ようやく宇多田ヒカルについて。遅れて大変申し訳ありませんでした。(AKBの「Beginner」の驚くべき秘密も遅れてます。)このブログでも11・24ベスト盤をSDN1stとの兼あいで触れた内容が間違っていたので区切りをつけたい。もし閲覧していたならヒッキーごめんなさい。






さて
宇多田ヒカルは10/25 12:58 オフィシャル・サイトで同日発売Wベスト盤について言及。


11/24発売 EMIから

『Utada Hikaru Single Collection Vol.2』
(以下シンコレ2)




ユニバーサルミュージックから

『Utada the best』
(以下Uta best)が発売。




宇多田ヒカルは発売されるアルバムのうち後者の上層部による販売方針について不信感や疑問を表明。その後、マスコミに不買運動のように報じられた事にもとまどっている。特に週刊文春は見識を疑う酷い記事だった。






まずは、ヒッキー頑張れ!
私のヒッキーのメッセージの受けとめは全く違う。アーティストとしての自覚や、ファンへの向きあい方にハッとしたし、マスコミがこの事に一切触れないのはおかしい。




まず、今年いっぱいでしばし「アーティスト活動」を休み「人間活動に専念」すると宣言したヒッキー。だから夏から新曲5曲を含むシンコレ2づくりに精根をこめてきた。


それに比してUta bestは「私の意志とは無関係なリリース」であり、「宇多田ヒカルのシンコレ2の発売に便乗する」「商法」だと疑問を呈した。


レコード会社の意向も尊重してきたが、今の自分の新作すら含まれぬ心のこもっていない作品は発表するにしのびない。「Utada名義の過去作品を持っている人は、そのbestは買う必要はないよ、と言いたい」と。


一見して分かるように、宇多田は不買運動を煽っている訳では何らない。「納得のいく価値ある」作品としてリリースしたいと伝えたいのだ。過去2枚のアルバムで約24曲からレコード会社の意向でセレクトした作品なら、あらためて買う必然性があるのかと疑問を投げかけている。心がこもっていない、と。



これを不買運動だ、生意気だとか曲解するのは余りに宇多田ヒカルが可愛そうだ。むしろ、アーティスト活動を休む前にヒッキーが今の自分の全てを精一杯注ぎこんだシングルのセレクト&新曲5曲が宇多田ヒカルのシンコレ2な訳だ。ヒッキーが夏以来手塩にかけたシンコレ2は、「欠け」がちだった「人間活動に専念」し、次なるアーティスト・ヒカルのステージを準備する前の総集約としての意義をもつ。






そもそも、宇多田ヒカルを私が真面目に聴き始めたのは2nd『Distance』から。01年3月28日浜崎あゆみベスト盤と同日発売で社会現象になっていた。音楽からやや遠ざかっていた私に久々に橋渡し役となってくれたのがヒッキー。



前年末にサザンが『バラッド3』を発表した《9・11》の01年は、1月に160万枚を突破したLOVE PSYCHEDELICOがモンスター級デビュー・アルバム『THE GRETEST HITS』をひっさげてJ-POPシーンに登場。aikoが6月に初期の最高傑作3rd『夏服』をリリース。3月には椎名林檎が7枚目の傑作シングル『真夜中は純潔』を発表した年だった。ご機嫌なミュージックシーンだったね。


因みに《9・11》ジハード自爆に対するアメリカのイラク爆撃に対して、アーティストならびにヒューマニスト的立場から即座に平和を祈る意見を表明したのがヒッキー。決定的な事態に対していかに反応できるか、いかなる立場に立つかは人間的資質に関わる重要な事なのです。




その3・28発売『Distance』は素晴らしい音の艶だった。曲調に関わらず、ヒッキーの独自性はウタダ・ブルーと呼ぶべき琴線に触れるせつなさ・艶。分かる人にしか分からない表現で申し訳ないが山田詠美の小説を読んだ時のような大人のせつなさ、甘さの奥にある苦さだ。





公式によると、趣味にとても共通点がある事が分かった。まず埴谷雄高『死霊』(講談社文芸文庫)。埴谷はカントの『純潔理性批判』ならびにレーニンの『国家と革命』を獄中で読破し、生涯をかけて『死霊』を執筆し続けた人。未来から逆限定して時間的現在としての場所を照射するモノ凄い想像力の持ち主。





さらに芥川龍之介とエドガー・アラン・ポー。探偵小説・幻想小説いや世界文学の創始者といっても過言ではないのがポー。そして芥川は神。初期が注目される芥川だがベストは後期。『大道寺信輔の半生』『河童』『歯車』『或阿呆の一生』。一行で人生の全てを表現してしまった芥川。「人生は一行のボオドレエルにも若(し)かない。」 は身が震えるよね。そして来たるべき国家の未来を予見したジョージ・オーウェル『1984』。最近、早川文庫から新装版が出たが、村上春樹『1Q84』でみなさんご存知ですな。ハリウッド映画『エネミー・オブ・アメリカ』は見た方がいいよ。





音楽はジミ・ヘンドリックス、プリンス、エディット・ピアフ。ジミヘン『エレクトリック・レディランド』なんてぶっとんでるね。プリンスは才能の宝庫。ビリー・ホリデイとピアフの歌声は完璧だね。歴史上最高の女性アーティストです。ヒッキーが日本語で『愛の讃歌』を歌ってくれた事に感動しました。




というヒッキーの音楽について。アルバムについて全て振り返ってゆきます。



しかし俺も含めて皆、ファーストが最高と言ってたけど、現在考えるとやはりヒッキーの選択が正しかった。




《後編に続く。》