「商品の周りを回る」と書けば、カメラへの指示に見えます。しかし、商品そのものを回転させる要求として受け取られる可能性もあります。
AI動画では、この違いが重要です。被写体が大きく見えるようになっても、カメラが近づいたのか、ズームしたのか、固定されたカメラへ被写体が近づいたのかは分かりません。画面に動きがあっても、意図したショットになっているとは限らないのです。
H3 Camera Motion LoRAは、テキストから動画を作るH3に、カメラの動きを重視したアダプターを組み合わせるものです。それでも、カメラの動作と被写体の動作は、分けて伝える必要があります。
以下はプロンプトの改善案であり、生成結果を実測したものではありません。曖昧な説明を出発点にして、カメラの役割を具体的にしていきます。
最初に「動かさないもの」を決める
物を撮る場面なら、動かすものより先に、固定するものを書いてみます。スピーカーは棚に置いたまま、見る位置だけを変える。自転車は走り続け、並走するカメラとの距離を保つ。こうすると、それぞれの役割を分けられます。
次に、最初と最後の構図を考えます。「もっとドラマチックに」は雰囲気の希望です。一方、「最後はスピーカーのグリルがよく見える距離まで近づく」なら、映像で確認できる目標になります。
以下の四つの改善例は、この考え方に沿っています。
改善例1:「商品をズームする」を、カメラが近づく指示にする
曖昧な例:「スピーカーをズーム。映画のような商品動画。」
欲しいのがカメラの移動なら、その点を明確にします。
小型の青いワイヤレススピーカーが、ウォールナット材の棚に置かれている。最初は、スピーカーと隣の二冊の本が余裕をもって画面に収まる構図にする。カメラを穏やかに前進させ、最後は布製グリルが画面の大部分を占めるようにする。スピーカーと本は固定したまま、カットを挟まず、遠近関係が徐々に変化する映像にする。
これは**プッシュイン(寄り)**です。細部へ注意を向けるために使います。
ズームは、必ずしもカメラを動かさずに画角を変える操作です。プッシュインでは、カメラの位置そのものが変わります。生成映像では二つが混同される場合があるので、スピーカーが大きくなったかだけでなく、本とスピーカーの見え方や位置関係がどう変化したかも確認します。
改善例2:後退した先で、何を見せるかを書く
曖昧な例:「テントから離れる。」
どこまで離れ、広がった画面で何を伝えたいのでしょうか。
夜明けの草地のキャンプサイトに、小さなオレンジ色のテントが立っている。開いた入口の近くから始める。カメラをゆっくり後退させ、テント全体、周囲の松の木々、その先の湖を少しずつ見せる。テントは同じ場所に固定し、途中で切り替わらない一続きのショットにする。
この**プルバック(引き)**には、小さな住まいを、より広い風景の一部として見せる役割があります。
画面が広がっても、同じ場所が続いているように感じられるかを確認してください。新しく現れる要素が多すぎるなら、山並みまで欲張らず、テントと近くの木を見せる程度に絞ってみます。
改善例3:物体を回さず、視点を回り込ませる
曖昧な例:「赤いバックパックの周りを回る。」
動くのがどちらなのかを、はっきりさせます。
赤い登山用バックパックが、低い石の台に直立している。最初は正面を見せる。動かないバックパックの周囲を、カメラが左方向へ短い弧を描いて移動し、最後は左側面が見える構図にする。背後の木製フェンスは、視点の移動に合わせて遠近関係が変わる。カメラの高さは一定に保ち、バックパックは完全に静止させる。
**オービット(回り込み)**は、被写体の周囲へ視点を移動させ、別の面を見せるカメラワークです。
フェンスのような背景があると、バックパックとの見え方の変化から、カメラが動いたかを判断しやすくなります。ただし、それだけで物理的に正確な空間が再現されていると証明できるわけではありません。
最初は短い弧にとどめ、いきなり一周を要求しないほうが確認しやすくなります。大きく回り込むほど、モデルが新たに作る必要のある、まだ見えていない部分も増えます。
改善例4:追いかける位置と速度を指定する
曖昧な例:「自転車に乗る人を追う。」
このままでは、カメラがどちら側にいて、どのくらいの速さで動くのかが分かりません。
マスタード色のジャケットを着た人物が、まっすぐな運河沿いの道を自転車でゆっくり進んでいる。カメラは自転車と平行に、同じ速度で移動し、真横から少し広めの中景で捉える。人物の画面内での大きさをほぼ一定に保ち、背景では手すりと水面が流れていく。動きを滑らかにし、ショットを途切れさせない。
**トラッキングショット(追従撮影)**は、周囲の景色が移り変わる中でも、動く被写体を見やすく保つために使います。
人物が毎フレーム、厳密に中央にいる必要はありません。見るべきなのは、被写体を見失ったり、不意に視点を変えたりせず、カメラと動作の関係が一貫しているかどうかです。
強度を調整する前に、改善例を一つ試す
Max H3のCamera Motion LoRAツールは、標準のMiniMax H3をテキスト入力で使います。トリガーワードの camera motion は自動で追加されます。この専用ツールでは、商品写真を開始画像として入力することはできません。
プロンプトを一つ選び、LoRA Scaleは初期値の0.8を保ったまま、まずは5秒程度の短い動画で試します。用途に合わせたアスペクト比を選び、実行前に表示される生成料金を確認してください。
四つの例を組み合わせる必要はありません。それぞれに被写体と目的がある、独立した練習です。
別の設定を触る前に、何が違ったのかを見極める
オービットを頼んだのに物体だけが回転したなら、被写体とカメラの役割がまだ曖昧です。物体が固定されていることをもう一度伝え、回り込む範囲も小さくしてみます。
カメラがほとんど動かない場合は、副次的な動作を減らし、最後の構図を分かりやすくします。動きを増やし、物を増やし、さらに新しい出来事まで加えると、何が原因だったのかを判断しにくくなります。
顔や物体が変形する場合は、カメラの移動を控えめにし、場面を簡単にしてみます。強度を上げていたなら、初期値へ戻すのも一つの試し方です。
Scaleが変えるのは、アダプターの影響の強さです。移動距離、角度、速度を直接指定する値ではありません。数値を上げることと、カメラを遠くへ動かすことは別です。
プロンプトを修正するときは、ほかの設定をできるだけ揃えます。生成にはランダムな変動もあるため、一度改善した結果は参考になる観察であって、すべての場面に通用する法則の証明ではありません。
一枚の絵ではなく、ショット全体を確認する
最初、途中、最後の画面を見比べます。同じ被写体だと分かるでしょうか。視点は指示した方向へ変わっているでしょうか。最後の構図は編集に使えそうでしょうか。
そのうえで、各地点をつなぐ動きも見てください。きれいなフレームが三枚あっても、一本の滑らかなショットになっているとは限りません。
プロンプトで意図を伝えることはできますが、フレーム単位で正確な経路や、被写体の形が完全に保たれることまでは保証できません。設定の詳細は、Camera Motion LoRAの操作ガイドにまとまっています。
カメラ用語をたくさん並べることより、カメラに何をしてほしいのかを明確にすること。そのほうが、生成後に結果を判断しやすくなります。
