ピアノ弾き的「蜜蜂と遠雷」の愉しみ方。
本日は、
4人のコンテスタントの「人」を読む。
です。
ネタバレではなく、
あくまで、わたし個人が冒頭に書かれた4人のプログラムから、
4人立ち位置や性格を読む、
というものです。
でも、そういうのもネタバレっぽくていや、と言う方は、
スルーして、本編にすぐさま進んで下さいね
この小説では、本編に入る前に、
4人のコンテスタントの一次から本選までの、
全てのプログラムがそれぞれ記されています。
コンテスタントはもっといるはずなのに、
プログラムが掲載されているのは、この4人。
ということは、この4人が主要人物なわけですよね。
そして、大抵の場合、主役と言うのは、
最初か最後に置かれる。
となると。
まず主役は、
1番目に書かれている「風間塵」か
最後の「高島明石」になるはず。
で、その2人のプログラムを見て見ると……。
あ。
これは、風間塵君ですね。
個性度がまったく違います。
特に、三次のプログラムに、それが顕著だと思います。
フランスの作曲家エリック・サティをコンクールに仕込んでくる、というだけで、
彼の特異性が際立ちます。
それに加えて、
サンサーンス/風間塵「アフリカ幻想曲Op89」
これって、自分で編曲しているってこと
規格外の才能を打ち出している。
と、読めるわけですね。
それに、ピアノを弾くスピード感が、かなりある、と思われます。
三次のプロは、かなりのテンポ感で弾ききらないと、
制限時間の60分には入りきらないかと……。
ラヴェルの鏡だけで、最低25分。
ドビュッシーの版画だけで、10分はかかります。
サティで5分……。
パンパンだなあ……。
これだけの盛りだくさん&規格外を打ち出すのですから、
まずは、彼が主役でしょう
最後の高島明石くんは、
良くも悪くも、オーソドックスな組み合わせですしね。
他の2人は、というと。
栄伝亜夜さんは、一目瞭然のヒロイン。
4人中の紅一点。
そして、プログラムから読むには、
主役の風間塵くんと、
(きっとこれもそうとうなハンサムか、目立つ容姿であろう)、
名前からして、王子様役のような、
マサル・カルロス・レヴィ・アナトオールくんの両方に、
少なくとも絡んでくるはず……。
一次のメフィスト・ワルツが「マサル君と被っている」、
三次の「春と修羅」が「風間塵くんと2人、プログラムの真ん中に入れている」。
ことから、なんとなく、そんな気がするわけです。
この、「春と修羅」という曲は知らなかったので調べましたら、
宮沢賢治の詩のようですね。
混声合唱では曲がありますが、ピアノ曲には既成のものがなさげ。
ということは、この詩と混声合唱を下敷きにしたか、あるいはオマージュ的捧げた、
コンクール用の新曲でしょう。
その新曲を、プログラムの真ん中に持ってくるとは、
なかなか良い度胸です。
その度胸の良さというか、そんな「読めない」ところが、
この2人の共通項なのかも。
このプログラムから読めるのは、こんな感じでしょうか。
突っ込んで、人間関係に行くと、
風間塵くんと栄伝亜夜さんが、ライバルながら、
天才同士の何か同種みたいなものから、どうしようもなく惹かれあう。
華やかマサルくんが、それにどう絡むのか……。
王子様と「異質」は、ヒロインをめぐって何かが起こるのか。
高島くんは、このプロの組み方から、ちょっとだけ年上感があるけれど、
彼は、入賞出来るのか……。
出来るとしたら、「俺様マサル君」がなんらかの破綻をきたしての、
三位入賞あたりか……。
そんな感じでしょうか
まあ、これが合っているかどうかは、まったくの未知数です
でも、プログラムだけで、ここまで想像して遊べるって……。
この本、とってもお得ですね
想像が当たっても、当たってなくても、
どちらでも、どうでも良いことです
さて。
本編、本編
最後に、エリック・サティの「おまえが欲しい(ジュ・トゥ・ヴ)」をどうぞ