慶應義塾大学 経済学部 数学 講評| 2025年大学入試数学
●2025年度大学入試数学評価を書いていきます。今回は慶應義塾大学(経済学部)です。
いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。 KATSUYAです。
2月に入り、本格的に2次試験シーズンがやってきました。お馴染みになってきたかもしれませんが、2025年 大学入試数学評価をやっていきます。
2025年大学入試(私大)シリーズ
慶應義塾大学(経済学部)です。
問題の難易度(易A←→E難)と一緒に、典型パターンのレベルを3段階(基本Lv.1←→高度Lv.3)で書いておきます。 ☆は、「解くとしたらこれがいい」というオススメ問題です。
また、解答までの目標時間を、問題ごとに書きます。
※目標時間=解き方を含め、きちんと完答するまでの標準的な時間です。 したがって、目標時間を全部足すと、試験の制限時間を越えることも、当然ありえます。
同時に、その時間の2倍考えてもまったく手がつかない場合は、ヒントや答えをみるといい、という目安にしてください。
本文にある緑字(この色)は、数学を受験する上で必要な原則を表しています。知らなかった場合は、言葉を覚えるだけでなく、必ず教科書や問題集等で該当する類題を数題見つけ、演習することで定着させてください。
自分で探して自分で解く。これが一番身につきます。
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Principle Pieceシリーズの販売を再開しました^^ 原則習得のための参考書です。
YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。
Twitter始めました こちらもよろしくお願いいたします^^
慶應義塾大学(経済学部A)数学
(試験時間80分、6問、ハイブリッド型)
※ハイブリッド型とは、穴埋め型と記述式の混合型のことです。
目次
動画でも紹介していますので、お好きな方でご覧ください。
1.全体総評~ボーダーを取るなら昨年並み~
難易度は全問ベースで考えるとやや難化、ボーダーベースで考えると昨年とほぼ同じです。
前半の穴埋めは昨年並みか少し計算量はスリムになった印象。後半の4番、5番あたりはいつも通り難易度は高く、どちらも最後は計算量がかなり多め。6番は微積色が薄い感じでした。
※私は、3年連続で80分で解けませんでした(大問6の(2)(3)残し)。
試験時間80分に対し、標準回答時間は178分【149分】(←穴埋め考慮)
2024年:170分【142分】(←穴埋め考慮)
2023年:174分【140分】(←穴埋め考慮)
2022年:185分【164分】(←穴埋め考慮)
2021年:185分【154分】(←穴埋め考慮)
2020年:195分【169分】(←穴埋め考慮)
2019年:128分【108分】(←穴埋め考慮)
2018年:165分【141分】(←穴埋め考慮)
2017年:160分【133分】(←穴埋め考慮)
2016年:170分【147分】(←穴埋め考慮)
2015年:130分【103分】(←穴埋め考慮)
2.合格ライン~取りやすいものを取る~
第1問は小問2つ構成に。(1)は計算するだけ。(2)も場合分けをコツコツやれば解けるはず。どちらも出来ればおさえたいが、(2)は少し差がつくか。
第2問は数列。KO経済の数列としてはラクな方だと思うので、対策してれば取れるハズ。
第3問は確率。(4)は捨ててOK。(3)までで考えると、普段の確率より考えやすい。
第4問は指数対数とちょこっと微分。こちらも(4)だけ明らかにヤバそうなにおいがする。(3)は見掛け倒しなので、 ここまで確保したい。
第5問も空間ベクトルで、問題文からしてもメンドウそうで、実際(1)からそんなに簡単ではない。本セット最難問。(2)まで解ければ有利。(3)(4)は捨ててOK。
第6問はちょっと毛色の違う微積でキー問題。(1)は面積公式の証明で、こういうものほど差がつく。(2)(3)も普段あまりしない考え方を用いるので、差が付きそう。ここに来るまでに時間を残していたかどうか。
いつも通り、取れそうなものを確保。今年は捨てようと思えるものが割と分かりやすいので、判断しやすいかと。
前半3問では、第2問と第3問の最後以外、第1問は半完以上。後半は全部合わせて1完全半ぐらいあればという感じ。
3.各大問の講評
第1問(1)【三角関数】三角形の面積、辺の長さ(AB、13分【9分】、Lv.1)
今年の最初は三角関数。単位円周上の点で構成される三角形や辺の長さを求める問題。
