まわりの女子数人に
根掘り葉掘り噂された私は、
一番仲良しの亜美にも相談してみた。


もう付き合うことは決めていたけれど、

簡単に決めたせいで「男好き」とか「軽い」とか言われることだけは

嫌だった。


正直いうと、このことについて大樹くんがどうのこうのよりも

仲良しの亜美が私のことをどう思っているのか

それが一番心配だった。


 
「大樹って人どうおもう?」 

一通りの出来事を話してから、私は聞いた。
亜美は区の林間学校で大樹くんと同じ班だったことがあるらしく、
「別に噂ほど遊んでる人じゃないと思うけど。」と言った。


「モテるのは本当かもしれないけど。」

 
「でもさー、
今まではお互い校内で片思いしたりしたけど、
やっぱり他校だと普段は学校で会わない分、
久しぶりに会った時はうれしいし、

デートは本当のデートになると思うし、楽しいと思うよ。」
 

亜美は意外にも、「別に付き合ってもいいんじゃない?」と

前向きな言葉をくれた。


ほっとした。


私はまだ恋に恋焦がれる15歳だった。

「デート」とか、「彼氏」とか、

そんなことがうれしくって仕方ない。


大樹くんが好きなのかどうかよりも、

自分に今までとは違う楽しさがやってくる。

そのことにワクワクした。
 
‘付き合うって早く返事しよう。’
 
夜、あらかじめ教えてもらっていたメモを見ながら
電話をとって大樹の家の番号を押した。

告白の日から2日くらい経って、

もう少ししたら大樹くんに返事をしようと思っていた頃、
「雫が他校のやつに告られた」と身近で噂になった。


部活の友達が「しーちゃん、浜野中の男子に告白されたってほんと?!」って聞いてくる。


渉、あのバカヤロー。
  

私は、そこそこグレた人も少ないこの中学校で、
部活も勉強もそれなりの優等生で通っていた。
 

成績はオール5で、部活も全国大会を目指すチームのレギュラー。

それは、陰で努力をしてきたから。自信をもっていえる。



でも、努力をしていようがしていなかろうが、

成績が良いだけで関係なく色々言ってくる女子もいる。


「しずくは頭良くていいねー」って厭味を言われて、

成績が良いことで仲間はずれにされたことも過去にはあった。


そーゆう人達とうまくやるために、それなりにバランス保ちながらやっている。

テストの点数が良くてもみんなの前では絶対に喜んだ顔はしないし、

厭味を言われてもとぼけてニコニコしたり。



…だから、「告白された」なんて、できるだけ知られたくなかったのに。


  
あんまり仲の良くない女子に根掘り葉掘り聞かれて、愛想笑いするしかなかった。

3.4人の女子からの質問って、絶対に答えなきゃいけない雰囲気がある。


 
「その大樹って、東中では有名らしいよ。野球うまくてカッコよくて。
私の塾の友達、大樹くんに告白して振られたって言ってたよ。」
「ずっと年上の彼女がいたらしいよ。」
 
色々色々、大樹くんの話が耳に入ってくる。

他校に友達がいない私は、何も知らないことばかり。

「どーすんの?」ってまたみんなに聞かれて、本当に嫌になった。



それでも、付き合うってことは、なんとなくもう決めていた。


「どうするか、まだ決めてない」って言いながら、

本当は迷ってなんかいなかった。


次の日学校にいくと、
渉が「雫!どうするの?」「どうするの?」と聞いてきてうるさい。


渉とは、今まで一度だって真面目に恋愛の話なんてしたことはない。

渉のことを好きな女子はクラスにたくさんいたけど、

渉がいつも「あのコ超カワイー」という女子は

いつも後輩の学年NO.1だったり 高校生でモデルになった先輩だったりで

‘同じクラス’や‘同じ学年’には絶対にいなかった。


だから渉が好きになる子は、そーゆう風にクラスの女子達なんかじゃなくて

本当にカワイイ手の届かないコなんだなって無意識に思っていた。


恋愛話なんて、「じゃあ次告白しちゃいなよ」とか

「こんな風に相手に話しかけてみたら?」っていうやりとりが楽しいだけなんだから

そーゆう話が弾まないならお互い興味も持てなくなる。


渉は男子だし、口も軽いかもしれないから

恋愛話なんてする対象にもならなかった友達なのに。



なのに、朝から「どーすんのどーすんの」ってうるさい。


仕方なく、
「いきなり告白すると思わなかった!」と話すと
今度は「付き合うの?断るの?」と聞いてくる。


 
ホントはさ、私、付き合ってみようかと思うんだ。
だってどうせ毎日暇だし。
このまま中学校生活過ごしてたって、周りにいる男子と漫画みたいな恋愛なんてできるはずもない。


大樹くんは他校だからなにかあっても校内で冷やかされることもないし、
彼氏がいたら少しは楽しくなるかもしれない。
 
 
ホントはそう思ってた。
でも、それを渉にスグ口にするわけない。


だっていきなり付き合うなんて口にしたら、軽くて嫌な女みたいじゃん。
 
少し考えるふりして、OKしてみよう。


当時の私は、15歳ながらにバカな頭をつかって、

そんなことを考えていた。