前回、有馬記念に於けるシンボリルドルフ以前と以降の

ダービー馬の勝利状況が大きく異なっている…

という話を描かせて頂きました。

 

では実際の有馬記念ではどんな馬が

優勝したのかを見てみましょう。

 

第1回 メイジヒカリ (牡4) (菊花賞馬)/春天馬

第2回  ハクチカラ (牡4) (ダービー馬)/秋天馬
第3回 オンワードゼア (牡4) 春天馬
第4回 ガーネツト (牝4) 秋天馬
第5回 スターロツチ (牝3) オークス馬
第6回 ホマレボシ (牡4) 
第7回 オンスロート (牡5) 春天馬
第8回 リユウフオーレル (牡4) 秋天馬
第9回 ヤマトキヨウダイ (牡4) 秋天馬
第10回 シンザン (牡4) (三冠馬) 秋天馬
第11回 コレヒデ (牡4) 秋天馬
第12回 カブトシロー (牡5) 秋天馬
第13回 リュウズキ (牡4) (皐月賞馬)

 

13回中、「八大競争」未勝利の馬はホマレボシのみ。

ただ彼も「安田賞=安田記念」を勝っています。

 

そして実に9頭が当年の天皇賞馬です。

前回も書いたように「天皇賞馬」の受け皿として創設された

意図通りの結果となっていると言えます。

 

そんな中、流れを変える馬が登場します。

それが第14・15回を連覇するスピードシンボリです。


第14回 スピードシンボリ (牡6) (春天馬)/[外]キングジョージ⑤
第15回 スピードシンボリ (牡7) (春天馬)

 

スピードシンボリは4歳時に既に春天を勝利していますが、

それ以上に海外重賞出走歴が重視されたと考えられます。

 

4歳=ワシントンDC国際(米国) 5着

6歳=キングジョージ(英国) 5着

 

当時勝ち抜け制だった天皇賞を勝ったあと、

次の目標を見出しづらかった時代にあって、

有馬記念以外に海外重賞へと道しるべを作った…

そこを評価されて【初の有馬記念連覇馬】と

なったのではないでしょうか。

 

そしてスピードシンボリ以降、

有馬記念の勝ち馬も風向きが変わってきます。


第16回 トウメイ (牝5) 秋天馬
第17回 イシノヒカル (牡3) 菊花賞馬
第18回 ストロングエイト (牡4)
第19回 タニノチカラ  (牡5) (秋天馬)
第20回 イシノアラシ (牡3)
第21回 トウショウボーイ (牡3) 皐月賞馬
第22回 テンポイント (牡4) 春天馬
第23回 カネミノブ (牡4)
第24回 グリーングラス (牡6) (菊花賞馬)(春天馬)

第25回 ホウヨウボーイ (牡5)

第26回 アンバーシャダイ (牡4)

第27回 ヒカリデュール (牡5)

第28回 リードホーユー (牡3)

 

あれだけ勝っていた【当年天皇賞馬】が

トウメイとテンポイントしか勝てていません。

 

一方でスピードシンボリ以前はスターロッチしか

勝てていなかった【3歳馬】の勝利が増えてきました。

 

更にホウヨウボーイ・アンバーシャダイのように

【有馬記念1着後に天皇賞を勝つ】

というパターンの馬も登場してきました。

 

しかしその一方で【ダービー馬】は

全く勝たせてもらえていません。

 

70年以前も出走はしているものの、

有馬記念を勝利したのはハクチカラとシンザンのみ。

 

当時のダービー馬の有馬記念への出走状況は…

 

1971 ヒカルイマイ
1972 ロングエース  3歳/8着
1973 タケホープ  4歳/3着(1人気) 春天馬
1974 コーネルランサー
1975 カブラヤオー
1976 クライムカイザー
1977 ラッキールーラ
1978 サクラショウリ 3歳/5着 4歳/6着(1人気) 宝塚記念馬
1979 カツラノハイセイコ 4歳/2着
1980 オペックホース  3歳/10着 4歳/4着 5歳/9着
1981 カツトップエース
1982 バンブーアトラス
1983 ミスターシービー 4歳/3着 秋天馬
 

春天を勝ち、有馬でも1番人気推されたタケホープ…

宝塚を制し、同じく1番人気に推されたサクラショウリ…

シンザン以来の三冠馬で秋天も勝利したミスターシービー…

 

どの馬も有馬を勝利しても不思議ない戦歴だと思いますが、

結果としては勝たせてもらえませんでした。

 

シンザン以降は【グレードⅠ・ダービー】の格付けを得た

ダービー馬にしか勝たせたくない、という強い意志を感じます。

 

