出るんだ | 無駄話。

無駄話。

鬱病・適応障害持ちが書く与太話です。「下劣な党派心」による「あら探し」が多いので、合わない方はご遠慮願います。

 来月転売ヤーを容認で「ホビージャパンする」という隠語まで出来た版元からエーリヒ・ハルトマンの伝記が刊行されるそうだ。今さっき検索して知った。何でもハルトマンの伝記は「新訳」だそうだ。誰が翻訳者かホームページでは明記されていないがドイツ語やロシア語が出来る人の方がいい。版元の紹介にあるように「朝日ソノラマ、学研M文庫」で刊行されたのは読んだので知っているがハルトマンがソ連から帰国するまでの抄訳が朝日ソノラマ版の前に出ていたのを古書店で見かけた。一応は買おうかと思ってはいるが同じ順序で刊行されたルーデルの本は彼の著作権継承者が分からないとかで英訳を参照したらしいが、そうなるとルーデルの著作権のみならず英訳の翻訳者の著作権も侵害している事になるからか版元のホームページには掲載されていても品切れ扱いのようだ。「エルサレム〈以前〉のアイヒマン」を読むとルーデルの本はアドルフ・ガラントの「始めと終わり」共々武装SS時代はPK隊員だったサッセンがゴーストライターらしい。さすがにゴーストライターの著作権までは主張されないにしろ。

 さて「古典的名著」だと版元が紹介しているハルトマンの伝記には中公新書の「シベリア抑留」にソ連がドイツ軍の捕虜となった赤軍将校に強制労働を課せた報復としてドイツ軍の尉官は強制労働に従事させたとあるのに、この男は少佐なのに食堂という模範囚的な地位にいないと就けないところで働いていたと分かる事が書かれていた。それでいて戦犯として有罪になってからは将校として労働を拒否したというのは納得がいかない。実はハルトマンは一時期、反ファシスト学校で学んで反ファシストとして活動していたのではないか?という気がしてならない。パウルス元帥の副官だったヴィルヘルム・アーダム大佐のようにハルトマンはロシア語が出来るというので意思の疎通には苦労しないだろう。最近邦訳が出た本にソ連で抑留されたドイツ人で同じような組み合わせが紹介されているのにハルトマンの伝記にはハヨ・ヘルマン大佐が出て来ない。ヘルマンは「兵士というもの」でガラントの発言としてエルベ特別攻撃隊を立案したが自らは参加しないと言っていたそうだが、ヘルマンの政治的立場や人間性はどうであれ、ヘルマンに言及すると自分の立場が危うくなるからか伝えなかったハルトマンの人間性もどうだろう?この伝記の著者達によるとロシア文学は野蛮だというのは感性の問題だとしても1941年6月22日に戦争を仕掛けたのはソ連ではないのは確かだ。ハルトマンは7月20日以降に勲章を授与された時に拳銃をSSに預けなかった!と自慢しているが1944年7月20日付で騎士十字章を授与されたフィリップ・フォン・ベーゼラーガー男爵がヒトラーから勲章を貰う時の写真を見たら男爵や他の将校は拳銃を佩用していた。ハルトマンが嘘つきだとよく分かる。

 正直言ってハルトマンのようないかがわしい「英雄」様のどこまで本当なのかが疑わしい伝記の新訳版より彼の公式スコアより十分の一の撃墜王のハインリヒ・フォン・アインジーデル伯爵の回想録の新訳版を読んでみたいところだ。フォン・アインジーデル伯爵の本にはヘルマン・グラーフを告発したというハンス・ハーンとは西部戦線で面識があったらしく優しく接している記述があるのが意外だった。