(第109回)競取り
何年か前に素人ながらにエッセイ本「たいちろう動物記」を出版して、本屋にも置いてもらった。
はっきりいって千冊と売れなかったが、それでも買ってくれた人もいるようで、嬉しい限り。現在もWeb書店である『amazon.co.jp』や『楽天ブックス』にも置いてもらっているので、有難いと思う。
本が売れたからといって、直接僕にお金が入るわけではない。本を書いて印税や原稿料がもらえるのはある程度著名か、販売部数が伸びた場合であって、趣味で書いているような素人が数百冊売ったところで、まったく印税など入らない。それでも、やはり買って読んでもらうと嬉しい。
先日、その『amazon.co.jp』のユーズド(中古本)として「たいちろう…」が出品されていた。見知らぬ誰かが買って、読み終わったのでユーズドに出品したのだ。元の定価は1300円で、ユーズドは1000円であった。新品にこだわらない人はユーズドを買った方が得なのである。まぁ、ネット上で偶然見つけて僕の本を買う人などまずいないし、ず~っと売れ残ったら出品者にも申し訳ないと思い、話のネタに自分でそのユーズド「たいちろう」を買ってみた。商品はキレイに梱包され、すぐに届いた。東京から送られてきた。
さて、東京のその人はいったいどこでその本をかったのかなぁなどと思い、ハンドルネーム(ネット上の名前。ペンネームのようなもの)を頼りに、出品者のホームページにたどり着いた。その人は「競取り(せどり)」でお小遣いを稼いでいる、と自分のページに書いており、そのノウハウも書いてあった。
まず、中古本販売大手の『ブックオフ』で安く本を買ってくる。それを『amazon.co.jp』のユーズドとして出品する。価格は出品者が自分で決めるのだが、だいたい定価と『ブックオフ』価格の中間くらいで設定する(本の保存状態にもよる)。もし売れたら差し引き数百円の利鞘が発生するのだ。
このパターンでマメに数をこなせば、よいお小遣いになるそうだ。たいした魔法じゃないですか。ハリー・ポッターもびっくり!
それにしても、中古本屋に売られ、競取り屋に転売され、そしてわが元にたどり着いたその本が何とも不憫というか、作家として情けないというか、微妙な気分になった。
さて、最近『Yahooオークション』でも自分の本をみつけた。いわゆるネットオークションである。どこで手に入れたか、「著者のサイン入り」ということであった。著名人のサイン入りなら定価より値が上がったりするが…僕のはかなり安い390円という入札開始価格であった。それでもこれを欲しいと思った人が入札を繰り返せば、どんどん値が上がるのがオークションであり、最高値の入札者が落札するのである。
これもまた話のネタだと思って、自分で入札してみた。そして、僕以外の入札がいっさいないまま、390円でしっかり落札してしまった。銀行で390円と送料300円、振り込み手数料105円、計795円を支払い、自分のサイン本を手に入れた。またまた微妙な気分になった。
2006年5月16日号掲載

セドリック
「ハリー・ポッター」に登場する魔法使い。架空の人物。
| 追記・・・競取り(せどり)にかける人物が見つからず、ハリポタの脇役「セドリック」登場…こんな安易な作家だから、オークションで390円しか値がつかないのね…(笑) |
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