いろいろ聞いてますが、ひたすら正弦定理と余弦定理を使うだけ。そこに2倍角、3倍角が絡みます。ただの計算問題ですね。
なお、本学を受験するなら、3倍角公式は必須です。「導けばいい」とか甘い考えはやめましょう。
☆第1問(2)【図形と方程式】不等式と最大値(B、20分【13分】、Lv.2)
絶対値を含む不等式条件下で、最大値を求める問題。誘導通りにするのがちょっと煩わしいですが、やることは同じです。
最初は絶対値の中身2つの式がかけて0以上のとき。
因数分解形の領域は次の原則で簡単に分かります。
(詳細は拙著シリーズ 数学Ⅱ 図形と方程式 p.62)
そのときに、さらに①を満たす領域を図示すればmの範囲は分かります。答えを書きながら領域をどんどん図示していくと完成形の予想が付きます。
後半は前半と同じように考えても出来ますが、穴埋めなら前半の段階で領域の予想が付きます。残りの境界線は直線のはずですし、結ぶところを考えるときれいな正方形なりそうですよね。
最後は最大値、ヒントの形から、展開してm、nのそれぞれで平方完成すればOK。
領域が正方形であることから、m,nはお互いに影響することなく求めた範囲を動けます。
あとは(m-3)^2が最大、(n-3)^2が最小になるときでOKですね。
※KATSUYAの解答時間は4:00,12:06です。(2)で境界の式ミスったので、かなりロス。これ無ければ、時間内に終われたかもと思うとちょっと反省。
第2問【数列】和から項、項から和(BC、20分【13分】、Lv.2)
KO経済らしい感じの数列ですが、普段よりは計算が穏やかなので取りやすいと思います。
(1)はいいでしょう、a1、a_2ともにシグマの式にk=1や2を入れて、2つの式を比べます。
(2)の前半もただの計算。それが一番上のシグマの右にk=nを入れた式になりますから、それでanも出せます。誘導も親切ですね。
(3)はanの和を求めるもの。流れから、望遠鏡型だと分かるでしょう。
その準備として、anをf(k+1) -f(k)の形に変形する必要があります。分母はこちらの原則に従うと分け方に迷わないでしょう。
(詳細は拙著シリーズ 数学Ⅱ 式と証明 p.21)
手前の分数は、まず分母を特定したうえで中カッコの中を通分します。元の式と見比べて2倍大きいので、1/2倍すればいいという感じで埋めます。
これが出来れば、和も出せますね。なお、部分分数分解の式はa2からなので、a1だけは別計算であることに注意しましょう。
※KATSUYAの解答時間は6:47です。普段のKO経済の数列より簡単では?
第3問【確率】点の移動、条件付き確率(BC、35分【24分】、Lv.2)
だいたい確率と数列がここで、今年は確率。ルールに従って点を移動させますが、こちらも普段の確率よりは(最後を除いて)そこまでしんどくないかなという印象。
(1)(2)(3)実は同じ考え方で解けます。こちらの原則を応用したものになります。
(詳細は拙著シリーズ 数学 A 確率 p.22)
(1)で説明します。2枚表、2枚裏、表裏1枚ずつがそれぞれa回、b回、c回起こると設定します。回数が全部で3回であること、およびx座標とy座標の移動量の合計がゼロであることから、
a+b+c=3
a+b-2c=0
√3a-√3b=0
が成り立ちます。3文字で3つ式があるので、解は1つに決まります。あとは反復試行の考え方で確率を出せばOK。
(2)はさっきの3つの式一番下の式だけ除きます。今度は1通りに決まりませんが、0以上の整数の組み合わせを探すだけです。この要領で(3)も式を立てて、あり得る回数をすべて調査して足せばOK。
(4)はちょっとメンドウ。条件付き確率はこちらの原則に従うので、分母は(3)の答えです。あとはすんません、動画をご覧ください。言葉では説明しにくい^^;
※KATSUYAの解答時間14:14。(1)(2)(3)全部やること同じやんけ^^;なんか不安になるな。(4)はメンドウそうやけど(3)出したしやるか。動画の通りあの図を急いで書き、3回で到達し得る場所を網羅して円周上になる場合だけを計算。まあ、捨て問やし、問題文的にもスルーすべきって分かりやすい。
第4問【指数対数+微分】指数不等式を満たすnの最大値など(BC、30分、Lv.3)
今年はこっちが指数対数。空間ベクトルと隔年で、4番と5番を入れ替える意図は分かりかねますが、 ほぼどっちかがどっちかです。
(1)は微分計算がちょろっと。接線を出してy=2mを代入するだけ。
(2)は表現が遠回しですが、Nはmの最大値なので、(1)の値≦1をまずmについて解き、m≦1/2p(p+2) とします。
これを満たす自然数mの最大値が40なら、右辺が40以上41未満てことですね。これを解くだけです。
