③のつづき。




<2013年年末~2014年7月>



2013年の年の瀬も押し迫る12月21日、百田尚樹原作・山崎貴監督作品『永遠の0』が公開された。前述したようにサザンオールスターズの『蛍』がエンディングに流れるこの映画は、8週連続1位を記録し、年頭から今年度日本映画ナンバー1の呼び声をほしいままにした。




批評的な評価は賛否両論となったが、涙で手拭いを濡らしこの映画の主人公にインスピレーションを受けた桑田は、「戦争放棄」の意志をこめて『蛍』を作曲した。映画エンディングver.のテイクは、シングルver.のテイクが完成する前に山崎組に提供された。



映画の大ヒットに比例し、54枚目のシングル『ピースとハイライト』は再び三たびシングルチャートを急上昇し、2014年7月現在、その累積売上は37万枚に達した。





さらに、12月31日サザン復活ライヴ映像作品

『サザンオールスターズ SUPER SUMMER LIVE 2013 灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!! 胸熱完全版』

がリリースされた。



35年間の声援とリベンジ・イヤー1年間の感謝を込め、何とか2013年中にお届けしたい、との桑田の思いに応えサザンのフロントチームが結束した結果、大晦日発売にこぎつけた。


その結果、このサザンのライブDVD&Blu-rayはオリコン週間チャートで3冠に輝くと共に映像作品としては4つの年代で首位達成の金字塔を樹ち立てたのであった。


1月13日付

★オリコン週間映像DVDランキング1位

★オリコン週間映像BDランキング1位

★オリコン週間総合ミュージックDVD・BDランキング1位

の3冠達成。




ミュージック映像作品では史上初の4年代1位を獲得した。
(1980年代・1990年代・2000年代・2010年代)



◆89年4月12日発売
『女神達への情歌(報道されないY型(ケイ)の彼方へ)』
⇒25thシングルと同時発売されたビデオシングル



◆93年3月27日発売
『歌う日本シリーズ1992~1993 LIVE at YOKOHAMA ARENA 29th Dec. 1992』



◆06年3月15日
『FILM KILLER STREET & LIVE at TOKYO DOME』



◆08年DVDは12月3日、BDは12月17日発売
『サザンオールスターズ真夏の大感謝祭 LIVE』





こうして、サザンは35周年リベンジ・イヤーを華々しく飾ったのである。




2013年度サザン活動総括《年末座談会》

拙稿。
《座談会》おこし。





2月8日、TVドラマ『最高の離婚Special 2014』が放送された。桑田佳祐が約1年前にリリースした『Yin Yang(イヤン)』がエンディングに流れた。



その1ヶ月後、3月13日、横浜市立横浜吉田中学校の卒業式で、原由子が作曲と歌詞の一部を手がけた校歌が斉唱された。校歌は元々2013年に、原由子の実家の天ぷら屋を経由して依頼された。それは原由子の母校である吉田中学が、耐震上の理由により2013年4月21日をもって閉校となり「横浜吉田中学校」として再編統合されたことが彼女の心を揺り動かすきっかけとなったのだった。


なお、閉校直前の2012年11月21日、吉田中学校にももいろクローバーZが訪れ、中学時代の想い出にと、新曲『黒い週末』を校内放送で流し体育館でライブを行ったことも記憶に新しい。
中島みゆき作『泣いてもいいんだよ』で初のオリコン週間1位を獲得したももいろクローバーZは、7月30日にニューシングル『MOON PRIDE』をリリースした。




その前日、3月12日、<3・11>から3年を経た翌日、

『桑田佳祐 Act Against AIDS 2013 昭和八十八年度!第二回ひとり紅白歌合戦』

の映像作品がリリースされた。



作品化にあたって収録曲全曲承諾は洋楽もあり容易ではなかったが、スタッフチームが海外に訪れる等尽力し、最終的に発売にこぎつけた。


オリコン3月24日付ウィークリーBlu-ray&DVDチャートで同時1位を獲得。映像作品としては、男性ソロ・アーティスト初の総合首位を獲得した。




同じく3月30日、元ORIGINAL LOVEの宮田繁男さんが永眠された。

桑田・原の後輩として青学時代“Better Days”に在籍し、サザンのデビュー後も尽力。在学中にドラマーとしてプロデビューを果たし、輝かしい音楽人生を歩まれた。

