①からのつづき。







【08年】

より新しいものをつくるための充電期間……『キラーストリート』完成で全てやり尽くした、今このまま続けようと思えば続けられるがそれではサザンの看板にぶら下がることになる、と桑田が明言し、5月19日「無期限活動休止」を発表したサザンだが、いよいよ休止前最後のライブとなる『真夏の大感謝祭』が近づいてきた。




8月6日、この時点でのラストシングル53rd


『I AM YOUR SINGER』


をリリース。

2作連続にして通算14枚目の1位を獲得した。8月月間1位に続き〈年間3位〉を獲得(年間1位と2位は、嵐)。
音楽の流通形態が多様化した状況の中、22回チャートに登場。47thシングル『涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE』以来、5年ぶりに30万枚を突破した。年間では嵐に次ぐ52万289枚を記録。08年度50万枚を突破したのは嵐とサザンだけであった。なお、初回盤は予約だけで"完売"の状態となり、瞬く間に店頭から姿を消した。
この結果、サザンは10位以内獲得歴代最多週数を246週まで更新した。







I am your singer.

僕の生きがいは

数えきれないその笑顔




「愛の詩(うた)」も「魂の声」も

あなたがくれたプレゼント




きっと未来はあてなき旅の途中

また逢う日のため笑っておくれ




夏がまた来るまでは

互い涙見せずに

いつまでも変わらぬ想い




遠く離れ離れの時も「大好きだよ」と

嗚呼 口唇に微笑みを

Oh…いつの日も乗せて!!







I still remember.(Remember)

この素晴らしい(You are my love.)

永遠(とわ)の出逢いを忘れない




ひとりぼっちじゃ夢叶わない

さあみんなで Love Song

アンコール




いつも人生(ザ・ステージ)にゃドラマが待ち受けてる

愛しいその声が僕を呼んでる






歌は熱い叫びか?

甘い囁きなのか?

この胸に響くはメロディ




それは八月末の

空の花火みたいに

嗚呼 咲きながら 散りながら

Oh…今夜こそキメテ!!







夏がまた来るまでは

互い涙見せずに

サヨナラは明日(あした)のためにYeah




遠く離れ離れの時も「大好きだよ」と

嗚呼 太陽が沈むのを

Oh…Let's sing along. 止めて!!




Woo, la la…




嗚呼 口唇に微笑みを

Oh…いつの日も乗せて!!








世間が期待するありきたりな曲にしたくないと考えた桑田は、湿っぽい雰囲気にしないためEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)を採用した。しかも、サザンにしか出来ないスタイルを貫いた。せつなくも温かく再会を誓うこの曲の歌詞は、30年間に出逢ったすべてのリスナーに感謝を捧げる内容となっている。



「僕の生きがいは数えきれないその笑顔」と唄いながら、メンバー全員が弾けるダンスも話題を呼んだ。しばしの別れを明るく告げるこの曲は、もちろん来るべき『真夏の大感謝祭』で披露するためにこそ書き下ろされたのであった。







8月16日-17日、23日-24日、ついに日産スタジアムのライブが始まった。



『au by KDDI present サザンオールスターズ「真夏の大感謝祭」30周年記念LIVE supported by WOWOW 』


では全46曲(16日は47曲)を披露した。

ファン全員に感謝を捧げるため、4日間で約30万人が動員された。日産スタジアムでの同一ミュージシャンによる<2週連続4デイズ公演>は今なお破られていない。(EXILEが2ヶ月で4公演実現したのみ)。





【Set List】


01.YOU

02.ミス・ブランニュー・デイ (Miss Brand-New Day)

03.LOVE AFFAIR ~秘密のデート~

MC

04.女呼んでブギ

05.いとしのフィート

06.お願いD.J.

07.奥歯を食いしばれ

08.ラチエン通りのシスター

09.TO YOU

10.C調言葉に御用心

11.働けロック・バンド (Workin' for T.V.)

