▲10月26日発売
Buddy Guy『The Blues Don't Lie』
バディ・ガイ『ザ・ブルース・ドント・ライ』


 2022.10.19 release

ばってん少女隊(BATTEN GIRLS)

4th album『九祭(CUE-SAI)』 (きゅうさい)



【最高傑作で歴代最多売上更新し、11・23『御祭sawagi〜踊れ心騒げ〜』中野サンプラザ公演へ驀進❗】

 ばってん少女隊 4th album『九祭(CUE-SAI)』(通常盤)が、10月31日付オリコン週間アルバムランキングで9位8,656枚、週間合算アルバムランキング10位8,837PTを達成すると同時に10月26日公開のBillboard JAPAN週間アルバム・チャート「HOT ALBUMS」でも10位を記録し、辛くもトップテン入りした。だが、ばってん少女隊はメジャーレコーズ時代にもなし得なかった自身最多売上をやすやすと更新し、インディーズレーベルからメジャー音楽シーンの土手っ腹に風穴を開けたのだ!

 ばってん少女隊は、2020年より自主(プライベート)レコードレーベル「BATTEN Records」を立ち上げ、初のアルバム(前作3rd album)『ふぁん』を発売。作品は絶賛されたものの、インディーズレーベルであることからオリコンメジャー部門ではカウントされなかった。

 そもそも、ばってん少女隊はスターダストプラネットに所属するアイドルとしては史上最速でJVCケンウッド・ビクターエンタテインメントのColorful Recordsより2016年4月20日にメジャーデビューしたが、これまでの最高売上は、シングルが『無敵のビーナス』(2018年5月9日発売)、アルバムが『BGM』(2019年6月19日発売)だったが、通常盤を全国流通した今作『九祭』でついに<歴代最多売上>を更新し、オリコンとBillboardでトップテン入りを果たしたのだ。次回作では初動1万枚の壁を破る橋頭堡を築きあげた!と言って良い。

 2021年4月2日にばってん少女隊You Tube配信ライブ「新学期deshite」(現在もYou Tube公式チャンネルにアーカイブあり)で、蒼井りるあと柳美舞の2名が加入してから、6人新体制で初めて完成させたオリジナル・アルバム『九祭(CUE-SAI)』。
 新体制後、話題となった楽曲の数々「OiSa (2021 ver.)」「わたし、恋始めたってよ!」(第10回アイドル楽曲大賞受賞曲)「YOIMIYA」「虹ノ湊」の4大ヒット曲が網羅されたこのアルバムは、さらに、ばってん少女隊が活動拠点とする九州七県の祭りをイメージした楽曲で構成されている超大作となっている。
 だが、私は思うのだ。ばってん少女隊はどうしたらより多くの人に注目してもらえるのだろう?、と試行錯誤してきたのは確かだが、スターダストプラネットに所属するアイドルとしての彼女たちのスタイルが一変した訳ではない、と。むしろ、今、彼女たちばってん少女隊のスタイルが発酵した結果なるべくしてなったのだ、と。それは執念に他ならない。その結果、2020年の自主レコードレーベル設立を決定的区切りとして、本作『九祭』で完成させた、彼女たちばってん少女隊の現下の基本路線としてとらえ返しうる<和製(HAKATA) Lady Soul>の深化を勝ちとった。
 その意味で、ばってん少女隊 4th album『九祭(CUE-SAI)』は、和製グレイスランドとでも形容するしかない九州発MATSURI(祭)ワールドミュージックアルバムとして完成した。
 ポール・サイモン『Graceland』(グレイスランド)とダフト・パンク『Random Access Memories』(ランダム・アクセス・メモリーズ)を足してニで割ったかのようなご機嫌な作品で、いよいよ<九州から全世界へ>のアドバルーンをぶち上げたのだ❗
 九州七県の祭祀と自然遺産と人気観光スポットや名産品、果ては懐かしい街並と風景をめぐる全12曲の巡礼(たび)。この旅路の果てに、未だ見たこともない音楽世界が開示される。これこそ、九州発ばってんMATSURIワールドミュージックに他ならない。
 オリエンタルでアジアンでアイリッシュで旧ユーゴスラビア的とも言える九州初の和製<多国籍ダンスミュージック>。
 九州各県の祭りをモチーフに、ルーツとコンテンポラリーとオルタナティブとユニバーサリティが一体となり、聴き応えしかないアルバムが完成した。
 この意味で、ばってん少女隊 4th album『九祭(CUE-SAI)』は、COVID-19で様変わりした現代世界の異相と真っ向から対峙し・日常に光りを放つかのような、のちのちまで語り継がれるガールズポップユニットの金字塔を樹ち立てたのだ❗
 著者は断言する。今日も何処かで悲しみと哀しみの声がする2022年を代表するアイドルのオリジナルアルバム名盤は、
ばってん少女隊『九祭(CUE-SAI)』、
RYUTist『(エン)』、
私立恵比寿中学『私立恵比寿中学』
をおいて他に、ない!、と。
 そして、ばってん少女隊『九祭(CUE-SAI)』は来月の26日に迫った中野サンプラザワンマンライブ『御祭sawagi〜踊れ心騒げ〜』にて、真に完成するだろう❗