原由子ソロデビューアルバム『はらゆうこが語るひととき』(1981.04.21)と、ソロデビューシングル『I LOVE YOUはひとりごと』(同上)は故人の力添えなくして、歴史に名を残すことはなかった。

嘉門雄三名義でリリースされた桑田の伝説の洋楽カヴァーLIVEアルバム『嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!』(@Shibuya eggman 1981.12.11-12./1982.03.21)での故人のドラム・プレイ、中でもオーティス・クレイのカヴァー『Trying To Live My Life Without You』に入る寸前の「ハイ、宮田です!カウント行きます!」の第一声は永久に不滅である。
4月4日故人の葬儀が営まれた。




4月に入ると、9日『サッポロプレミアムアルコールフリー』のコマーシャルに桑田佳祐が出演していると共に、サザンの新曲『パリの痴話喧嘩』が使用されていることが発表された。

サッポロのプレアルでは昨年桑田のソロ名義の新曲が使用されてきたので、サザンの新曲CMオンエアは意表をついた。

この曲は日本語にもかかわらず、フランス語で歌っているかのようなシャンソンである。






さらに、4月18日竹内まりやの新曲に夫・山下達郎に加えて、桑田佳祐・原由子夫妻がコーラスとしてゲスト参加していることが発表された。この楽曲は20日より毎週日曜に放送されたドキュメンタリ対談番組『ワンダフルライフ』のテーマ曲で、7月23日にリリースされた竹内まりやのニューシングル

『静かな伝説(レジェンド)』

である。



公私にわたり親交が深いこの4人が楽曲制作で顔を揃えるのは、山下達郎の傑作アルバム『僕の中の少年』収録の『蒼氓』以来、実に26年ぶりとなった。
竹内まりやは『静かな伝説(レジェンド)』も収録された、35周年イヤーを締めくくる7年ぶりのニューアルバム

『TRAD』(トラッド)

を9月10日にリリースした。



また、5月28日、平井堅がコンセプトカヴァーアルバム

『Ken's Bar Ⅲ』

をリリースした。このアルバムは平井がアコースティックをメインに据えたコンセプト・ライヴ「Ken's Bar」15周年を記念して発表したものだが、サザンの『いとしのエリー』が収録されライヴでも披露された。平井は6月6日の『ミュージック・ステーション』にも出演し、「国宝級の名曲」と紹介し『いとしのエリー』を心こめ歌唱披露した。余談だがタモリが寄ってきたカメラに向け「クワタくん」と呟いたのも印象的だった。新作披露を待っているという合図(サイン)であった。


同じく28日、aiko15周年イヤーの締めくくりに『別冊カドカワ 総力特集 aiko』が角川マガジンズより出版された。同書には同日リリースされたaikoのニューアルバム特集と並んで、桑田佳祐のメッセージが寄稿された。aikoの11枚目のアルバム

『泡のような愛だった』

は6月9日付オリコン週間チャート1位を獲得した。









6・25 <「進撃のサザン! 2014」宣言>発表の経緯】



この只中、2014年7月5日に1千回の放送を迎えたTOKYO-FMレギュラーラジオ生放送『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(毎週土曜夜11時)にて桑田は、この間行ってきたレコーディングはアルバム制作を目的としたものであると告げた。


これに先立つ、5月17日と24日、親友にしてサザンの“名付け親”である宮治淳一と二人が思春期に影響を受けた音楽について語らう特集が録音放送された。続く、5月31日の2週間ぶりの生放送で、桑田は新しいアルバムを制作している旨を初めて言明したのだった。




ついに6月21日放送回のラストで、チーフA&Rの小野朗(2023年6月22日の株主総会より、レーベル長から「A&R1部長 兼 A&R3部、Happy House 担当」取締役に昇進)は絶叫した。


