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自閉症・ADHD など発達障害増加の原因としての環境化学物質

――有機リン系,ネオニコチノイド系農薬の危険性(下)


木村―黒田純子 きむら―くろだ じゅんこ

東京都医学総合研究所 脳発達・神経再生研究分野 こどもの脳プロジェクト

黒田洋一郎 くろだ よういちろう

環境脳神経科学情報センター


http://www.actbeyondtrust.org/wp-content/uploads/2012/02/Kagaku_201307_Kimura_Kuroda.pdf




前号(上)で,近年の日米欧における自閉症など発達障害児急増の原因は,従来言われてきた

「遺伝要因」では説明がつかず,環境要因が主要であること,ことに感受性の高い胎児期や小児期

などに農薬や PCB などの有害な環境化学物質を曝露すると発達障害のリスクが高くなることを述

べた。環境要因としては,環境化学物質だけでなく,放射能(コラム 1),感染症,栄養状態,生活習

慣,さらに家庭・学校・社会環境の著しい変化なども当然関わっており,これらが複雑に影響し合

った相互作用の結果と考えられる。環境要因のなかでも環境化学物質の影響に特に注目するのは次

の 2 つの観点による。第一に,子どもの脳の機能発達に重要な,複雑精微な膨大な数の遺伝子発

現を先天的,後天的に制御しているホルモンや神経伝達物質などが,環境ホルモンや殺虫剤(農薬)