【格付けなし・三冠馬】=ミスターシービーは、

【グレードⅠ・有馬記念】において、

【グレードⅠ・三冠馬】=シンボリルドルフに打倒された訳ですが、

同時に【グレードⅠ・秋天馬】でもあるシービーの影響か、

ここ(84年)から【秋天馬】不遇の時代がやってきます。


第29回 シンボリルドルフ (牡3) 三冠馬
第30回 シンボリルドルフ (牡4) (三冠馬)春天馬/JC馬
第31回 ダイナガリバー (牡3) ダービー馬
第32回 メジロデュレン (牡4) (菊花賞馬)
第33回 オグリキャップ (牡3)
第34回 イナリワン (牡5) 春天馬/宝塚記念馬
第35回 オグリキャップ (牡5) (有馬記念馬)/安田記念馬
第36回 ダイユウサク (牡6) 
第37回 メジロパーマー (牡5) 宝塚記念馬
第38回 トウカイテイオー (牡5) (二冠馬)(JC馬)
第39回 ナリタブライアン (牡3) (朝日杯馬)(三冠馬)
第40回 マヤノトップガン (牡3) 菊花賞馬
第41回 サクラローレル (牡5) 春天馬
第42回 シルクジャスティス (牡3) 
第43回 グラスワンダー (牡3) (朝日杯馬)
第44回 グラスワンダー (牡4) 有馬記念馬/宝塚記念馬

 

創設以来、あんなに有馬記念を勝っていた

【秋天馬】が【グレード制導入】以降は

一度も勝たせてもらえなくなってしまいました。

 

旧八大競争の中で、唯一勝たせてもらえない…

かつてのダービー馬のような扱いに変化しました。

 

代わりに勝たせてもらえるようになったのが

【ダービー馬】そして【ジャパンC馬】です。

 

1981年(=第26回)の年から創設されたジャパンCが、

【秋天】から【東京競馬場・古馬最高位レース】の座を譲り受けた…

そう考えるのが妥当ではないでしょうか。

 

1984年からは【秋天】も2000mに距離短縮したことにより、

東京競馬場の【最長距離GⅠ】は…

【ダービー】【オークス】【ジャパンC】の3レースに変化しました。

 

それを強調するように、4歳時のシンボリルドルフは

【秋天】を負けて【ジャパンC】を勝利し、

有馬記念を【連覇】したのだと思います。

 

そしてそれと同時に【ジャパンC】と【同場・同距離】である

【ダービー馬】も満を持して有馬記念で表舞台に立てるようになりました。

 

1984 シンボリルドルフ(菊①) 3歳/1着 4歳/1着 有馬記念馬・春天馬JC馬
1985 シリウスシンボリ
1986 ダイナガリバー(菊②) 3歳/1着 4歳/14着
1987 メリーナイス(菊⑨)
1988 サクラチヨノオー
1989 ウィナーズサークル(菊⑩)
1990 アイネスフウジン
1991 トウカイテイオー 4歳/11着 5歳/1着 JC馬
1992 ミホノブルボン(菊②)
1993 ウイニングチケット(菊③) 3歳/11着
1994 ナリタブライアン(菊①) 3歳/1着 4歳/4着
1995 タヤスツヨシ(菊⑥)
1996 フサイチコンコルド(菊③)
1997 サニーブライアン
1998 スペシャルウィーク(菊②) 4歳/2着 春天馬秋天馬JC馬
1999 アドマイヤベガ(菊⑥)
 

まず【菊花賞連対歴】を持つダービー馬は

有馬記念での連対を許されています。

例外は有馬に出走しなかったミホノブルボンのみです。

 

一方で菊花賞に出走しなかったトウカイテイオーは、

前述のように【秋天】に代わってプライオリティを持たされた

【ジャパンC】を勝ってきています。

 

見ての通り、上記どちらかの戦歴が欠けたダービー馬は

古馬になっても連対は許されていません。

 

そしてその両方を持つスペシャルウィークは…

これまでの流れを読んで下さっていれば想像つくと思いますが、

どうみても【秋天1着歴】が余計だったと思われます。

 

これで有馬記念を勝ってしまうのは、

いわゆる【ルドルフ超え】に抵触しますしね。

 

しかし…その翌年にルドルフ以来のゲームチェンジャーが現れます。

 

それが【世紀末覇王】テイエムオペラオーです。


第45回 テイエムオペラオー (牡4) (皐月賞馬)春天・宝塚・秋天JC馬

 

第16回トウメイ以来29年ぶり…

【GⅠ・2000m戦化】してからは初めて

【秋天馬】が有馬記念1着席に就かせてもらえました。

 

そしてここから有馬記念1着馬が要求する戦歴に変化が現れるのですが、

長くなりましたので別記事にさせてください。