12.松田の子守唄

13.HELLO MY LOVE

14.朝方ムーンライト

15.思い出のスター・ダスト

16.夏をあきらめて

17.Oh! クラウディア

18.東京シャッフル

19.そんなヒロシに騙されて

20.あっという間の夢のTONIGHT

21.メリケン情緒は涙のカラー

22.顔

23.BYE BYE MY LOVE(U are the one)

24.メロディ(Melody)

MC

25.愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~

26.シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA

27.爆笑アイランド

28.ごめんよ僕が馬鹿だった

29.ロックンロールスーパーマン ~Rock'n Roll Superman~




<サブステージへオープンカーで移動>

30.涙のキッス

31.チャコの海岸物語

●せつない胸に風が吹いてた(16日のみ)

32.夕陽に別れを告げて




<メインステージへ>

33.いとしのエリー

34.真夏の果実

35.TSUNAMI

36.I AM YOUR SINGER

37.希望の轍

38.OH! SUMMER QUEEN~夏の女王様~

39.エロティカ・セブン EROTICA SEVEN

40.HOTEL PACIFIC

41.ボディ・スペシャルⅡ (Body Special)

42.マンピーのG★SPOT






【ENCORE】

EN1.overture掌編「あの日から何度目の」 ~夕方 HOLD ON ME

EN2.みんなのうた

EN3.勝手にシンドバッド

EN4.Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない









大雨が吹き荒れるライヴのステージ上、桑田は何度も絶叫した。

「今日は伝説にはしません!」

「あくまで通常のLIVEです!」

「単なる途中経過に過ぎません!」


「サザンの屋号を一度お預けしますので、みなさん、いったん預かっといて頂戴!」


、と。







あの日から何度目の夏が来ただろう


出逢ったり 別れたり くり返し


美しい 思い出も 大切だけど


人生はこれからを 夢 見ることさ!





-『夕方Hold On Me』のイントロ直前にover tureとして挿入。





3時間半ごえ46曲-それがサザンオールスターズ30年のライブであることをまざまざと示し、『真夏の大感謝祭』が終わった。



サザンのサプライズとは、実は「活動休止」や「復活」を指すのではない。

彼らにとっては「音楽」と「ライブ」そのものがサプライズであり最高の「恩返し」なのであった。






その直後の11月1日から9日まで連日、サザンの楽曲を使用したTVドラマが放送された。


「サザンオールスターズ30th ×日本テレビ55th 33曲連作ドラマスペシャル 『the 波乗りレストラン』」


である。1回1話完結で1日3話が連日放送され話題となった。


さらに、日産4デイズから3ヶ月と10日後の12月3日、最速で、サザンオールスターズ

『真夏の大感謝祭 LIVE』

のDVDが(歌詞字幕付で)リリースされた。17日にはサザン初のBlu-ray Discも発売された。

初回限定盤

『真冬のお歳 BOX』

は予約〆切り日までに予約しないと基本的に入手できなかった。ファンの間では売上のいかんにかかわらず、限定盤はとりあえず期日までに予約しとけ、が定説となっている。





この年最後は、桑田佳祐がさらなるプレゼントを用意した。11月30日~12月2日恒例のAAAで、


『桑田佳祐 Act Against AIDS 2008 「昭和八十三年度! ひとり紅白歌合戦」』


を開催。たった一人で紅白に分かれ61曲!

3日間連続でのべ183曲を歌い切った。






【SET LIST】

01.サン・トワ・マミー:越路吹雪(1966)

02.青い山脈:藤山一郎(1949)

03.コーヒー・ルンバ:西田佐知子(1961)

04.上を向いて歩こう:阪本九(1961)

05.君だけに愛を:ザ・タイガース(1968)

06.恋の季節:ピンキーとキラーズ(1968)

07.君に会いたい:ザ・ジャガーズ(1967)

08.恋のハレルヤ:ザ・ジャガーズ(1967)

09.ブルー・シャトウ:ジャッキー吉川とブルーコメッツ(1967)

10.太陽は泣いている:いしだあゆみ(1968)

11.風が泣いている:ザ・スパイダース(1967)

12.夕陽が泣いている:ザ・スパイダース(1966)

13.真赤な太陽:美空ひばり(1967)

14.学生街の喫茶店:GARO(1972)

15.五番街のマリーへ:ペドロ&カプリシャス(1973)

16.心の旅:チューリップ(1973)

17.あの日にかえりたい:荒井由実(1975)

18.さよならをするために:ビリー・バンバン(1972)

19.シルエット・ロマンス:大橋純子(1981)

20.ルビーの指輪:寺尾聡(1981)

21.時代:中島みゆき(1975)

22.いいじゃないの幸せならば:佐良直美(1969)

23.さらば恋人:堺正章(1971)

24.経験:辺見マリ(1970)

25.空に太陽がある限り:にしきのあきら(1971)

26.終着駅:奥村チヨ(1971)

27.長崎は今日も雨だった:内山田洋とクール・ファイブ(1969)

28.他人の関係:金井克子(1973)

