とりあえず書こうか。


歴史の始まりは/3で終わりなのでその次。


炎帝/1からです。



ごゆっくり。



僕の学校、県立皐月高校のグラウンドは狭い。


なぜ狭いのわからないがとにかく狭い。


トラックの横幅が100mもないのだ。体育祭もほかの場所でするぐらいだ。


とりあえずトラックの真ん中に立たされて、その周りに四人が立つ。


葉月さんの手には華条の魔術書がある。僕には何となくだが開かれているページの内容がわかっていた。


おそらく召還魔術のページだろう。炎帝の召還するのだろう。


「それじゃ蓮火、はじめてくれる?」


アリスさんの声がグラウンドに響く。


葉月さんはこくりと頷いて魔術書を見る。


appearing a door appearing and carrying out a key appearing and carrying out the ring of destruction .
「現れし扉、現れし鍵、現れし破壊の輪。」


紡がれる言霊。具現化する魔術。


The door of the Samsara which reverses all. The key which nothing can open.
「すべてを覆す輪廻の扉。なにも開けることができぬ鍵」


重ねられる呪文。魔術とは重ねられるもの。


Follow a notice of antiquity. reappear far fantasy.

「いにしえの断りに従え。再現せよ、遥かな幻想よ!」


収束された魔力の塊が一直線に飛んでくる。


そして僕の目の前で爆散した。


視界が0になる。真っ白で何も見えない。


反射的に目を閉じる。それと同時に頭に何かが叩き込まれた。


赤い影。青い刀。金色の剣。そして、赤いマントの人間。


眼を恐る恐る開けてみる。


目の前には黒と白の異形の扉。


これは知っている。魔界とをつなぐ扉であり、契約魔術のときに現れる扉だ。


葉月さんが発言した魔術は召還魔術だった。しかし炎帝をではなかった。


召喚…具現化したのは二つの門。


ヘルズゲートだった。


「父さんが言っていたゲート。あの世とこの世をつなぐ門。あちらとこちらを結ぶ門。それが、ヘルズゲート」


契約をする。それが僕がしたいこと。いや、しなければいけないこと。


ヘルズゲートは二つある。ひとつは聖界に。ひとつは魔界に。


聖界には天使が住む。


魔界には悪魔が棲む。


用があるのは魔界だけだ。僕には悪魔の血が流れている。


いまさら天使になど顔向けはできない。


それに、天使などという脆弱物に力を貸してもらいたくない。


僕は黒い異形のドアに手をかけた。


鍵がかかっている、しかし鍵はない。


持っていないという意味ではない。鍵というのは物体ではない。


僕自身がカギ。父さん、いや初代党首華条泰蔵から受け継がれているもの。


華条の人間であればだれでもこの扉は開くことはできる。


ガチャリとドアが開く。そこには何もなく、一切の闇だった。


黒という表現ではまだ生ぬるい。そこに色なんてない。


ズキリと頭が痛む。闇にでも当てられたか、はたまた悪戯好きの小悪魔が干渉してきたのか。


どちらにせよ気分の良いものではない。僕は視界から黒い扉を外した。


「………名……………」


振り返るが、誰もいない。


当たり前だ。ここは僕だけの空間。


ならば、あの扉の向こうから誰かが、いや何かが話しかけてきたのだ。


普段ならあり得ないと断言したいところだったが今は否定できなかった。


なぜなら、扉から異形の目が。否、眼がこちらを見ていたからだ。


知っている。あれが、あれこそが魔界の王。


すべての魔族の頂点に立つ生き物。


いや生き物と定義することすら間違っているのかもしれない。


炎帝と呼ばれた。


炎帝と呼ばれている。


悪魔の王、魔界の王、地獄の王、冥王、破壊の象徴。


その名は………。


「我の名はフレオ・カオスなり、其の名はなんという」


そう、王は問うた。


「僕は、華条、アキラだ。お前の力を貸せ。僕は、お前と契約する」


そう、僕は答えた。


王は黙り込んで、その姿を消した。


僕は何もしないし、何も言わない。


炎帝は断れない。それが誓い。初代党首華条泰蔵がかせた使命。


そして目の前にカラリと言う音をたてて何かが落ちた。


細長く、先端がとがっているそれは見た目刀だが、これは刀であるが刀ではない。


異形すぎる。形というものが成り立っていない。


ただ切るための兵器。


ただ死を与える武器。


僕はそれに手を伸ばした。すんでのところで声がする。


「我の化身、それは我であり我ではない。名をアルム=ヘレギという。それを手にするということは我と契約するということになる。その覚悟があるのなら、恐れずして掴め。それが汝の道しるべとなろう」


僕は迷わず、アルム=ヘレギを手に取った。


その瞬間。世界が壊れた……………。






以上炎帝/1でした。



一か月かかりました。


次は二ヶ月後ぐらいになります。