「ただ、闇にたゆたう」
「名前も無く」
「僕は今、ひとりぼっち」
暗い闇の中には黒く崩れた壁と何かの残骸。
「ねぇ、早く迎えに来てよ」
「愛しきひと」
「それが自己愛だとしても」
「赦してくれる、君の神が」
青年の髪が、生暖かい風でなびく。
「君の心は、こうしているうちにも」
「染まっているのだね」
「憎悪に」
初めには闇だけがあった。
そこには闇だけがあった。
名も無い青年は、そっと火を付ける。
憤怒の炎の種火。罪が始まる。
「愛しきひと」
「まだ会えるのは遠く未来」
「待っているよ」
「10年」
「その先になろうとも」
「僕は、待っている」