などの化学物質によってかく乱されることが実験的に実証されていることである。第二に,疫学研

究でも農薬曝露と発達障害との相関関係を示す報告が集積してきていることである。

2012 年に Rossignol & Frye は自閉症の研究動向を分析し,最近の焦点として次の 4 点,




自閉症における

①炎症反応を含む免疫異常の関与



②酸化ストレスによる障害,

③ミトコンドリアの機能障害,

④有害な環境化学物質の関与,



挙げている。


さらにこれらの 4 点については,


自閉症との因果関係を示唆するデータがあり,互いに関連がある上に,①~③の病態は,④の農薬

など毒性のある環境化学物質曝露に起因している可能性があると考察している。2003 年に設立さ

れた米国の研究プロジェクト CHARGE(Childhood Autism Risk of Gene and Environment,自閉症発症要因を


研究する米国 NIH 出資の機関)の主要な研究者である HertzPicciottoらも,同様に自閉症研究を分析・評価


し,農薬を発達期の胎児・小児が曝露すると,脳神経系に興奮性 / 抑制性のかく乱作用をおこして神経

回路形成が正常に行われないだけでなく,ミトコンドリア機能障害,酸化ストレス産生,免疫毒性,

甲状腺ホルモン低下((上)コラム 1 参照)などをおこす実験報告を紹介し,農薬など環境化学物質曝露の

危険性に注意を喚起している。

2012 年,米国小児科学会が正式に「子どもへの農薬曝露による発達障害や脳腫瘍のリスク」を

警告したように((上)文献 5,声明付属のテクニカル・ノートとして,子どもへの農薬曝露への警告の根拠


となる科学的データがまとめられている),環境化学物質の中でも脳神経系を直接標的にしている農薬は,特


に注意が必要と考える。本稿(下)では,私たち日本人が農薬など環境化学物質にどれだけ曝露しているのか


,また農薬が子どもの脳発達に実際どのように影響を及ぼすのか,現段階でわかっていることを,筆者らの研


究結果を含めて研究報告の概要を述べ,最後に環境化学物質から子どもたちを守るための方策についても触れ


たい。




日本人は PCB や農薬など環境化学物質にどれだけ曝露しているか




脳神経系を標的とした農薬の歴史


肝心の日本人にはほとんど認識されていないことだが,日本の農薬使用量は,2008 年度の報告

では OECD 加盟国中,単位面積あたりで世界 2位(2002 年では 1 位)と極めて多量に使用されている。

実際,表 1 のように過去に大量に使用された有機塩素系農薬だけでなく,有機リン系,ネ

オニコチノイド系農薬を含む農薬に日本人全員が曝露していると考えられる。


農薬(殺虫剤や除草剤など)のもつ病害虫や雑草への毒性は特異的ではなく,ヒトや益虫など多くの生

物が構成する生態系にも毒性を発揮し,予想外の影響をもたらした歴史がある。現行の農薬の安全

基準には,最近知られるようになった多種類の農薬の複合影響,環境ホルモン作用,エピジェネテ

ィックな変異や脳発達への神経毒性,脳高次機能への影響などの行動奇形学(behavioral teratology)的な

毒性試験は入っておらず,安全性が確立されないまま販売・使用されているのが実情である。特に

ヒトの知能など脳高次機能への影響は厳密な検証が難しく,今後の大きな課題である(コラム 2)。


現在日本で使われている農薬は表 2 にあるように,有機リン系,カーバメート系,ネオニコチノイド

系などアセチルコリン系(アセチルコリンを神経伝達物質とする信号伝達系)を標的としたものが主となって

いる。アセチルコリン系は昆虫の脳神経において主要な役割を担っているが,ヒトにおいてもより

多様なアセチルコリン系があり,末梢神経だけでなく脳の高次機能,脳の発達,さらに免疫系など

非神経組織に至るまで,重要な働きをもつことがれ続けたため,地球規模に汚染が拡大し,日本人

でも未だに多種類の有機塩素系農薬が検出されている(表 1)。


また DDT はマラリア蚊に有効であるとされ,アフリカなど感染危険地域では WHOが認めて未だに使用されてい


るが,DDT 耐性の蚊が発生するため本質的な解決になっていない。

有機塩素系農薬の毒性は,その後の研究から環境ホルモン作用のあるものや,エピジェネティックな変異(上


)コラム 2 参照)をおこすものもみつかった。抗男性ホルモン作用を示す有機塩素系農薬ビンクロゾリンは,


DNA のメチル化によるエピジェネティックな変異をおこし,4 世代にわたって雄ラットの生殖能力を低下させ


るという報告に続き,海馬や扁桃体の多数の遺伝子の発現を変化させ,仔ラットだけでなく F3(子孫 3 代目


)ラットの不安行動にも異常をおこした。


有機塩素系に代わって主に開発されたのが有機リン系農薬で,昆虫の中枢神経で主要な神経伝達

物質アセチルコリンの分解酵素・アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害し,毒性を発揮する(図

4)。有機リン系農薬は,もともとサリンのような神経ガスなどの化学兵器の知見を,“平和利用”

したものである。有機リン系は,有機塩素系に比べれば分解しやすいが,後述するように標的のア

セチルコリン系は末梢,中枢神経で重要な働きをする神経伝達物質なので神経毒性が強く,特に初

期のパラチオンなどではヒトへの急性中毒の報告が相次いだ。


さらにやっかいな遅発性の神経障害(運動失調や手足の麻痺)をおこす被害例が報告され,

ニワトリを用いて急性中毒をおこさないほど低用量の有機リン曝露が,遅発性神経障害をおこすこ

とが確認された。免疫系の異常やアレルギーとの関連も指摘されている。有機リン系農薬の曝露

は経口だけでなく,皮膚,粘膜,鼻腔,気道から吸収されやすいものもあり,肝臓で解毒されずに

血流にのって全身にまわるので影響が大きくなる。


このようなヒトへの毒性から,有機リン系農薬はEU では現在ほぼ使用されなくなったが,日本や

米国では未だに使用され続け,特に日本では他の農薬に比べ総量は格段に多く使用されている。

有機リン系の代替として開発されたのがネオニコチノイド系で,最近使用量が急増している(図

3B)。ニコチン類似構造をもち(図 5),毒性が非常に強く,世界各地で有機リン系農薬では死ななか

った生物,たとえばミツバチの大量死をおこし,欧州では一部で使用禁止となった。4 節で詳しく

述べるが,「害虫に “選択性” が高く,ヒトには“安全”」と宣伝されているが,昆虫への毒性が非

常に高いため,比較するとそう見えるだけで,ヒトのニコチン性アセチルコリン受容体にも結合

し,ヒトや哺乳類でも強い神経毒性があることがわかってきている。




脳の発達に重要なアセチルコリンを介した情報伝達系




現在主流の農薬である有機リン系,ネオニコチノイド系はアセチルコリン(コラム 3)を介した神経

伝達系を標的としているが,アセチルコリン系は人体において脳神経系,免疫系などで多様な働き

をしているだけでなく,ことに脳の発達に重要な働きをしているため,その影響が気がかりである。




農薬ネオニコチノイドはミツバチだけでなくヒトにも危険




(1)ミツバチ大量死も発達障害?