後半から指数対数。(3)は繁雑そうに見えますが、見掛け倒し。なのでここまで確保できるとベスト。こちらの原則に従うだけです。
(詳細は拙著シリーズ 数学 Ⅱ 指数関数・対数関数 p.26)
今回はどう見ても3にそろえるのがいいでしょう。指数の底はもともと3、対数の方にも3が入っています。
よって、あとはaの式をlog_3●という形にまとめてしまえばOK。n=log_3 3^nなども使えば、すぐに出来るはずです。
上の原則が定着していて、この手の計算演習経験がある程度あればいけるでしょう。
(4)は捨て問。方針は立ちやすいですが、とにかく計算がメンドウなのはすぐにわかります。問題文から、
1/2p(p+2)<2の1000乗
という不等式は作れるでしょう。そのpが(3)の答えですので、指数不等式になります。これを満たすnの最大値を求めますが。まともに解くのはムリなので、見当をつけていきます。そこで、こちらの原則。群数列でよく使う原則ですね。
(詳細は拙著シリーズ 数学 Ⅱ 指数関数・対数関数 p.31)
p^2≒2の1001乗になるということで、これなら両辺にlog2を付けて計算できます。これでn≒53となるので、求める値がこの値付近だと分かります。
あとはn=53のときに2^1001乗を下回るのか上回るのかです。これが若干のギャンブルで、下回ると思うならlog_23<1.59を使って上から押さえます。上回ると思うならlog_23>1.58を使って下から押さえます。
ここのギャンブルを外すと計算量が増えますので、その意味でも捨て問でしょう。結果的にはn=53のときは下回り、n=54のときは上回りますので、n=53が答えです。
※KATSUYAの解答時間は16:17。(3)まではどうってことはない。(4)はどうせまともに解くのはムリ、てか+2がジャマ過ぎるのでムシ。だいたいp^2で見当をつけてn=53を出す。あとは下げるか上げるか。余りを切って53にしてるので、足りないハズと踏んで上から押さえるギャンブルに出る。あたった!!よし!54にしたら一気に値は6561倍以上になる(すくなくとも3の指数が8変わる)ので、こっちは絶対超えると踏んで下から評価。ギャンブル当てても筆算が多い^^;
第5問【空間ベクトル】2つの球面の切断面(円)の共通接線など(C、35分、Lv.3)
空間ベクトルからです。2つの球面を題材に、接線出したらり平面どうしの交線考えたり、三角形の面積考えたり、色々です。
KO経済の空間ベクトルは、(特に後半で)空間的にどうなってるかをある程度把握しないと非常に進めにくい問題が出ます。今年はそこまでではなかったですが、その代わり計算がバチくそメンドクサイ^^;
(1)(2)は空間ではなく、平面の問題ですが、初っ端から経験が薄いと結構難しめのタイプ。2円の共通接線を求める問題で、こちらの原則を意識できたかどうかです。
(詳細は拙著シリーズ 数学 Ⅱ 図形と方程式 p.82)
こちらも詳しくは動画で見た方がいいと思いますので、動画をどうぞ。
(3)からは空間把握能力が若干必要。まず平面αは、2つの接点A1A2を通る直線を含み、z軸に平行な平面ってことです。すなわち、αの式は(1)の式そのままです。xとyの関係式さえ満たせば、z座標は何でもOK。
同様に平面βの式は(2)そのものです。それを両方満たすのがlとなります。すなわち、lの式はx座標さえ決めれば、αの式からy座標が、βの式からz座標がxで表されますから、x座標1文字で置けます。直線は1次元なので1文字でおけるのは当然ですね。
(詳細は拙著シリーズ 数学 B・C 空間ベクトル p.11)
あとはz=0とすればGの座標が出て、y=0とすればHの座標も出ます。
(4)は、まずTが直線l上にあることはいいでしょう。そして、OM=4で固定なので、面積が最小なら高さも最小です。Tからx軸に下した垂線の長さが最小になるようなtを求めればOKですね。
ただ、係数的にもかなり計算はメンドウなので、時間的にもまあ捨て問ですね。制限時間120分ならやってもいい(笑)
※KATSUYAの解答時間は20:16。方針は詰まることはなかったけど、(4)の係数が汚すぎる。途中計算は繁雑なのはしょうがないとしても、あってんのかこれ^^; これは後回しにしたほうがよかったな。あと6分しかないんやけど・・・
第6問・・・【積分+α】面積とその最大値、交点間の距離(B、25分、Lv.2)
普段だと最後は微積分からですが、今年は微分は無しで、最初に面積を求めたらあとは交点間の距離の問題です。
(1)は放物線と直線で囲まれる面積。KO経済でそんなの聞いてくるのか?と警戒したら案の定、6分の公式はNGと言わんばかりの指定がありますね^^;
でも、拙著ではこれに対しても原則で言語化してます!!