 以下、収録曲全曲をみてゆきたい。
 
 

01.OiSa (2021 ver.)

作詞作曲:渡邊 忍(ASPARAGUS)

■福岡をイメージ

⇒和製ファンクっぽいテクノポップもしくはビートポップだが、この曲の根底にはBLUESが貫かれている。デビューシングル「おっしょい」が「おいさ」へとヒートアップしたとか、祭祀・祭礼をイメージしたダンス・ミュージックと説明されがちだが、この曲の核心は、肩の力を抜いて生きちゃえば?だ。元々は当時プライベートレーベルを起ち上げたばってん少女隊への渡邊忍的なエールだった。ひるがえって、ちょうどCOVID-19下で生きるすべての人々に寄り添う曲としての意義を持った。だから、この曲はダンス・ミュージックの仮面を被ったばってん少女隊<和製(HAKATA) Lady Soul>のブルース(リズム・アンド・ブルーズ)なのだ。



02.わたし、恋始めたってよ!

作詞作曲:渡邊 忍

⇒昨年2021年度アイドル楽曲大賞インディーズ部門受賞曲。マイナー調の名曲「OiSa」に対して、ドラムンベースを基調としたミドルテンポのダンスバラード。渡邊忍の提供曲は毎度、まったくタイプの異なる曲だが、このアルバム二曲目で『九祭(CUE-SAI)』は深まり、光を放つ。「OiSa」「YOIMIYA」「虹ノ湊」と同様に、おそらくアルバムver.は新たにサウンドと歌唱をクリアーにしバランスを変えた事で、より洗練され立体的な音となった。あえて好きと言わない恋の戸惑いと孤独と切なさと潔さ。深みのある素晴らしいラブ・ソングだ。

 アイドルのアルバムで二曲目にミドルナンバーを持って来れるのは、今のばってん少女隊<和製(HAKATA) レディ・ソウル>だけだ。



03.YOIMIYA
作詞作曲:ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)
⇒ここで宵宮。祭り前夜の眠れないときめき感やノスタルジックな風情。ケンモチヒデフミは、ラテンやソウルのエッセンスを取り入れた・色気のある和製ブラックミュージック(重低音の<祭りビート>)を生み出した。アルバム用に音圧と歌唱のVolumeを上げた事でますます輝きを放っている。
 本来、マジックリアリズム(魔術的リアリズム。ガルシア・マルケス『百年の孤独』に代表されるラテン・アメリカ文学の手法、およびロシアではミハイル・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』、中国では閻連科)というと、日常的な事柄に超常的な物事が融合される事をさすが、『OiSa』以降のばってん少女隊は神懸っている。
 おそらく今年のアイドル楽曲大賞では『YOIMIYA』と『虹ノ湊』がトップテン入りするだろう。そしてこの『YOIMIYA』は楽曲大賞最右翼だ。


04.御祭sawagi

作詞:ASOBOiSM 作曲:PARKGOLF, ASOBOiSM

🟦熊本をイメージ

(担当メンバー:柳美舞)

