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染と織の万葉慕情1

   織女の想 1982/4/16

      吉田たすく

 

古(いにしへ)に

 織りてしてし服(はた)を

  このタ(ゆうべ)

 衣 (ころも)に縫いて

   君待つ我を

 

足玉も

 手玉もゆらに

  織る機(はたは)を

 君が御衣(みけし)に

  縫ひもあえむか

 

ここに万葉の歌二首を挙げましたが、万葉集には「染め」「織」を詠んだ歌がかなりたくさんあります。そこで「染め」と「織」の言葉に託した万葉人の心に、織や染の作業に関することを交えながら、私なりに思いを馳せてみたいと思います。

 

ここに挙げた歌は万葉集 巻十に「七夕」「織女(たなばた)」=同意語=に収められた九十七首のうちのニ首です。

 

織女の歌ですから「織」「腹」「衣」「機」「縫」など織物に関係した言葉が多く、布やその用途、織仕事、縫道具などが歌え込まれているのは当たり前ですが、今回が初めてですので取り上げてみました。

「以前織っていた布を、牽牛が来られるこの夕、着物に仕立ててあなたを持っている私です」

「足飾りの玉も、腕を飾るブレスレットの玉も、チャラチャラと涼しい音がして機音と音楽を奏でます。そんな中で織った布を、君のお着物に間に合うように縫いあげることができるでしょうか」

 秋になれば牽牛がやってきます。牽牛に逢える思いでいっぱいの乙女が、足玉も手玉もつけていそいそと機に向かう姿が想像できます。そして、私が織る着物は、一体どんな女性が来てらっしゃるのだろうか、などと考えたりもしていろんな築しみを味わっています。

 

 機(はた)のまねき

  持ち行きて

   天の河打橋わたす

     君が来むため

 

「君のおいでのお役に立つため、機のふみ木を持って行って橋をかけてあげましょう」

 

 機を壊してまで君のおいでをお待ちしている織女。万葉人のおおらかで屈託のない、明るい恋歌や愛の歌が続き、思わず私の胸を締めつけるともままです。

 

 万葉のころの植物の歌をまとめたものや写真集はたくさん出版されております(植物をうたった歌は千数百万にのぼりますから)。ところが、それに劣らぬだけ、「染」と「織」の歌が詠まれているのですが、これを取り上げる人は少ないようです。

 

「染」については上村六郎先生の「万葉の染色」がありますが、「織」についてのまとめた本はまだ知りません。織物の工人として仕事をしている私にはたいへん興深いことなので、これからも調べてみたいと思います。

 

次回からは、染や織に秘められた万葉慕情の展開です。

      (カットも筆者)

 

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筆者略歴】大正十一年四月、倉吉市に生まれる。織物を始めて三十年。東京、大阪で二十数回にわたって個展を開く。代表的作品は倉吉博物館に展示されているタピストゥリー「春夏秋冬」で、新匠工芸会展受賞作品。

現在、大栄中学校教諭、新匠工芸会会員、織物作家。倉吉市鍛冶町、五十九歳。 (1982年当時の略歴です)

 

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上村 六郎(うえむら ろくろう、1894年10月10日 - 1991年10月29日)は、染織文化研究者。

新潟県刈羽郡生まれ。

武庫川女子大学教授、1950年大阪学芸大学教授。58年定年退官、同年「上代文学に現れた色名・色彩並に染色の研究」で京都大学理学博士。県立新潟女子短期大学教授、新潟青陵女子短期大学初代学長、四天王寺女子大学教授、日本染織学園園長を兼任。旭川市の優佳良織(ゆうからおり)工芸館内国際染織美術館館長。

日本の古代染織を研究し、宮内庁の委嘱により正倉院御物裂の調査に当たる。日本染織文化協会会長、名誉会長。著作集全6巻がある。

 

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吉田 たすく(大正11年(1922年)4月9日 - 昭和62年(1987年)7月3日)は日本の染織家・絣紬研究家。廃れていた「組織織(そしきおり)」「風通織(ふうつうおり)」を研究・試織を繰り返し復元した。風通織に新しい工夫を取り入れ「たすく織 綾綴織(あやつづれおり)を考案。難しい織りを初心者でも分かりやすい『紬と絣の技法入門』として刊行する。東京 西武百貨店、銀座の画廊、大阪阪急百貨店などで30数回にわたって個展を開く。代表的作品は倉吉博物館に展示されているタピストゥリー「春夏秋冬」で、新匠工芸会展受賞作品。昭和32年(1957年)・第37回新匠工芸会展で着物「水面秋色」を発表し稲垣賞を受賞。新匠工芸会会員。鳥取県伝統工芸士

