②からのつづき。
サザンオールスターズ14th album
『キラーストリート』
('05.10.5)
【02年】
②で述べたように、2001年<9・11>以降、桑田佳祐は時代と格闘し次々と力作を生み出した。
そしてツアーが始まったその只中、11月27日、ソロ・ワークスの集大成2ndベスト盤
『TOP OF THE POPS 』
を発表した。
スタッフから提起されたタイトルを採用した本作には、書き下ろしの新曲と貴重な初音源化作品が複数収録された。
ファンクラブで募った言葉をもとに歌詞が編まれた『素敵な未来を見て欲しい』、
AAAのイベントで奥田民生らと披露したヒューマニズム溢れる『光の世界』、
同じく Mr.Childrenと共演したエイズの偏見と差別を告発する桑田版ブラック・ミュージック『奇跡の地球(ほし)』、
労働歌の最高峰『ヨイトマケの唄』のカヴァーがまとまったCDは、現時点、本作だけである。
2週連続1位、12月月間1位のビッグセールスを記録すると、翌03年には年間4位、165万8千枚のミリオン・セラーに輝いた。
この年2002年、
9月26日に3rdソロアルバム『ROCK AND ROLL HERO』を、2ヶ月後の11月27日に本作ソロベスト盤『TOP OF THE POPS』をたたみかけるように発表したことについて、桑田佳祐は以下のように振り返っている。
『僕の中の
「ロックとポップスという、この二つの音楽の対比を示せたら」という思いもあった。
屁理屈かもしれないが、ロックが個人の精神的なところへ向かっていくのに対して、ポップスはみんなのハートのど真ん中に向けて、何かを投げ込む感覚だったりする……まさに右脳と左脳、フィジカルとロジカルの対比のように。
この二つを同時に並び立たせることに、大きな意味があるんじゃないかなどと、これまた自己陶酔的な青臭いことを、当時のインタビューでは言っていた。
ただ、個人の精神へ向かったからこそ大衆に届く場合もあるし、ど真ん中へ投げても、必ずしも結果がそうなるわけではない。
結局この二つを真ん中で支えているヤジロベエの支点は、自分というひとりの人間なのだ。』
(『桑田佳祐 言の葉大全集 やっぱり、ただの歌詩(かし)じゃねえか、こんなもん』新潮社、2012年9月15日発行版105頁)
、と。
こうしてソロ作の大ヒットに比例して、ご本家サザンの企画ベスト盤『海のYeah!!』がまたも、16・6万枚の売上げを記録したのだった※。
※2013年、サザン復活★を号砲とし『海のYeah!!』が再浮上した。
7月15日付で86位を記録、累積売上げを348・9万枚にまで伸ばした。
この記録は2023年現在
①小田和正『自己ベスト』の548回チャートインを塗り替え、登場回数第1位627回に輝いているばかりではない。②<2枚組以上のアルバム>としては、歴代アーティスト最高売上(360.5万枚)を更新し続けているのである。
THE BALDING COMPANY を引き連れて、桑田佳祐はソロ名義での8年ぶりのツアーに出た。11月16日~12月22日まで全9公演
『No Reason Coca-Cola presents 桑田佳祐 全国ドームツアー2002 「けいすけさん、色々と大変ねぇ。」』
である。ナゴヤドーム⇒福岡ドーム⇒東京ドーム⇒大阪ドームで各々2デイズ⇒ファイナルは札幌ドームという行程をたどった。
特筆すべきは、日本のソロアーティストでは初めて、桑田佳祐が5大ドームツアーの偉業を達成したことである(サザンとしては05年に主要ドームツアー達成)。
さらに、2022年にはソロアーティスト史上初の3度目の5大ドームツアーを達成。
2017.10.17〜2017.12.31
WOWOW presents 桑田佳祐 LIVE TOUR 2017 「がらくた」supported by JTB
2022.11.2~12.31
桑田佳祐 LIVE TOUR 2022「お互い元気に頑張りましょう‼」supported by SOMPOグループ
このように桑田佳祐はソロ名義で3回、ロック・バンドサザンで3回、合計6度の5大ドームツアーを完遂している。
※※ちなみに東京ドーム公演に関しては、イベントのゲストで招かれて最初のステージを披露したのは THE ALFEEである。
単独ではミック・ジャガー。こけら落とし公演は88年4月11日美空ひばりが実現した(89年6月24日逝去)。
5大ドームツアーを初めて実現したアーティストはSMAPで、ソロのミュージシャンは桑田佳祐だ。※※
しかも、12月1日には
『Act Against AIDS '02』
に出演。
名古屋市民会館では小田和正らと関口和之が出演。
東京・日本武道館では桑田佳祐が斎藤誠と深町栄とトリオで出演。
なんと桑田は関口ばりにウクレレを演奏。中盤13曲目に出演し、5曲のビートルズ・ナンバーを披露した。(女優・江角マキコらも出演)。
さらに桑田佳祐の年越しライブが決定!
