そう。
その、肉体的にも、精神的にも、長い一日は、発表会前の、ピアノあわせの日のことでした。
ふーたは意気揚々と教室に向かいました。
ピアノあわせの日は連続レッスンで、何十人もの人たちがレッスンを受けます。
楽器の出し入れや、調弦時間もシビアに含んでおり、終わったらすぐに、次の人を迎え入れなければなりません。
つーことは、教室の前室の段階で、楽器の準備をしないといけない。
バイオリンに肩当てをつけて、弓に松脂を塗って、準備万端!
前の人のレッスンが終わりました。
教室のドアが開きます。
少し、開きが小さかったので手でドアを開いて・・・っと・・・
・・・・・・ん??
ああああああああああっ!!!!!
スローモーションです。
ふーたの指をすり抜け、ひねこ(ふーたの弓)が、先弓から床に突き刺さります!
かろん。ころころころころ。
弓毛がふぁさっとほどけて、一瞬、さきっぽのチップが抜けたのかと思いました。
冷静にもう一度見て、先が割れていることを確認しました。
いーーーーやーーーーー!!!
タイミングよく、師匠が見に来ます。
なぜか、起こった出来事を隠そうとするふーた。
ま、隠せるはずもなく、簡単に見つかりました。
『いやーーー、見ないでーーー。』(byナウシカ)
そこからの師匠は、早かった。
ふーたが隠そうとしているひねこをひょいっと持ち上げると、隣のお部屋で工房に電話をいれてくださっていました。
(ふーたはもう笑うしかなく、前の人にどないしよー、とかってヘラヘラとお気軽に言っていました。)
そして、電話を終えた師匠は、動じることもなく、教室の弓を貸してくださいました。
さて。
ここからが問題なのです。
発表会は、一週間後。
弓をどないするのか?
修理に出すなら、今日が最後のタイミングです。
・・・つづく。