フットハットがゆく! -45ページ目

(第146回)妄想

 
 『妄想タレント』、『妄想キャラ』が最近はやりである。いわゆる実話ではなく、妄想した話をネタとして披露するものである。

 かくいう僕も、かなりの妄想癖がある。

 例えば、僕はサッカー観戦が大好きなのだが、ピンチもチャンスもない、いわゆるこう着状態へと展開してしまう試合も多い。そんな時、眼はテレビを見ていても、頭の中は妄想ワールドへとトリップしてしまうのだ。

 アンダー22才で構成された五輪日本代表サッカーチーム。バラバラだったチームをまとめあげたのはキャプテンのM選手だった。難関といわれたアジアの代表権を勝ち取ったのも、Mの功績が大きかった。
 しかしMはその後交通事故に合い、なんと左足を切断してしまった。Mは義足となったが、それでもサッカーを続けた。もちろんプロの選手としては通用しなかったが、そのキャプテンシーと功績を認められて、五輪代表のS監督はなんとMを代表選手として招集したのである。
 五輪本戦で、Mはずっとベンチから味方に檄を飛ばし続けた。その声に呼応するように日本は奇跡的な勝利を繰り返し、ついに決勝戦でブラジルと対戦した。
 激しい試合は同点のまま延長戦へと突入、後半ロスタイムに日本はゴール近くでフリーキックを得た。ここでなんとS監督は、キッカーとしてMを投入、奇跡にかけた。Mは右足でボールを蹴った。ボールは惜しくもキーパーに弾かれたが、そのあとのクリアボールが偶然にも再び転々とMの前に転がった。ディフェンダーがカバーに入ったため、Mはどうしても左の義足で蹴らなければならなかったが、思い切って振り抜いた。魂のこもったボールはゴールネットを揺らし、日本は金メダルを取ったのだった…。

 …こんな自作の妄想をしているうちに、僕は涙ボロボロに…。はたから見ると、ひじょうにつまらない試合を見ながら号泣しているという、不可解な男の図ができあがっている…。


 僕はいつ何時でもこの妄想ワールドに入れるので、バス停でバスをまっていて、急に爆笑しだしたり、車を運転していて信号待ちで急に泣き出したりということもある。自分がそんなだから、街でそういう状況になっている人のこともよく理解できる。
 たまに、ワールドにでかけたまま戻って来れなくなってしまう場合もあって、苦労することもある。複雑な世界だ。


 さて、妄想ということで中国のかの二十四孝の一人、孟宗の逸話を上げてみる。
 病気の母親が雪のつもる冬に
「筍が食べたい」
 といい始めた。真冬に筍があるはずはなかったが、孟宗が竹に抱きついて大声で
「筍がほしい」
 と泣き叫ぶと、地面が割れ新しい筍が生えてきたという。念ずれば通ずというか、孟宗の妄想が強かったため現実になったともいえよう。

 僕は両親にたいへん迷惑をかけているが、実際にはなかなか親孝行できていない。だからいつも『妄想親孝行』をおこなっている…いつか現実になってくれればいいのだが…。

2007年12月1日号掲載 


孟宗
孟宗<もうそう>
中国の二十四孝の一人。母親孝行の逸話が孟宗竹の語源に。

追記・・・非常に忙しくて原稿を書く時間がほとんどなく、アイデアもなく、なんてことが時々ありますが、その時の文っぽいですね(汗)…。挿絵も超やっつけ的…いけませんねぇw


孟宗竹—歌集 (1983年)
(1983/07)
佐藤 政太

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