「藍千堂菓子噺」シリーズを読む。
江戸は神田で小さな菓子屋を営む兄弟と、職人、
そして、それを取り巻く人々の、なんとも美味な物語。
このシリーズは、やはり、一作目から順に読んでいくのが、
面白さを堪能するのに一番だ。
菓子を作ること以外は、いささかぼんやりの兄の晴太郎、
商才にたけ、冷静沈着、それでも兄を思う気持ちはだれにも負けない
弟の幸次郎。
この二人は、名店とうたわれた「百瀬屋」の息子だったが、
父母が亡きあと、理由もわからず、叔父の清右衛門によって店から追い出される。
二人は、かつて百瀬屋の職人で、今は自分の店を一人で切り盛りしている
茂平を頼る。
茂平は店を二人に任せ、自分は、彼らと共に職人として二人を支えたいと申し出る。
二人は、父の味を守り、茂平の店を大きくしようと菓子作りに取り組んでいく。
叔父との確執、店から追い出された理由、茂平の想い、晴太郎の恋、
菓子を通して人の輪が広がり、物語も広がっていく。
兄として、主としてはぼんやりの晴太郎だが、
菓子にかける想いは熱く、周囲の人々に向けるまなざしは温かい。
だからこそ、兄に対しては容赦ない幸次郎も、兄が大好きなのだ。
二人の絆は強く、決して切れることはない。
晴太郎が思いつく創作菓子とともに、まっとうに生きようとしている
人々の暮らし、想いが、じんわりと胸にしみていく。
早く、早く、それでも大事に、次が読みたい、
そんな気にさせてくれるシリーズだ。