尽きない。宮部みゆきさんの「青瓜不動 三島屋変調百物語九之続」を読む。
「語って語り捨て、聞いて聞捨て」の「三島屋変調百物語」シリーズも、
はや、九作目。
新刊を手に入れたのだからと、一作目から読み返してみた。
読み応えは十分で、八冊をあっという間に、というか、
切り目なく、一挙に読んでしまった。
おちかのためにと、伊兵衛が始めた百物語だが、
時を経て、おちかが嫁に行き、聞き手が、三島屋に戻ってきた
富次郎に受け継がれ、そして、おしまがおちかのもとに行き、
長男の伊一郎が三島屋に戻り、おちかに赤子が生まれる…。
「サザエさん」のように、いつまでも変わらないまま、
楽しめる物語もいいが、こうして、主人公や周囲の人々の
生活が変わり、少しずつ、変化を遂げていく、
そんな描き方も、百物語の裏に、もう一つの物語が流れ、
幾重にも楽しめる。
でも、おちかが聞き手を務めていたころの、
おちか、おしま、お勝、三人の女たちの心のやり取りが懐かしい。
それに、富次郎のキャラが、今一つ軽っぽく、
おちかの頃の、心に染み入るような余韻が味わえない。
繰り返し、「おちかのようにはなれない」と落ち込み、
「もうちょっと、しゃんとせい」と活を入れたくなる。
富次郎がメインになってから、
おちか側の物語が、見事なくらい描かれず、
それも少々、不満といえば不満。
だって、本当にあっけなく、嫁にいっちゃったし。
話の主軸は百物語だから、余計なことなのかもしれないが。
三島屋の中で、三人プラス小梅の生活も見てみたいが、
それはそれで、悲しいことの上に成り立ちそうで、
望んではいけないことなのだろう。
そんな中で、怪異や不可思議が語られる百物語は変わらない。
ただ、今作の一編だけは、「黒白の間」で語られるものではなく、
骨董屋の中で聞くものが混じり、異色と言えば異色。
ま、これまでにもなかったことではないが。
さて、おちか側の話もそうだが、あの世とこの世を行き来する商人や、
伊一郎の心模様、富次郎のこれからなどなど、
気にかかるあれこれが多く、こちらも、じっくり腰を落ち着けて、
このシリーズと付き合っていこう。