29.君といつまでも:加山雄三(1965)

30.だまって俺について来い:ハナ肇とクレイジーキャッツ(1964)

31.スーダラ節:ハナ肇とクレイジーキャッツ(1961)

32.ハイそれまでョ:ハナ肇とクレイジーキャッツ(1962)

33.ふりむかないで:ザ・ピーナッツ(1962)

34.可愛い花:ザ・ピーナッツ(1959)

35.情熱の花:ザ・ピーナッツ(1959)

36.恋のフーガ:ザ・ピーナッツ(1967)

37.恋のバカンス:ザ・ピーナッツ(1963)

38.LOVE LOVE LOVE:DREAMS COME TRUE(1995)

39.ロビンソン:スピッツ(1995)

40.襟裳岬:森進一(1974)

41.舟唄:八代亜紀(1979)

42.SWEET MEMORIES:松田聖子(1983)

43.3年目の浮気:ヒロシ&キーボ(1982)

44.いい日旅立ち:山口百恵(1978)

45.現代東京奇譚:桑田佳祐(2007)

46.少女A:中森明菜(1982)

47.愚か者:近藤真彦(1987)

48.狙いうち:山本リンダ(1973)

49.情熱の嵐:西城秀樹(1973)

50.渚のシンドバッド:ピンク・レディー(1977)

51.勝手にしやがれ:沢田研二(1977)

52.キューティーハニー:倖田來未(2004)

53.GOLDFINGER '99:郷ひろみ(1999)







【ENCORE】

01.時の流れに身をまかせ:テレサ・テン(1986)

02.涙そうそう:BEGIN(2000)

03.もらい泣き:一青窈(2002)

04.タイガー&ドラゴン:CRAZY KEN BAND(2002)

05.ラブ・イズ・オーヴァー:欧陽菲菲(1982)

06.また逢う日まで:尾崎紀世彦(1971)

07.魅せられて:ジュディ・オング(1979)


08.あの鐘を鳴らすのはあなた:和田アキ子(1972)



【MUSICIANS】

桑田佳祐:Vocal & Guitar

斎藤 誠:Guitar
小倉博和:Guitar
片山敦夫:Keyboard
深町 栄:Keyboard
井上富雄:Bass
小田原豊:Drums
高橋結子:Percussion
包国 充:Sax & Flute
Andy Wulf:Sax & Flute
今尾敏道:Sax & Flute
つづらのあつし:Sax & Flute
佐々木史郎:Trumpet
鈴木正則:Trumpet
荒木敏男:Trumpet
中川英二郎:Trombone
佐野 聡:Trombone
松本 治:Trombone
金原千恵子:Violin
堀沢真己:Cello 
清水美恵:Chorus
安奈陽子:Chorus
角谷仁宣:Synth & Programming

EBATO Choreographer

AAA“ひとり紅白”DANCERS 
Dancer


AND
原由子・松田弘
(サザンオールスターズ)






【09年】

休業を経てサザンがバンド活動を再開するのはおよそ5年後のことであった。

だが、振り返るに桑田佳祐が作品を発表しない年はなかったし、この10年間、週間初登場3位を下回ることもなかった。




4月20日、桑田佳祐初の民放音楽レギュラー番組『桑田佳祐の音楽寅さん ~MUSIC TIGER~』がパートⅡとなって8年ぶりに帰ってきた。


9月20日まで長期放送されるとともに、12月21日22日は『大傑作選もうすぐ寅年 ガオー! スペシャル』が放送された。


熊倉一雄『ゲゲゲの鬼太郎』、ちあきなおみ『喝采』、さらに美空ひばり『車屋さん』に高峰秀子『銀座カンカン娘』などなど……かつての歌謡曲から最新のヒット曲まで歌い尽くした。
海の日記念ライブ、さらに亀田誠治も参加した山中湖の特別野外ライブでは、RCサクセション『雨上がりの夜空に』まで飛び出した。




特筆すべきは、第15回放送で『声に出して歌いたい日本文学』が披露されたことである。


中原中也・高村光太郎・太宰治・与謝野晶子・芥川龍之介・小林多喜二・樋口一葉・石川啄木・夏目漱石・宮澤賢治ら文豪たちと桑田佳祐の時空をこえた文学と音楽とのコラボレーションは、一昨年、2012年のソロツアーで見事ロック・オペラとして昇華するのである。


桑田佳祐にとってカヴァーとは、音楽を愛し歌い継ぐことであると同時に貪欲に学びとることにほかならなかった。





③につづく。










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