(第145回)あぁ罪、清し
僕は昭和44年(1969)生まれで、現在38歳である。昭和44年というと、映画『男はつらいよ』が始まった年である。全48作あり、最長映画シリーズとしてギネスブックにも載っている。主人公はもちろん、渥美清演じる「寅さん」こと車寅次郎。
僕はとにかくこの「寅さん」シリーズが大好きである。
実は、僕が生まれて初めてみた映画もこのシリーズなのである。それは昭和51年冬に封切られた第18作『寅次郎純情詩集』であった。マドンナは京マチ子、壇ふみ。この時僕は小学校2年生で、父親から
「トラさんの映画を観に行く」
といわれ、てっきり虎のキャラが出てくるアニメか何かだと思い、わくわくして映画館にいった。しかし虎はいっこうに出て来ず、がっかりした思い出がある。それから時を経て大学生になった頃、偶然テレビで寅さんシリーズに再会し、そこから一気にファンになり、レンタルビデオでシリーズ全作制覇したのである。
僕が寅さんシリーズに感情移入しやすい理由がもう一つある。
それは寅さんの甥っ子、諏訪満男の存在である。ご存知寅さんの妹さくらの息子で、映画の設定上僕と同い年になる。このシリーズはだいたい年に二作品が公開され、時代背景もリアルタイムで進んでいく。だから僕が大学受験で悩んでいる頃、満男も映画の中で同じように悩んでおり、僕が浪人すれば満男も浪人し、僕がせっかく受かった大学を中退して社会に飛びだしていった頃、満男も大学がイヤになって長旅に出たのであった。
そんな、満男とともに青春を過ごしてきた僕も今は38歳。そしてそれは、寅さんの第一作の頃の年齢なのである。
寅さんの映画上の年齢設定に関しては、様々な資料がありそれぞれに矛盾点がある。
昭和44年夏公開の第一作では、「16の時に家を飛び出し20年ぶりに柴又に帰って来た…」とあるので、年齢は36歳だと推定できる。しかし同じく昭和44年冬公開の第二作では「俺ア三十八年間このかた…」というセリフがあるので、寅さんは昭和44年の時点で38歳だったとも推定できる。
昭和15年の生まれという噂もあるが、当時の渥美清さんが40歳だったことも考えると、やはり寅さんは第一作公開当時三十代後半の年齢設定だったと考えていい。ということで、かつて満男と同世代だった僕は、今ついに寅さんと同世代になってしまったのである。
隠してもしようがないのでいうと、僕はこれまで恋した女性に振られ続け、独身のままここまできた。しかも現在定職に就かず、かなりフラフラした生活を送っている、まさにフーテン状態。ちなみに妹が二人いて、真面目にしっかりした家庭を作っている。
そんな僕が、将来のことが不安でたまらなくなり、不眠症やうつ気味になることも多々ある今日この頃。そこで、もう一度寅さんシリーズを、今度は自分の身を車寅次郎に置き換えて見て、人生を勉強しなおしたいと思っている。身内に心配ばかりかける罪な男なれど、寅さんのように清し人生を送りたい。
2007年11月16日号掲載

渥美清 1928~1996
東京都出身。寅さんを演じ続けた俳優。1996年国民栄誉賞受賞。
| 追記・・・僕がカラオケに行った時の十八番は20年前から「男はつらいよ」のテーマソングですw あぁお金があったら絶対寅さん全シリーズDVD揃えるけどなぁ… |
![]() | 男はつらいよ 寅次郎純情詩集 (2005/07/29) 渥美清 商品詳細を見る |