「やっと、この日が来ましたー!<僕たちの『キック・オフ』>ですよ。桑田さん!」


と、6月25日の36周年記念日に、サザン2014年活動計画を発表することを匂わせたのである。



翌日22日、Twitter 「sas-fan.net」でも、「25日はいよいよサザンデビュー記念日! 昨年の復活発表から1年。時の経つのは早いですね。」
「とにかくキックオフです!」
、と明示したのだ。





こうして、6月25日、デビュー36周年を迎えたサザンオールスターズはついに2014年活動計画の全容を公開した。


題して、


「進撃のサザン! 2014」


宣言。
同時公開した『「進撃のサザン」キックオフトレーラー』では、9月10日にリリースされる45枚目のニュー・シングルにカップリングとして収録される『天国オン・ザ・ビーチ』というなんとも人を食った軽快なロックン・ロールが流された。


サザンは2013年の活動再開から1年、2014年は新作オリジナル・アルバムの制作を進めることで、来たる2015年にニュー・アルバムを引っ提げ、10年ぶりの全国ライヴ・ツアーを開催する旗幟を鮮明にしたのだ。



36年間もの過去の栄光にすがることなく、依然として前へ前へと快進撃を果たし、断じて追撃の手を緩めぬアドバルーンをぶちあげた!




かかるサザン2014活動計画は以下の内容であった。



進撃①
サザン1年ぶり55枚目のシングルを9月発売


進撃②
9年ぶりの年越しライヴ12月横浜にて開催決定


進撃③
9年ぶり15枚目のスタジオ・アルバムを年内完成に向け鋭意制作中


追撃
野沢“毛ガニ”秀行(パーカッション)が10月19日で60歳を迎える。




一見して明らかなように、2014「進撃3連発!」は、サザンオールスターズが2015年新春に10年ぶり15枚目のニューアルバムを発表し、全国ドーム&アリーナ・ツアーに打って出ることが、あらかじめビルト・インされていた。

そのステップとして、9月55枚目のシングル発表と12月年越しライヴ開催が位置付けられていることは、火を見るよりも明らかであった。





しかも、桑田はアルバム制作中のサザンに代わって、抜き打ちライヴを敢行した。




桑田がパーソナリティを務めるTOKYO-FMのレギュラー・ラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』1000回記念リスナー大感謝祭ライブである。



TOKYO FMにて1995年4月に始まった本番組は、本年4月で20年目に突入した。そして、7月5日に通算1,000回目の放送を迎えた。


それを記念し桑田は、リスナー大感謝祭<生歌ライブ>を東京・半蔵門のTOKYO FMホールで、7月11日(金)-12日(土)に2days開催したのだ。




『SMBC presents 桑田佳祐のやさしい夜遊び

~ 夏にサザンないの!? いいかげんに1000回!! ファンやめたるわ!! 生歌ライブ ~』



である。

三井住友銀行(SMBC)、SAPPORO、TOKYO FMの提供で、抽選に当選した総勢1000人限定で集結。7月12日の公演は、当日、番組放送1001回目を祝し全国38局フルネット(録音)放送された!

サザン、桑田名義のソロ曲、カヴァー曲が縦横無尽に披露されたのだ。






それに先立つ、7月5日、サザンのベースマン・関口和之がDJを担当する新番組もスタートした。


Inter FM『NO-FO-FON TIME』


毎週土曜日 10:00~11:00
※大阪のFMラジオ局「FM COCOLO」でも毎週水曜日21時~22時に放送(7月2日(水)はスペシャルプログラムがオンエア)されている。




である。

ムクちゃん(関口)が、「おもてなし」を超えるインターナショナルな日本語とする「のほほん」をキーワードに、上質で、ゆるやかな、エネルギーチャージの時間を演出する番組もスタートした。





こうして、サザンオールスターズは2014年6月25日を決定的な区切りとして、<進撃>のアクセルを一気に踏み込んだのである。






⑤につづく。









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