「ばってん少女隊 2023 SPRING『想定の遥かナナメ上』ツアー」
ファイナル
5月13日(土)
東京 Zepp Shinjuku (TOKYO)
[第1部]open 13:00 / start 14:00
[第2部]open 17:00 / start 18:00
《出演》
ばってん少女隊(BATTEN GIRLS)
希山愛・上田理子・春乃きいな・瀬田さくら・蒼井りるあ・柳美舞
【Set list】
01.御祭sawagi
02.己MY self
03.ジャン!ジャン!ジャン!
04.南風音頭
05.
[第1部]スウィンギタイ
[第2部]ありがとーと
06.さがしもの
07.おっしょい!
08.わたし、恋始めたってよ!
09.Bright & Breezy
10.沸く星
11.和・華・蘭
12.YOIMIYA
13.OTOMEdeshite
14.Dear My Blues
15.虹ノ湊
16.禊 the MUSIC
17.OiSa (2021 ver.)
【ENCORE】
En1.
[第1部]Burn!(超特急 cover)
[第2部]ばってん少女。
En2.
[第1部]ばりかたプライド
[第2部]ますとばい!
【DOUBLE ENCORE】
未発表新曲を抜き打ち披露
肥後手まり唄をモチーフの一つとしたポップなエレクトロ
実はケンモチヒデフミの新作だったりして……?
【終盤のこの曲順での「Dear My Blues」の選曲がボディーブローのように効いた劇的なツアーファイナル】
沢山の隊員さん(ばってん少女隊に関心をもった人とファンの愛称)が思い思いに語ってくれている事がどれもすごく良いなあと思う。そんな中で僕にはどうしてあの場面で感動したのかなと思う事があってそのことをなんとなくだがけれどもずっと考えていました。
あえて語る意味があるかどうかは分からない僕の個人的な思い入れだけれど、やっぱりどうしても心に留めて置きたいことがある。だから、忘れないように記憶として記録しておこうと思う。
エッジの効いたオープニング、会場全体を激震させた踊る踊る第二ブロックに続いて、今回の肝だったのはばってん少女隊の世界観を全面展開した第三ブロックだった。
08.わたし、恋始めたってよ!
09.Bright & Breezy
10.沸く星
11.和・華・蘭
12.YOIMIYA
見事な選曲と曲順で聴衆をじっくりと虜にしていった。
けれども、まったくの私見だが、ラストの煽りブロックに向けてひと呼吸置いた箇所が今回のライブの本当の肝だった。
13.OTOMEdeshite
14.Dear My Blues
ここで「Dear My Blues」をもってきたのはすごく胸に響いてきた。これまでのばってん少女隊だったら「OTOMEdeshite」に続いて、「ジャン!ジャン!ジャン!」とか「びびび美少女」とか「ころりん HAPPY FANTASY」や「ハカタダンスホールベイベー」がきてもおかしくない。実際、ファイナルでも大阪公演でもMCの最後に次は可愛い曲のブロックです、と紹介されたし、そういう流れになると思っていたからびっくりした。ばってん少女隊はコンサートの幅を広げたな!、と。たしか6周年記念ライブの第一部公演だったか「Dear My Blues」がオーラスの時もあってそれはそれは感動的だった。けれども、それにも増して今のばってん少女隊が今回のツアーのこの曲順でいきなり選曲してくれていた「Dear My Blues」には、毎回心を打たれた。それを今もふと思い出したが、どうしても心から離れない。
実際には、メンバーが選曲したのか、元々スタッフからのアイデアだったのか、メンバーだったとしたら明るい曲だと思ってなのか、ここでサビ頭がちょっぴり甘く切ないミディアムテンポの曲をはさみたかったのか、それともこの曲順でしかこの曲を入れるタイミングがなかったのか、いやいや僕が感じたように終盤での彼女たちのメッセージが込められているのかは定かじゃない。けれどもこの流れで「Dear My Blues」を選曲したことでライブは深みを増した。オーディエンスの心をとらえて離さない抜群のアクセントになった。
