あゆみ


【座談会】
特殊版元探訪――事例・国書刊行会のエコシステム / 竹中朗×山本貴光×吉川浩満


【運動としての奇書】
「奇書」だけが癒す渇き――戦前昭和における“変態趣味の大家” / 大尾侑子

囚われの奇書――あるポーランド知識人の自己検閲と文学的欠乏 / 中井杏奈

怪文書のススメ / 逆卷しとね

「奇書」としての『家畜人ヤプー』 / 河原梓水


【レファレンスとサジェスト】
奇書の定義と入手法――列挙書誌から考える / 小林昌樹

「奇書」に寄りつく解釈と解説 / 三崎律日


【書物の奇異と奇跡】
奇なる書の道 / 宮紀子

奇術としての製本――『四回の講座』(M.F.作) / 野村悠里

書物としての奇書/オブジェとしての書物 / 山中剛史

本とは何か――奇書、あるいは瀧口修造の〈本〉 / 山腰亮介


【奇書に誘われて】
中華圏の奇書をめぐる / 立原透耶

幻臭と幻獣 / 川野芽生


【奇書と奇書でないもの】
神器と魔法の古代書 / 川村悠人

聖女の奇書――ハッケボルンのメヒティルト『特別な恩寵の書』と西洋中世の神学 / 三浦麻美

世紀転換期ドイツの一知識人が見た地獄あるいはユートピア――シュレーバーの『ある神経病者の回想録』をめぐって / 熊谷哲哉

『フィネガンズ・ウェイク』のABCD / 今関裕太

バベルの図書館における奇書――ボルヘス以降のミクロコスモス / 棚瀬あずさ


【伝導の道行き】
MU BOOK GUID 出張版――今、日本語で読める「奇書」11選 / 星野太朗

 

【忘れられぬ人々*21】
故旧哀傷・樋口覚 / 中村稔


【物語を食べる*29】
母と子どもがひとつになる / 赤坂憲雄


【詩】
熱帯夜 / 宿久理花子


【今月の作品】
西野いぶき・渡辺八畳・吉田譜雨・西村洸・折江朋華・栫伸太郎 / 選=大崎清夏


【われ発見せり】
未来の団結小屋 / 片桐悠自


表紙・目次・扉=北岡誠吾