前回はテイエムオペラオーがグレード制移行で

初めて【秋天】のタイトルを所持して

有馬記念を勝った…というところまで書きました。

 

今回はその続きとなります。

 

第45回 テイエムオペラオー (牡4) (皐月賞馬)春天・宝塚・秋天JC馬

<馬齢表記変更>

第46回 マンハッタンカフェ (牡3) 菊花賞馬

第47回 シンボリクリスエス (牡3) 秋天馬
第48回 シンボリクリスエス (牡4) 秋天馬
第49回 ゼンノロブロイ (牡4) 秋天JC馬
第50回 ハーツクライ (牡4)
第51回 ディープインパクト (牡4) (三冠馬)春天・宝塚・JC馬/凱旋門(失)

 

グレード制導入後、あれだけ勝てなかった秋天馬が

3年連続で勝利するなど、明らかに風向きが変わります。

 

一方で【春天馬】には逆風が吹き始めます。

 

テイエムオペラオーは史上初めて

同年春秋・天皇賞連覇歴

を有馬記念の1着席に持ち込んだ馬ですが、

これ以降【春天馬】のタイトルを有馬に持ち込めたのは、

ディープインパクトとキタサンブラックのみです。

 

2頭はともに有馬前の段階で【6冠馬】であり、

ディープインパクト=菊花賞→春天/(京)宝塚/JC

キタサンブラック=(菊花賞)→大阪杯/春天/秋天

 

当年でGⅠを3勝していました。

 

4歳時のキタサンブラック=菊花賞→春天/JC

同じくタイトルホルダー=(阪)菊花賞→(阪)春天/宝塚

 

JCを勝っていても、宝塚を勝っていてもNGなのは

当年でGⅠ2勝止まりだったからではないでしょうか。

 

ならば次の春天馬に対するゲームチェンジャーは

テイエムオペラオーの【秋古馬三冠】に対して、

 

春古馬三冠】=大阪杯/春天/宝塚

 

この馬を待っているように思われます。

 

話を戻しまして、この時期のダービー馬はというと…


2000 アグネスフライト(菊⑤)
<馬齢表記変更>     
2001 ジャングルポケット(菊④) JC1着 4歳/7着
2002 タニノギムレット
2003 ネオユニヴァース(菊③)
2004 キングカメハメハ
2005 ディープインパクト(菊①) JC1着 3歳/2着 4歳/1着
2006 メイショウサムソン(菊④) 3歳/5着 4歳/8着 5歳/8着
 

シンボリルドルフ以降、ダービー馬に要求されていたのは…

・【菊花賞】連対歴

・【ジャパンC】1着歴

のいずれかでした。

 

01年のジャングルポケットは要件を満たしていましたが、

4歳時(02年)に出走した有馬記念では7着と敗れています。

 

ダービー馬として初めて3歳でジャパンCを勝ったわけですが、

これが【ルドルフ超え】に抵触した可能性が考えられます。

(ルドルフの3歳時ジャパンCは3着)

 

また、春秋天皇賞を連覇した2冠馬=メイショウサムソンも

【菊花賞未連対】【ジャパンC敗退のみ】

という戦歴では、1着席には厳しいという印象です。

 

というわけでダービー馬の有馬記念制覇は、

ナリタブライアン→ディープインパクトと

3冠馬から3冠馬まで待つ必要があったわけですが、

だからと言って【ダービー】が有馬記念で

軽視されていたわけではありません。

 

第46回 マンハッタンカフェ (牡3) 菊花賞馬

第47回 シンボリクリスエス (牡3) ダービー2着馬
第48回 シンボリクリスエス (牡4) ダービー2着馬
第49回 ゼンノロブロイ (牡4) ダービー2着馬
第50回 ハーツクライ (牡4)  ダービー2着馬
第51回 ディープインパクト (牡4) 菊花賞馬

 

菊花賞馬から菊花賞馬までの4年間を

すべて【ダービー2着馬】が優勝しています。

 

そしてディープインパクトによって仕切られた翌年から

日本は念願の【パートⅠ国】入りを果たします。

 