それはたんに曲調だけではなく、ここまでの、そしてここからのばってん少女隊の道のりを噛み締めさせてくれた。
この曲「Dear My Blues」を作詞作曲したANDWは、解散の危機をのりこえて心機一転、2020年自主レーベルを起ち上げたばってん少女隊に心からのエールを贈ってくれた(のちに新体制第一弾シングルとして手掛けられた「ばりかたプライド」はおそらくこの曲「Dear My Blues」の続編)。
「Dear My Blues」はいわゆるBLUESそのものではない。どちらかと言うとザ・ローリング・ストーンズの名盤『メインストリートのならず者』に収録された大ヒット曲「ダイスをころがせ(Tumbling Dice)」に近いブルース色を滲ませたロックンロール(スワンプ・ロックおよびスワンプ・ポップ)。ちょうどロバート・ジョンソンをcoverしたクリームの「クロスロード(Crossroads)」に等しい関係。
この曲「Dear My Blues」でANDWは、これまで一方で大事に大事に育てられながら、他方で内心窮屈でくよくよしていたばってん少女隊に(脱・箱入り娘)、優しげな眼差しで語りかける。決められたレールに乗って・与えられた事の枠内でアレコレと解釈するより、気ままな旅に出て青春を駆け抜けようよ、と。ともすると、(ばってん少女隊は気立ても良いが何よりも賢いから)今はまだだめだけどいつか必ず、と先送りしてしまいがちだった。要するに、今いかにやるか?と実践論的に解明する事にささやかな苦手意識もあったのがかつての偽らざるばってん少女隊の姿だった。そんな彼女たちにANDWは語りかける。青春なんてやり直しの繰り返し、ちょっぴり恥ずかしかったり、時に泣きたくなったら泣けばいいじゃん、きっと笑顔になるよ。さあ、まだ見たことのない素敵な景色を見てみようよ、と。
春乃きいなさんのパートから始まり希山愛さんのパートと6人のユニゾンで終わるこの曲の最後は、こんな歌詞だ。
♪
まだ見ぬ荒野は未開拓の地図の上
巡り会う奇跡さえ 南風に託して
Ah 瞬間の輝きを捕まえて
はにかんでさ笑うだろ?
恥ずかしくて最高!
はてない地平線はどこまでも続いてる
駆け出して気づくだろう 脈打つ高鳴りを
Ah 透明な情熱を走らせて
つまづいたら泣けばいい
くだらなすぎて最高!
♪
つまり、この曲はばってん少女隊版の『クロスロード』だ、と僕は思う。
ライブの規制も解除され始めて、僕たち大勢の聴衆も様々な日常からの、ひと時の休息を求めてばってん少女隊だけのワンマン見たさにこの場所に集まって来ている。
だからこそ、今改めて「脱・箱入り娘」を成し遂げた彼女たちが、自分たちののりこえの立場を拠点として、我が身に向けてと同時に会場に駆けつけた『ふぁん』に向けて歌うのはすごく劇的だった。
今も忘れない、大阪公演のアンコールに選曲してくれて心を打たれた「さよならDESTINY」と「Happy」。
今ツアーファイナルではさらに、
新体制後初のバンドセットに挑戦する真夏の東西Zepp「BATTEN 音楽の日〜隊員と作るリクエストライブ〜」━━TOKYO DOME CITY HALLで1階スタンディング3,000人の動員を決意した「年末公演」━━ついにばってん少女隊は年間1万人の動員を決意した! この発表をした直後の「ますとばい!」も同じく最高に劇的(ドラマティック)な決意表明だった。これが<和製(HAKATA) レディ・ソウル>からの回答だ!
これからもばってん少女隊のコンサートには期待しかない。魅力的なグループになったなあ、このことが何にも増してサプライズであり、僕たちへの恩返しであった感無量の<想定の遥かナナメ上ツアー>だった。
♪
あの日から何度目の夏が来ただろう
出逢ったり 別れたり くり返し
美しい 思い出も 大切だけど
人生はこれからを 夢 見ることさ!
♪
-サザンオールスターズ『夕方Hold On Me』『みんなのうた』などのイントロ直前に、時折挿入された事がある桑田佳祐考案のover ture。