『パワー・オブ・ザ・ドッグ』The Power of the Dog

2021年/イギリス、カナダ、アメリカ、ニュージーランド/126分/監督、脚本 ジェーン・カンピオン

Netflix

 

 

映画館の大きなスクリーンで観たかった映画ですが、Netflixの資金でなければ作れない大作映画で、致し方ないかと。

設定は1925年のモンタナ州ですが、実際にロケされたのは監督の故郷であるニュージーランド。

 

大きな牧場を経営する兄弟。

兄はイェール大を出た秀才だけれども、今は荒くれたカウボーイとなって牛を仲間たちと追っています。

この兄、フィルが曲者でかなり高圧的でひねくれもので気難しい性格。

演じたのはベネティクト・カンバーバッチ。この役のために2週間風呂に入らなかったそうです。

 

 

弟、ジョージ(ジェシー・プレモンス)は経営者としていつも蝶ネクタイをしているような性根の優しい穏やかな男。

この弟が宿泊先のレストラン&ホテルの女主人、ローズ(キルティン・ダンスト)を好きになる。

ローズは夫を失っていて、おとなしい息子(コディ・スミット=マクフィー)がいる。

 

ジョージはローズにプロポーズして結婚しますが、兄、フィルは金目当てと決めつけて何かと目の敵にする。

兄弟の住む家に引っ越してきたローズですが、フィルは冷たいし、家になじめず、夫はやや頼りなくだんだん酒におぼれるように。

それをじっと見ている息子。そして息子は医大に行って夏休み、戻ってきます。

 

 

映画は広大な土地をたくさんの牛を追っていくカウボーイたちを美しく映します。

そして、室内の映像は逆光が多く、屋敷は広いけれど家の中は暗くてどんよりとしています。

裕福な家になるのでしょうが、誰もがバラバラで兄弟もどこか他人行儀です。

 

なぜ、大学で古典を学んでいたような兄が荒っぽいカウボーイになり、気の小さい弟が一生懸命牧場経営に奔走しているのか。

どこか不気味で表情が読めない息子のピーター。

どんどん追い詰められてボロボロになっていくローズ。

 

家族の中にはだんだんと不協和音が鳴り響くようになります。

その過程がとてもじっくりしていて、喜怒哀楽をなんでも台詞で話してしまう映画とは違い、もともと台詞の少ない映画なのですが、憎しみに燃えた目、絶望しか見えない目、何もかも見透かしてしまったような目・・・・・・とても眼力の強い映画。

 

 

タイトルの犬の力、とは聖書からで犬とは邪悪なものの象徴。

邪悪なものはとりのぞかなければならない。すごく宗教的、思想的な背景を持っているんです。

 

やはり映像の美しさ、脚本のうまさ、役者の演技、演出・・・・・とても格調高い映画。

 

 

私は気は小さいけれど、皆のために自分を殺して奔走する弟、ジョージがよかったというか、思い入れてしまいました。

当初はポール・ダノにキャスティングされていたけれど降板、キルティン・ダンストの私生活のパートナーであるジェシー・プレモンスが演じました。

映画の感じがポール・トーマス・アンダーソン監督の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に似ています。

あの映画も聖書の言葉からきたタイトルでした。そしてポール・ダノが出ていました。ポール・ダノが演じたジョージも見てみたかったですね。

 

今年のアカデミー賞の本命と言われている本作ですが、いかにもアカデミー映画って感じもしますし、こういう格調高い大作が配信で公開されるという時代の流れが感慨深いですね。