ニコチンと類似した化学構造をもつネオニコチノイド系農薬の毒性が注目されたのは,最近の世界的なミツバ


チ大量死(ミツバチ群の崩壊)の一因との疑いからである。大量死の原因は,感染症やストレスなど他の要因


も考えられてきたが,2012 年4 月『サイエンス』に掲載された 2 つの論文で,


ネオニコチノイド散布が引き金であることに間違いはないと考えられるようになった。


その 1 報

では,低濃度のネオニコチノイド曝露でミツバチが行動異常をおこし,巣に帰れず死ぬ個体が増えることが報


告され


,もう 1 報ではミツバチに近い社会性をもつマルハナバチで,低用量のネオニコチノイド曝露により女王バチ


が減少することが明らかとなった。


さらに同年 10 月には『ネイチャー』にもマルハナバチが,ネオニコチノイド系とピレスロイド系農薬に曝露


されると採蜜/採花粉行動がうまくいかず,巣に帰れず,群れは崩壊することが報告され,ネオニコチノイドや


ピレスロイドがミツバチ大量死をおこしていることが実験的に証明された。


日本でもミツバチ大量死は各地で報告され,大量死したミツバチからネオニコチノイド系農薬が検出された。

ミツバチにネオニコチノイドを与えると,巣へ戻る方向性を失うなど行動異常が見られ,このことは,蜜源を


知らせるダンスなど複雑な本能行動をおこす神経回路のニコチン性受容体がネオニコチノイドによりかく乱さ


れたためと考えられる。


しかしより低い濃度のネオニコチノイドでもミツバチが大量死するらしいのは,幼虫のえさである花粉が浸透


性のネオニコチノイド農薬で汚染され,次世代のハチ幼虫の脳の神経回路の発達が障害された可能性もある。


ヒトでも昆虫でも,発達中の脳,ことに記憶など高次機能を担う複雑精緻な神経回路の発達が,“ニセ神経伝


達物質” であるネオニコチノイドなどに脆弱なのは当然といえる。


ミツバチは昆虫としては最も進化した脳をもち,独自に進化した社会を構築しているため,致死量よりはるか


に低い微量のネオニコチノイド系農薬に脳がかく乱され,結果的に群れごと絶滅したのであろう。


ネオニコチノイドに曝露すると感染症にかかりやすくなるという報告もあり,免疫異常をおこす可能性もある


。他の農薬と同時に使うと,致死効果が 1000 倍も高くなるという複合影響も報告されている。


フランスなどヨーロッパの農業国では,これまでもネオニコチノイド系イミダクロプリドや殺虫剤フィプロニ


ルの使用を一部禁止にしてきたが,2013 年 4 月 29 日,EU では 12 月より 2 年間ネオニコチノイド系農薬


イミダクロプリド,クロチアニジン,チアメトキサムを使用禁止とする決定をした。日本では驚くべき

ことに,農薬散布時に養蜂家にミツバチの巣箱を移動させるという処置しかとっていない。












有機リン系農薬による発達障害の発症と複合汚染




低濃度の有機リン系農薬が尿中に検出される児童では,ADHD のリスクが約 2 倍になるという

疫学報告や,IQ 低下がみられるなどの疫学報告が多数出ている((上)文献 1~4 参照)。アセチルコリ

ン/ニコチン性受容体,さらにムスカリン性アセチルコリン受容体も脳発達に関わっていることが

わかっているので,アセチルコリン分解酵素を阻害する有機リン系農薬は,脳の発達の過程で神経

回路形成をかく乱・阻害し,ADHD 発症や知能発達に影響を及ぼす可能性がある。


また,有機リン系農薬による遅発性神経障害では,神経障害性エステラーゼという酵素が関与し

ており,この酵素が ADHD などの発達障害に関わっているかもしれない。脳内にも存在する神経

障害性エステラーゼのノックアウト・マウスは生まれてもすぐに死んでしまい,酵素活性が低いマ

ウスでは多動を示すことが報告されている。


さらに興味深いことに,アセチルコリン分解酵素の活性ドメインが,シナプス接着因子・ニュー

ロリジンのニューレキシン結合部位に存在していることが報告されている((上)文献 33)。ニューロリ

ジン,ニューレキシンの遺伝子変異と自閉症発症には強い因果関係が示唆されており,アセチルコ

リン分解酵素を阻害する有機リン系農薬は,これらのシナプス結合に直接関与している可能性もある。


有機リン系農薬は,これ以外の脂肪分解酵素やセリン加水分解酵素なども阻害するという報告もあり,有機リ


ン系農薬の毒性は多様・複雑である。

非常に微量の化学物質で健康被害を生じる化学物質過敏症は,有機リン系農薬曝露後に発症するケースが多く


,因果関係が懸念されている。


有機リン系農薬は現在でも総使用量が多く,その上アセチルコリン系に関わるネオニコチノイド系農薬の使用