 尚 吉田たすく手織工房は三男で鳥取県染織無形文化財・鳥取県伝統工芸士の吉田公之介が後を継いでいます。

 

吉田たすくの詳細や代表作品は下記ウイキペディアへどうぞ。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/吉田たすく

 

 

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  もう40年も昔のことですが、新聞に掲載された父のこの切り抜きの紙コピーを兄から送ってもらっていて、本棚に仕舞っていたものです。

 数年前にふと思い出して、パソコンに文字変換して残そうと思い立ちましたが、中々出来ず、ようやく取り掛かりました。

 新聞のコピーで薄かったりしてやや読み辛い所もあり、また、専門用語や方言などもあり、一般の方にはあまりなじみのない言葉もすこしありますので、修正と補足説明を加えながら空いた時間を見つけて少しづつこの100話を読み進めていきたいと思います。

            (2021/09/24 周之介)

染と織の万葉慕情 全100話の序

『染と織の万葉慕情』は、私の父で、手織手染めの染織家、吉田たすくが60歳の1982年(昭和57年)4月16日から 1984年(昭和59年)3月30日まで毎週金曜日に100話にわたって地方新聞に連載したものです。

 

 

 日本最古の和歌集である万葉集について、植物の歌をまとめたものや写真集はたくさん出版されていて、植物を詠ったものは千数百万あります。ところがそれに劣らぬだけ、「染」と「織」の歌が詠まれているのに、これを取り上げる人は少なくて「染」についてだけは上村 六郎(うえむら ろくろう)氏の「万葉の染色」だけで、「織」についてのまとめたものはまだ無いことを知った吉田たすくは、織物の工人としてこれらを調べ、挿絵も自分で描き、新聞に連載いたしました。

 

 もう40年も昔のことですが、新聞に掲載された父のこの切り抜きの紙コピーを兄から送ってもらっていて、本棚に仕舞っていたものです。

 数年前にふと思い出して、パソコンに文字変換して残そうと思い立ちましたが、中々出来ず、ようやく取り掛かりました。

 新聞のコピーで薄かったりしてやや読み辛い所もあり、また、専門用語や方言などもあり、一般の方にはあまりなじみのない言葉もすこしありますので、修正と補足説明を加えながら空いた時間を見つけて少しづつこの100話を読み進めていきたいと思います。

            (2021/09/24 周之介)

 

次回からは、染や織に秘められた万葉慕情の展開です。

 

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吉田 たすく(大正11年(1922年)4月9日 - 昭和62年(1987年)7月3日)は日本の染織家・絣紬研究家。廃れていた「組織織(そしきおり)」「風通織(ふうつうおり)」を研究・試織を繰り返し復元した。風通織に新しい工夫を取り入れ「たすく織 綾綴織(あやつづれおり)を考案。難しい織りを初心者でも分かりやすい『紬と絣の技法入門』として刊行する。東京、大阪で二十数回にわたって個展を開く。代表的作品は倉吉博物館に展示されているタピストゥリー「春夏秋冬」で、新匠工芸会展受賞作品。昭和32年(1957年)・第37回新匠工芸会展で着物「水面秋色」を発表し稲垣賞を受賞。新匠工芸会会員。鳥取県伝統工芸士

 

吉田たすくの詳細や代表作品は下記ウイキペディアへどうぞ。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/吉田たすく

 

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「万葉集」は奈良時代末期759年から130年間にかかれた日本に現存する最古の和歌集である。全20巻4,500首以上の和歌が収められており、天皇、貴族から、下級官人、防人(さきもりのうた)、大道芸人、農民、東国民謡(東歌)など、さまざまな身分の人々が詠んだ歌が収められており、作者不詳も2,100首以上ある。

「雑歌(ぞうか)」宴や旅行での歌、

「相聞歌(そうもんか)」男女の恋の歌、

「挽歌(ばんか)」人の死に関する歌

の3つのジャンルに分けられている。

夏を装う


 フロックス

 行李柳

 グラジオラス

 向日葵

 シャガ


  


風の声

 水の揺らぎに

   花しずか