⇒ASOBOiSMとPARKGOLFによる熊本の「八代妙見祭」をテーマにしたこの曲は、MVも公開された祭り和製テクノポップ&ユーロビート。ソリッドなビートと祭囃子をイメージしたサウンドおよびラップがワクワクさせる。人呼んで<ピーヒャラどんどんラップ>。きっとパラパラっぽいダンスパフォーマンスになるのだろう。エルトン・ジョン『Saturday Night's Alright for Fighting』(土曜の夜は僕の生きがい、ファンダンゴ)や 『Crocodile Rock』

(クロコダイル・ロック)」 のような、ライブ(最終盤煽りブロック❗)のキラーソングとなるだろう。

(オーラスはだいたい劇的な曲か、抜き打ちの新曲)

 ただし、来月の中野サンプラザのタイトル『御祭sawagi〜踊れ心騒げ〜』ともなったこの曲はオープニングで披露されるのではないか? 

声挙げ 駆ける街並

楽しい はじける笑み幸

カレンダーにアウトライン

指折り数えてたこの日


05.さがしもの
作詞作曲:ケンモチヒデフミ
💟佐賀をイメージ
(担当メンバー:蒼井りるあ)
⇒佐賀で行われるバルーンフェスタこと「熱気球競技大会」がテーマ。アイリッシュとアジアン(チャイナ音階)と北欧などのケルト音楽と、和の祭囃子が交差する「さがしもの」。ほっこりするリズムからユニバーサルなマイナー調のメロディをはさみビートが爆発する楽曲構成は抜群。バルーンから地上をのぞみ、自分にとって本当に大切なものを自分自身に問いかける歌詞は実に奥深い。
 楽しいダンスパフォーマンスにふと忘れがちだが、メロディラインは限りなく美しい。





06.和・華・蘭
作詞:Daoko 作曲:GuruConnect, Daoko
🟨長崎をイメージ
(担当メンバー:春乃きいな)
⇒ラテンとファンクの要素を取り入れた異国情緒溢れるテクノポップ。長崎の真昼の情景と世界的にも有名な夜景を対比させながら、パラレルな世界観を浮き彫りにさせつつ、やがてまた同時に一体化させる歌詞は見事だ。マドンナの『La Isla Bonita』(ラ・イスラ・ボニータ〜美しき島)や『Live to Tell』(リヴ・トゥ・テル)のように、スパニッシュなラテンの官能性やエキゾチックなムード。そこにオリエンタルな風情が重なり合う。
求め合った
祈り明かした
愛の営み、さらには「平和」への祈りすら込められている。




07.沸く星
作詞:没 a.k.a NGS(Dos Monos), uami 作曲:没 a.k.a NGS, uami
🟥大分をイメージ
(担当メンバー:上田理子)
⇒地獄谷別府温泉と宇宙開発を掛けた曲。ドリフのちょっとだけよ(タブー)と、エミール・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』に代表される旧ユーゴスラビア民族音楽を彷彿とさせるイントロ。
 喘ぎ声かと思いきや、宇宙人の温泉ラプソディー(笑)。ヒップホップっぽいラップパート。重なり合いコラージュするハーモニィ。ゆったりとためのあるビートのシューゲイザー。
デヴィッド・ボウイの
『Space Oddity』(スペース・オディティ)、
『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』(ジギー・スターダスト)、
さらには、
ザ・ビートルズの『Across the Universe』(アクロス・ザ・ユニバース)
を想起させる、無重力下で浮遊感漂う宇宙の音、かてて加えて悠久のシンフォニーを作り上げるのに成功している。
 けれど本当のテーマは悲しみをこえて、地獄谷温泉に入るのは至福のひととき。







08.Bright & Breezy
作詞:YonYon 作曲:YonYon, DÉ DÉ MOUSE
🟪宮崎をイメージ
(担当メンバー:瀬田さくら)
⇒竹内まりや(山下達郎)と原由子(桑田佳祐)ばりのフィリー・ソウル。ソリッドなビートながらポップで美しいメロディラインは秀逸。ツインボーカルを幾重にも重ね合わせ美しいコーラスを作り上げる。まさに、ウォール・オブ・サウンド! 宮崎の風景にノスタルジックなムードたっぷりのロマンスを重ね合わせたかのようなブルー・アイド・ソウルは無敵だ。とりわけ、竹内まりや『夢の続き』『元気を出して』調のシティ・ポップ感覚に溢れたAORに仕上がった。