12月27日~31日横浜アリーナ4公演
『追加公演!! No Reason Coca-Cola presents 桑田佳祐 年越しライブ2002 「けいすけさん、年末も色々と大変ねぇ。」』
で締めくくった。
【03年】
サザンオールスターズがデビュー25周年を迎えようとしていた2003年、彼らサザンは3月からニュー・アルバムのレコーディングに入った(結局、完成は2年後)。
ドラマー松田弘がこの年もアルバムを完成させた。前作は言わば架空のサントラ盤の想定でつくったアルバムだったが、本作は井坂聡監督作品『マナに抱かれて』のサントラ盤であり、音楽監督をヒロシが担当した。6月4日発売、
松田弘
『[マナに抱かれて]o.s.t』
は彼がサウンド・クリエーターとしても力を発揮した作品である。
サザンの『TSUNAMI』を有里知花がカヴァーしている。
こうして、6月25日、サザンはデビュー25周年を迎えた。
4日後の6月29日、
『桑田佳祐の音楽寅さん ~MUSIC TIGER~ サザンオールスターズ・スペシャル』
が放送された。
『FNS27時間テレビ みんなのうた』で、幕あい劇仕立ての演奏を披露。
同時に「サザンオールスターズ応援団」限定で21日に開催した神奈川県鎌倉でのサザン25周年記念ライブ
『SPECIAL LIVE in 建長寺』
の模様が放送された。番組のラストでは、一ヶ月後に発売する約2年8ヵ月ぶりの新曲『涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE~』を披露した。
ところで25周年記念日の6月25日は、サザンオールスターズ1978年の〈デビューシングル〉が装いも新たにリリースされた。
そして1週間後、またもニュースを独占することになる。
この復刻盤
『勝手にシンドバッド 胸さわぎのスペシャルボックス』
が初動22万枚を売上げ週間1位をかっさらったのである!
デビュー・シングルは当時最高3位だったことから、実に四半世紀(25年)=1,306週経って、初めてオリコン首位に輝いたのだ(年間23位、29万枚)。2023年現在歴代最長記録。
そして、7月23日に先にみたように、約2年8ヵ月ぶりの(サザン復活ツアーを想定した新曲)47thシングル
『涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE~』
が発売された。
2週連続1位、7月月間1位、年間7位73・7万枚を記録した。
この年サザンは49万人を動員する全国Zepp&野外ライブツアーを開催した。(パーカッショニストの野沢は腰の持病のため休養)
『SUMMER LIVE 2003
「流石(SASが)だ真夏ツアー! あっっ! 生。だが、SAS!」~カーニバル出るバニーか!?~』
である。
北は札幌から南は沖縄まで遠征。
7月28日~8月5日はファンクラブ・スペシャルライブとして、福岡と札幌のZeppで4公演。
8月16日~31日は名古屋・神戸・横浜の野外で6公演、40万人を動員。
さらに、9月6日-7日には、7年ぶり3度目の沖縄県宜野湾市海浜公園野外劇場で、特別公演を開催した(全2公演8,000人動員)。
Zeppでは『TSUNAMI』を、沖縄では桑田がリスペクトする『花~すべての人の心に花を~』をカヴァー。
デビュー曲から新曲まで、まさにサザン25周年を飾るにふさわしいオール・タイム・ベストと呼ぶべき、熱気にあふれたセットリストが組まれた。
この年も桑田佳祐は12月2日~4日にパシフィコ横浜国立大ホールでAAAに出演。
『Act Against AIDS'03 「栄光のDISCO & SOUL」』
を実現。
オーティス・レディング、サム&デイブにシュープリームスやアース・ウィンド&ファイア、ついにはロバータ・フラック、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダー『迷信』に、テンプス『マイ・ガール』まで、60年代ソウル、モータウン、80年代ダンス・ミュージック全開のステージは圧巻だった。
【04年】
この年はレコーディングに大半が費やされたが、サザンの新曲が3枚リリースされた。
4月14日
『彩~Aja~ 』
1位、年間23位。
7月21日Double A-side single
『君こそスターだ/夢に消えたジュリア』
1位、8月月間1位、年間8位に輝いた。
11月24日には記念すべき50枚目のシングル
『愛と欲望の日々』
をリリース。
4作連続(2☆TOP SINGLEも含む5作品が)初登場首位を獲得し、12月月間1位、年間16位を記録した。
この只中、7月18日にはディファ有明で
『SAS応援団 presents サザンオールスターズ真夏の夜の生ライブ~海の日SP~』
が開催された。
恒例のAAAに桑田佳祐も出演。
『Act Against AIDS '04 THE GOLDEN AGE OF BRITISH ROCK ~愛と青春の英国ロック~』