しかしその代償として国際レース化出来なかった【GⅠ】を

【JpnⅠ】と改称する必要性が生じてしまいました。

 

既に国際レースであった安田記念(95年~)やジャパンC(81年~)、

宝塚記念(97年~)やエリザベス女王杯(99年~)などの他に

天皇賞を始めとする古馬GⅠは07年から、

すべて国際レース化されたのですが、

2歳・3歳GⅠは国際化まで3年の期間が必要でした。


第52回(07年) マツリダゴッホ (牡4)
第53回(08年) ダイワスカーレット (牝4) (桜花賞)(秋華賞)(エリザベス)
第54回(09年) ドリームジャーニー (牡5) (朝日杯馬)宝塚記念馬

第55回(10年) ヴィクトワールピサ (牡3) 皐月賞馬/凱旋門賞⑦

 

2・3歳GⅠが国際レース化される2010年までの結果です。

 

07~09年の3年間はJpnⅠ競争は、

パートⅠ国入りする(07年)以前から国際GⅠだった

【エリザベス女王杯】【宝塚記念】から1着馬を選出し、

2010年に満を持して国際GⅠ(皐月賞)馬を1着馬に据えました。

 

ヴィクトワールピサの重要な点は、

国際GⅠ化元年となる【皐月賞】歴よりも

【当年凱旋門賞7着歴】にあると考えます。

 

ディープインパクトがすでに【当年凱旋門賞出走歴】を

有馬記念に持ち込んでいますが残念ながら彼は、

【3着入線・失格】と【最終着順】を得られませんでした。

 

【当年・海外GⅠ着順獲得歴】を初めて持ち込んだ点こそ、

【パートⅠ国】宣言と考えられないでしょうか。

 

そして同時にこの4年間で特筆すべきは…

 

第52回2着 ダイワスカーレット(牝3) 桜(JpnⅠ)・秋華(JpnⅠ)・エリザベス(GⅠ)

第53回2着 アドマイヤモナーク(牡7) 1着(ダスカ・牝4)同枠

第54回2着 ブエナビスタ(牝3) 桜(JpnⅠ)・樫(JpnⅠ)

第55回2着 ブエナビスタ(牝4) 桜(JpnⅠ)・樫(JpnⅠ)/秋天馬

 

2着枠をすべて【JpnⅠ】1着歴を持つ【牝馬】の枠で統一したこと。

 

グレード制以降は94年=(外)ヒシアマゾン(牝3)の2着以外、

連対席を拒絶され続けていた牝馬ですが、

【パートⅠ国】入りして以降、4年連続で連対させてもらった上、

トウメイ以来37年ぶりの1着席も許可されました。

 

【パートⅠ国】宣言=グローバル化・男女平等化を

この点でもアピールしている印象です。

 

因みにダービー馬の方は…

 

2007 ウオッカ (牝3)  3歳/11着
2008 ディープスカイ
2009 ロジユニヴァース
2010 エイシンフラッシュ 3歳/7着 4歳/2着 5歳/4着

 

64年振りの牝馬ダービー馬となったウオッカが

ここでも【パートⅠ国入り】をアピールしています。

 

しかし一方で有馬記念はファン投票1位で出走するも、

【JpnⅠダービー馬】の肩書はNG扱いとなりました。

 

因みに【3歳ダービー馬のファン投票1位】は

基本的にルドルフ超えに抵触すると考えられます。

 

免除されたのは94年ナリタブライアン(4冠馬)のみで、

ディープインパクトも2着に敗退させられました。

そして初の【国際GⅠダービー馬】エイシンフラッシュも、

【ジャパンC8着】を経て有馬記念に挑みましたが、

結果は7着と振るいませんでした。


というのもエイシンフラッシュの2歳時は

まだ【Jpn】競争が残っている不完全な時代であり、

翌年、完成した国際グレード制を走ってきた

【真の国際GⅠダービー馬】が待ち構えているからです。

 

最後のゲームチェンジャー=オルフェーヴルの登場です。

第56回 オルフェーヴル (牡3) (三冠馬)
第57回 ゴールドシップ (牡3) 菊花賞馬
第58回 オルフェーヴル (牡5) (三冠馬)(有馬)(宝塚)/凱旋門賞②