09.南風音頭
作詞:村里 杏, サトウ ショウゴ 作曲:サトウ ショウゴ
🟩鹿児島をイメージ
(担当メンバー:希山愛)
⇒日本の民謡とチャイナ音階と奄美大島の民謡&沖縄民謡がご機嫌なグルーヴを奏でる、さり気ない和製レゲエ的アプローチすら感じる。ゆったりとした元ちとせやサザンオールスターズ「ナチカサヌ恋唄」っぽい曲で、穏やかで多幸感あふれる祭りサウンドだ。






10.禊 the MUSIC
作詞作曲:渡邊 忍
⇒ディスコやユーロビートも滲ませた、明る目の木村カエラやaiko『ロージー』っぽいポップなROCK'N'ROLL! この曲だけはオートチューンが薄っすらとしか掛かっていない。アイドルでこの世のすべてを浄化するかのような輝きに満ちている。メジャーデビュー曲『おっしょい!』の続編的な回答だ。少女からレディへと成長したばってん少女隊がこれまで救済されてきた恩返しとして、九州から世界へリスナーを救済する。
 テイストはザ・ビートルズ『ロックンロール・ミュージック』およびジョン・レノンのアルバム『ロックン・ロール』に代表されるブリティッシュ・サウンド(マージービート)、そして特にノルウェーのシンセポップバンドにしてニュー・ウェイヴを代表するa-ha「Take On Me」(テイク・オン・ミー)へのオマージュが捧げられている。中毒性のあるサビとキャッチーなメロディはパーフェクト❗
 渡邊忍は今回、レディになったばってん少女隊に、『御祭sawagi〜踊れ心騒げ〜』中野サンプラザ公演から始まる《未来》を捧げている。


▲この「禊 the MUSIC」のイントロと言えば……最初で最後のオリジナル・アルバム『NIPPON NO ROCK BAND』収録・1曲目の「SHE'LL BE TELLIN' (真夜中へデビューしろ!!)」。




11.虹ノ湊
作詞:Rin音 作曲:Rin音, Taro Ishida
⇒ばっしょーと同郷の福岡・宗像出身のラッパーRin音の提供曲。何度聴いても、何度観ても、意外に飽きないのはラップを挟んだヒップホップのこのトロピカルソングが、甘酸っぱい恋の味をしっかり描いているから。ホームタウンでのあの夏の、切なさや郷愁溢れる情感が絶妙な隠し味となっている(今回も哀愁パートではスーパー中学生の柳美舞が女優ばりの良い味を出している)。そしてとりわけサビの高揚感はズバ抜けている。
 アルバムでは南風音頭から一転、『禊 the MUSIC』とこの『虹ノ湊』と連続で、ダメ押し的なワクワク感の波が押し寄せる❗

12.OiSa PARKGOLF REMIX
⇒オリジナルがブルースおよびブラックミュージックのテイストだとしたら、 PARKGOLF REMIXはあえて言えばミドルなジャズブルースのテイスト。PARKGOLFのこのシンセ・ポップはラストへ向けていよいよ劇的に高まりゆく、そしてシステマティックなオーラスの余韻。九州をめぐる祭りの旅路の果てに、ばってん少女隊の未来が開示される。



▲Billie Holiday「Lover Man」

▲Billie Holiday
「Good Morning Heartache」



 以上のことから、前作から2年──10月19日にリリースされたばってん少女隊 4th album 『九祭(CUE-SAI)』(きゅうさい)は、<和製(HAKATA) Lady Soul>ばってん少女隊が満を持して発表した、プロのアルバムに他ならない。ばってん少女隊は今、長年自問自答してきた九州愛を語りつつ世界をのぞむ。この世のすべてを幸せにしたい━━ばってん少女隊の『九祭(CUE-SAI)』には彼女たちのありったけの愛とヒューマニズムが込められているのだ。



ばってん少女隊、前代未聞のアルバム『九祭』を語る。
今日までの悔しさ、アイドルであることを背負って磨き上げる覚悟━━