を11月30日、12月1日2日と開催。
ブリティッシュ・ロックを次々とカヴァーした。
年末12月27日~31日は横浜アリーナで
『サザンオールスターズ 年越しライブ2004-2005「暮れのサカナ」』
を開催。05年のアルバム・リリースに向け弾みをつけた。
【05】
この年、サザンはまたも前人未踏の記録を樹ち立てた。
デビューシングル『勝手にシンドバッド』から00年の『TSUNAMI』までシングル盤44作品をCDで再リリースしたのだが、24日付デイリーT0P50に、なんと!44作品が全てランクインしたのである。
さらに、7/4付オリコン週間チャートで、T0P100内に44作が同時ランクインする偉業を成し遂げた。
CDTVのランキングでは、ずっとサザンの曲がかかりきりとなった。現在まで不動の記録となっている。
1ヶ月後、7月20日には51stシングル
『BOHBO No.5/神の島遥か国』
を発表。3位を獲得した。
8月7日には、02年に桑田佳祐で出演して以来となる
『ROCK IN JAPAN FES.2005』
に初めてサザンとして参加した。
なみいる新進のロックバンドを前に《チャコ》《フリフリ》《マンピー★》から開始し、《ホテバシ》《シンドバッド》《BOHBO.》で会場を熱狂の渦に巻き込み、アンコールは《みんなのうた》で圧倒したのであった。
いよいよ10月5日サザンオールスターズは、『さくら』以来7年ぶり(ベスト盤『バラッド3』以来5年ぶり)に
14枚目のオリジナル・アルバム
『キラーストリート』
を発表した。
03年3月から開始したレコーディングは05年8月まで過去最長の3,300時間、のべ2年半にわたった。
アルバム・タイトルの由来は、ビクター青山スタジオに面した外苑西通り、通称"キラー通り"から取られた。
彼らサザンが、ザ・ビートルズの事実上のラスト・アルバム『アビーロード』を意識したことは明らかであった。
アルバム初回盤の帯には
『"「すごいの、頂戴。」名盤保証!!" 』
のキャッチコピーが記された。
CD2枚組全30曲、アナログ盤にして3枚組の本作は、週間1位、年間10位102万5千91枚を売上げ7年ぶりにミリオンセラーを達成。
そして、2枚組オリジナル・アルバムでは B'z以来、約12年ぶり通算2作目の、ミリオンセラーに輝いた。
しかも、25年以上のキャリアをもつアーティストの、それもオリジナル・アルバムでのミリオン突破は“オリコン史上初”であり、27年と5ヵ月の記録を樹立した。
第20回日本ゴールドディスク大賞でも「ロック&ポップ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。
この『キラーストリート』を引っ提げ、サザンは10月13日から自身初の5大ドームツアーを開始した。(桑田佳祐は02年に達成。サザンとしてはドームツアーは行っていたが、〈5大ドームツアー〉は初めてだった)。
『TOYOTA Presents Southern All Stars Live Tour 2005
みんなが好きです!
supported by RUSS・K』
は12月31日のカウントダウンライブまで全21公演を行った。
翌06年3月15日、サザンオールスターズ・スペシャル・ライブDVD『FILM KILLER STREET (Director's Cut) & LIVE at TOKYO DOME』が発売された。
ツアーとライブ映像の発売をもって、サザン14thアルバム『キラーストリート』は、真の意味で、ここに完成を遂げた。
東京ドーム公演
【Set list】
01.Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)
02.My Foreplay Music
03.希望の轍
MC
04.神の島遥か国
05.セイシェル~海の聖者~
06.愛と死の輪舞(ロンド)
07.JUMP
08.愛と欲望の日々
09.別離(わかれ)
10.ごめんよ僕が馬鹿だった
11.リボンの騎士
MC
12.YOU
13.海
14.栞(しおり)のテーマ
15.Bye Bye My Love (U are the one)
16.からっぽのブルース
17.恋するレスポワール
18.夢と魔法の国
19.キラーストリート
20.限りなき永遠(とわ)の愛
21.ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~
22.ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
23.マチルダBABY
24.イエローマン~星の王子様~
25.BOHBO No.5
ENCORE
EN1.水道橋ブルース ~ 勝手にシンドバッド
EN2.TSUNAMI
EN3.LOVE AFFAIR ~秘密のデート~
MC
EN4.心を込めて花束を
④につづく。
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