(詳細は拙著シリーズ 数学 Ⅱ 積分法 p.12)
この原則は、6分の公式などを証明する問題につけているものです。また、過去に動画でも証明問題(阪大文系で証明が出ている)を紹介しています。
※タイトルも、「公式は使えるだけではダメ」ですからね^^
拙著やこの動画を見ていた人なら余裕で証明しながら求められましたね。
(2)はAB=3のもとでの面積の最大値ですが、AB=3が斜めの線なら、x座標の差は3未満です。でもABが真横に3あればそのままx座標の差になります。そしてその差がそのまま面積に直結しますので、このとき最大ですね。
言われてみればという感じですが、こういう問題ほど解きにくいですよね^^;
(3)は対偶が良かったと思います。(0,7)を通る直線y=mx+7を設定すれば、交点間の距離はmで表せます。交点のx座標の差を√m^2+1倍するだけです。これは知っておいた方がいいでしょう。解の公式で出して引けば、x座標の差も簡単に出ます。
あとは出した距離の式が3になることはない(3より大きい)と言えればOKですが、明らかにm^2=0の時が最小で、そのとき√84/3>3となり、言えますね。
※KATSUYAの解答時間は13:12です。(1)を大急ぎで証明して求める。残り1分強。(2)は一瞬考えるも、「いや真横のときやろ」と判断し、それを急いで答案にするが、途中でタイムアップでした。一応最後までやりました。(3)も最初はまともにやろうとしたものの、対偶の方が距離計算しやすいと判断し、対偶で終了。
4.対策~IIBベ中心に、計算力上げつつパターン問題を素早く解く練習を~
分野はある程度固定で、前半が数Ⅱ前半部(?)、確率、数列。後半が指数対数か三角、空間ベクトル、微積分です。特に後半は結構固定のことが多いですね。(ここ2年は整数が前半に出ます)
難易度的には、基本的な原則を一通りおさえて、あとはひたすら計算するだけなので、計算力を上げる方が優先でしょう。
図形問題は融合が多く、図形的な考察が途中で必要な問題も多いので、単なる数式処理で出来るものではなく、総合的な図形問題に触れておきましょう。
青チャートできちんと演習を積んでおけば、大丈夫です。有名なパターン問題はそのまま自分のものにいしていきましょう。 レベル的には入試標準レベルの演習まで行い、過去問を多めに演習しましょう。量をたくさんこなして、パターンを瞬時に見抜ける訓練が大事。
なお、拙著『Principle Piece』シリーズであれば、初習段階、原則習得段階はもちろん、入試基礎演習まで1冊で済ませられます^^
量をこなす演習:じっくり演習=8:2ぐらいで、直前には7:3(今年レベルなら6:4)にしたいですね。
以上です^^
■関連する拙著『Principle Pieceシリーズ』(リニューアル版!)■
数学A Chapter2~確率~ (第3問)
数学II Chapter2~図形と方程式~ (第1問(2))
数学II Chapter4~三角関数~ (第1問(1))
数学II Chapter5~指数関数・対数関数~ (第4問)
数学II Chapter7~積分法~ (第6問)
数学B・C Chapter1~数列~ (第2問)
数学B・C Chapter3B~空間ベクトル~ (第5問)
計算0.9 (計算練習帳です^^)
すでに原則系の参考書を持っている方にはこちらがおススメ!!
※2023年末時点で販売中のもののみ記載しています。最新販売情報はこちらからどうぞ^^
■他年度の、本大学の入試数学■
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YouTube開設しました。 個人的に紹介したい大学入試数学を中心に解法や発想を紹介していこうと思います。
Twitter始めました こちらもよろしくお願いいたします^^