量も増えているので,ネオニコチノイドとの複合曝露によるアセチルコリン系を介した脳発達への影響は大き


な問題と考えられる。


ラットの実験で,ニコチンと有機リン系農薬クロルピスを母胎経由で複合曝露した場合,単独曝露に

比べて仔ラットの運動能力が顕著に低下した報告があり,ネオニコチノイドとの複合曝露は,影響

をより大きくする可能性がある。




6 「予防原則」にもとづく規制を


有機リン系やネオニコチノイド系などの農薬類は,直接神経系をかく乱し,子どもの脳発達を阻害する可能性


が高い。さらに農薬だけでなく,PCB や重金属(水銀,鉛など)といった神経毒性のある環境毒性化学物質と


の複合影響が危惧される。


表 1 に示したように,われわれ日本人は,ほぼ全員多数の環境化学物質に曝露しているのである。

これらの環境化学物質と発達障害児の症状の多様性との関係も綿密な調査研究が必要である。

しかし自閉症や ADHD などの発達障害の原因として,農薬や環境化学物質との厳密な因果関係

を完全に証明することは,複雑極まりないヒト脳研究の中でも,技術的にもとりわけ困難である。

一方,有機リン系農薬,PCB,鉛,水銀などは既に疫学調査により発達障害のリスク因子であるこ

とが明らかになっており,放置することは発達障害児を将来にわたってますます増やす可能性が高い。


個人レベルで有害物質に曝露しない工夫も必要だが,日常生活で個人ができることは限られる。

すべての子どもの健やかな発育,ひいては日本社会の将来につながる重要課題として,農薬や環境

化学物質についても予防原則を適用し,危険性の高いものは使用禁止にするなどの国レベルでの施

策が必要であろう。


農薬については,登録の毒性試験に環境ホルモン作用,エピジェネティックな変異原性試験,複合毒性試験,


発達期神経毒性試験(DevelopmentalNeurotoxicity Test, DNT),複数の農薬による複合毒性試験を導入し,


感受性の高い胎児・小児を基準にして,子どもへの危険性を最小限に抑えたい。


発達期神経毒性試験については,EPA, OECD では既にシステムが導入されているが,内容については,脳高次


機能を検証できるか否か,議論が続けられている。


発達期神経毒性試験には,従来の組織学的検討などの方法以外に,コラム 1 に紹介した脳高次機能を調べる行


動奇形学的なシステムや,DNA マイクロアレイによる網羅的解析から,脳発達に重要な遺伝子発現の変動をみ


る実験システムのような,新しい評価システムの導入が望まれる。


農薬以外の有害な合成化学物質や環境化学物質については,日本でも化学物質審査規制法(化審法)が 1973


年に制定され,現在では厚労省,経産省,環境省のもとで,ダイオキシン,PCB などの管理規制を進めている


が,環境ホルモンなどはまだ対象になっていない。環境ホルモンについても取り組んでいる EU のように,進


んだ規制管理が日本でも必要であろう。


2002 年のヨハネスブルグ・サミットにおいて合意した SAICM(StrategicApproach on International hemical


Management:国際的化学物質管理に関する戦略的アプローチ)での

「化学物質が,人の健康と環境にもたらす悪影響を最小化する方法で使用,生産されることを 2020 年までに


達成する」

という目標を実現するため,日本国内でも有害な化学物質規制に向けて具体的で柔軟な施策を期待したい。


2012 年,米国化学工業界の専門誌に,ネオニコチノイドなど昆虫とヒトで共通な脳神経系を標的にする農薬で


はヒトへの毒性が不可避なことを認め,フェロモンやキチン質合成など昆虫にしかない標的を狙う,農薬開発


の方針転換を示唆するような論文がでている。危険な農薬/殺虫剤が昔話になるときが近い将来くることを期待


したい。




Jul. 2013 Vol.83 No.7 自閉症・ADHDなど発達障害増加の原因としての環境化学物質


参考サイト


https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=97253




http://www.mag2.com/p/news/26811?fb_action_ids=1883605655198447&fb_action_types=og.likes&fb_source=other_multiline&action_object_map=%5B793997084051433%5D&action_type_map=%5B%22og.likes%22%5D&action_ref_map=%5B%5D