 

オルフェーヴルはシンボリルドルフ以来

【有馬記念を2勝したダービー馬】となりますが、

3歳時、5歳時ともに非常に重要な決着となっています。

 

まず3歳時(11年)を見てみますと…

 

1着 オルフェーヴル(牡3) ダービー馬

2着 エイシンフラッシュ(牡4) ダービー馬

 

有馬史上初めての【ダービー馬同士決着】となりました。

これはシンボリルドルフの決着へのリスペクトとも考えられます。

 

1着 シンボリルドルフ(牡3) ダービー馬

2着 カツラギエース(牡4) ジャパンC馬(東京2400m)

 

非常に美しい対称構造になっていると思います。

 

そして次に5歳時(13年)ですが…

 

1着 オルフェーヴル(牡5) ダービー1着/菊花賞1着

2着 ウインバリアシオン(牡5) ダービー2着/菊花賞2着

 

決着構造としては【ダービー再現決着】でもあり、

【菊花賞再現決着】でもあります。

 

かつてはトウショウボーイ→テンポイントによる

【皐月賞再現決着】もありましたが…

 

00年1着 テイエムオペラオー(牡4) 宝塚1着/秋天1着/JC1着

00年2着 (外)メイショウドトウ(牡4) 宝塚2着/秋天2着/JC2着

 

個人的にはこちらの決着へのリスペクトだと感じています。

 

3歳時=シンボリルドルフ(3歳時)の再現

5歳時=テイエムオペラオー(旧5歳)の再現

 

オルフェーヴルは有馬記念における先輩ゲームチェンジャー

2頭を1頭で再現して見せたとは考えられないでしょうか。

 

それ以上に重要なのがオルフェーヴルの戦歴の方で

5歳時にオルフェーヴルが持ち込んだ…

 

・4歳時/(阪神)宝塚記念1着歴

 

これが非常に大切だと考えています。

 

阪神GⅠを勝ったダービー馬はグレード制以前でしたら…

宝塚を勝ったシンザン・サクラショウリ、

阪神3歳Sを勝ったコダマ・タニノムーティエなどが居ますが、

グレード制以降のダービー馬には存在しませんでした。

 

ディープインパクトの宝塚記念は【京都開催】です。

 

そしてオルフェーヴルが、

【ダービー馬】として初めて【阪神GⅠ】を

有馬記念に持ち込んだ翌年=2014年に

 

・朝日杯FS→【阪神】移設

 

となりました。

 

阪神3歳Sが牝馬限定戦となった91年以降、

牡馬は古馬になるまで【阪神GⅠ】を

所持することが出来ませんでしたが、

14年以降はクラシック期に所持することが可能となりました。

 

…その結実こそが…

 

<有馬記念・58k化>
第68回 ドウデュース (牡4) 阪神/朝日杯馬+ダービー馬

 

だったのではないでしょうか。

 

ダービー馬として初めて海外GⅠを勝利したシャフリヤール…

菊花賞連対で資格を得ていた当年ダービー馬=タスティエーラ…

どちらでもなく、ドウデュースが1着席に就いた最大の理由は

 

【阪神・朝日杯FS1着歴】

 

という一時期持ち込むことが決して叶わなかった

牡馬による世代限定阪神GⅠ1着歴

にあったのではないか、と考えるに至りました。

 

もちろんドウデュースが3歳時に【凱旋門賞19着

という戦歴を刻んでいる点も重要だと思います。

 

良かったら、ぜひ皆さんのご意見もお聞かせ頂けると有難いです。

 

 

…最後にオルフェーヴル以降の有馬記念と

ダービー馬の概略をみて終わりたいと思います。

 

第59回 ジェンティルドンナ (牝5) (牝馬三冠)(JC)ドバイシーマ
第60回 ゴールドアクター (牡4)
第61回 サトノダイヤモンド (牡3) ダービー②/菊花賞
第62回 キタサンブラック (牡5) (菊花賞)(JC)大阪杯・春天秋天馬
第63回 ブラストワンピース (牡3)
第64回 リスグラシュー (牝5) (エリザベス)宝塚記念/コックスプレート
第65回 クロノジェネシス (牝4) (秋華賞)宝塚記念
第66回 エフフォーリア (牡3) (皐月賞)ダービー②/秋天
第67回 イクイノックス (牡3) ダービー②/秋天

第68回 ドウデュース (牡4) (阪・朝日杯)(ダービー)(凱旋門賞⑲)

 

こうしてみますと、ほぼ【天皇賞馬】しか

勝っていなかったスピードシンボリ以前の有馬記念と比べると

実に多様なルートから1着馬が生まれています。

 

スピードシンボリやヴィクトワールピサが解放した【海外歴】

シンボリルドルフが開拓した【JC1着歴】

(外)シンボリクリスエスによる【ダービー2着歴】

ダイワスカーレットにより開かれた【牝馬1着歴】

そしてオルフェーヴルによる【阪神GⅠ歴】…

 

68回の歴史の中で改革や解放を繰り返してきた結果ですね。

 

そしてダービー馬の方も見てみますと…
 

2010 エイシンフラッシュ 3歳/7着 4歳/2着 ドバイ⑥ 秋天馬 5歳/4着

2011 オルフェーヴル(菊①) 3歳/1着 凱旋門賞②(×2) 5歳/1着
2012 ディープブリランテ キングジョージ⑧
2013 キズナ 凱旋門賞④

2014 ワンアンドオンリー(菊⑨)(ドバイ③)3歳/13着 4歳/9着
2015 ドゥラメンテ (二冠馬)(ドバイ②)
2016 マカヒキ (凱旋門⑭)5歳/10着
2017 レイデオロ (ホープフル)ドバイ④秋天馬 4歳/2着 5歳/7着
2018 ワグネリアン 
2019 ロジャーバローズ
2020 コントレイル(菊①) (ホープフル)(三冠馬)JC馬
2021 シャフリヤール 5歳/5着 ドバイC① BCターフ③
2022 ドウデュース 4歳/1着 (朝日杯)(凱旋門⑲)

<有馬記念・58k化>
2023 タスティエーラ(菊②) 3歳/6着

 

【国際GⅠ】となった2010年以降の戦歴です。

 

 

【パートⅡ】時代のダービー馬は

【ジャパンC】が最大目標だったかも知れませんが、

【パートⅠ】時代のダービー馬に求められているのは

【海外GⅠ歴】だとわかります。

 

昨年シャフリヤールがドバイシーマCを1着したのは

JRAの悲願のひとつが達成されたのだと思われます。

 

一方で有馬記念には【海外GⅠ歴】を持ち込むだけでは

連対席にはほど遠いという状況です。

 

皐月賞以前に【中山2000mOP上1着歴】を所持していた

・エイシンフラッシュ(京成杯)

・レイデオロ(ホープフルS/当時GⅡ)

は、3歳時に菊花賞ではなく【ジャパンC】を選択することで

4歳時の有馬記念で2着席に就くことが出来ました。

 

この戦歴は地味に重要で、

・ダイナガリバー=ひいらぎ賞(当時OP/中山2000m)

 

ここから【ダービーしか勝っていない】ダービー馬が

有馬記念で連対するために必要だと考えている戦歴です。

(ただし【弥生賞】はNGです)

 

一方で【ホープフルS】【菊花賞】【ジャパンC】と

ダービー馬として有馬記念を勝つために、

持てる限りの戦歴を所持したコントレイルが、

出走することも叶わなかった…という点からも

 

・オルフェーヴル=(阪神)宝塚記念

・ドウデュース=(阪神)朝日杯FS


という【阪神GⅠ歴】が今のフェーズでは大切だと言えます。

 

…以上、有馬記念・全68回の歴史と並行するダービー馬の戦歴

という長い長い記事にお付き合い頂きまして有難うございました。

 

この記事が今年の有馬記念の考察時、

私自身に…そして皆様に…

少しでもお役に立てることを願っております。