とりあえず書こうか。


歴史の始まりは/3で終わりなのでその次。


炎帝/1からです。



ごゆっくり。



僕の学校、県立皐月高校のグラウンドは狭い。


なぜ狭いのわからないがとにかく狭い。


トラックの横幅が100mもないのだ。体育祭もほかの場所でするぐらいだ。


とりあえずトラックの真ん中に立たされて、その周りに四人が立つ。


葉月さんの手には華条の魔術書がある。僕には何となくだが開かれているページの内容がわかっていた。


おそらく召還魔術のページだろう。炎帝の召還するのだろう。


「それじゃ蓮火、はじめてくれる?」


アリスさんの声がグラウンドに響く。


葉月さんはこくりと頷いて魔術書を見る。


appearing a door appearing and carrying out a key appearing and carrying out the ring of destruction .
「現れし扉、現れし鍵、現れし破壊の輪。」


紡がれる言霊。具現化する魔術。


The door of the Samsara which reverses all. The key which nothing can open.
「すべてを覆す輪廻の扉。なにも開けることができぬ鍵」


重ねられる呪文。魔術とは重ねられるもの。


Follow a notice of antiquity. reappear far fantasy.

「いにしえの断りに従え。再現せよ、遥かな幻想よ!」


収束された魔力の塊が一直線に飛んでくる。


そして僕の目の前で爆散した。


視界が0になる。真っ白で何も見えない。


反射的に目を閉じる。それと同時に頭に何かが叩き込まれた。


赤い影。青い刀。金色の剣。そして、赤いマントの人間。


眼を恐る恐る開けてみる。


目の前には黒と白の異形の扉。


これは知っている。魔界とをつなぐ扉であり、契約魔術のときに現れる扉だ。


葉月さんが発言した魔術は召還魔術だった。しかし炎帝をではなかった。


召喚…具現化したのは二つの門。


ヘルズゲートだった。


「父さんが言っていたゲート。あの世とこの世をつなぐ門。あちらとこちらを結ぶ門。それが、ヘルズゲート」


契約をする。それが僕がしたいこと。いや、しなければいけないこと。


ヘルズゲートは二つある。ひとつは聖界に。ひとつは魔界に。


聖界には天使が住む。


魔界には悪魔が棲む。


用があるのは魔界だけだ。僕には悪魔の血が流れている。


いまさら天使になど顔向けはできない。


それに、天使などという脆弱物に力を貸してもらいたくない。


僕は黒い異形のドアに手をかけた。


鍵がかかっている、しかし鍵はない。


持っていないという意味ではない。鍵というのは物体ではない。


僕自身がカギ。父さん、いや初代党首華条泰蔵から受け継がれているもの。


華条の人間であればだれでもこの扉は開くことはできる。


ガチャリとドアが開く。そこには何もなく、一切の闇だった。


黒という表現ではまだ生ぬるい。そこに色なんてない。


ズキリと頭が痛む。闇にでも当てられたか、はたまた悪戯好きの小悪魔が干渉してきたのか。


どちらにせよ気分の良いものではない。僕は視界から黒い扉を外した。


「………名……………」


振り返るが、誰もいない。


当たり前だ。ここは僕だけの空間。


ならば、あの扉の向こうから誰かが、いや何かが話しかけてきたのだ。


普段ならあり得ないと断言したいところだったが今は否定できなかった。


なぜなら、扉から異形の目が。否、眼がこちらを見ていたからだ。


知っている。あれが、あれこそが魔界の王。


すべての魔族の頂点に立つ生き物。


いや生き物と定義することすら間違っているのかもしれない。


炎帝と呼ばれた。


炎帝と呼ばれている。


悪魔の王、魔界の王、地獄の王、冥王、破壊の象徴。


その名は………。


「我の名はフレオ・カオスなり、其の名はなんという」


そう、王は問うた。


「僕は、華条、アキラだ。お前の力を貸せ。僕は、お前と契約する」


そう、僕は答えた。


王は黙り込んで、その姿を消した。


僕は何もしないし、何も言わない。


炎帝は断れない。それが誓い。初代党首華条泰蔵がかせた使命。


そして目の前にカラリと言う音をたてて何かが落ちた。


細長く、先端がとがっているそれは見た目刀だが、これは刀であるが刀ではない。


異形すぎる。形というものが成り立っていない。


ただ切るための兵器。


ただ死を与える武器。


僕はそれに手を伸ばした。すんでのところで声がする。


「我の化身、それは我であり我ではない。名をアルム=ヘレギという。それを手にするということは我と契約するということになる。その覚悟があるのなら、恐れずして掴め。それが汝の道しるべとなろう」


僕は迷わず、アルム=ヘレギを手に取った。


その瞬間。世界が壊れた……………。






以上炎帝/1でした。



一か月かかりました。


次は二ヶ月後ぐらいになります。



はい。忘れてました。


いえ厳密に言うと忘れてたのではなく、覚えてたけど更新する気に慣れなかった。じゃなくて時間がなかった(笑)


ともあれ、前回は歴史の始まりの/2まで書きましたので、当然のようにその続きを。



これは作者の願望でもあるのですが、誰かコメント書いてください。


誰にも見られていないと気分が落ち気味です。



では、本編のほう。





/3



蹴飛ばされた僕は必死でこけるのをガマンして、中を見渡した。


僕は職員室という空間に、高校になって入ったことがなかった。一番新しい記憶でも、中学二年のとき。


部屋の構造なんて知らないし、どんな匂いがしたとかもろくに覚えていない。


ただイメージとして、机がたくさん並んでいて珈琲のにおいがする。そんな空間であったと思う。


少なからず、今の皐月高校職員室はそんな空間とはかけ離れていた。


部屋中に響く人気バラードソングと、ところどころで聞こえるラジオの音。上品な香水の匂い。クラリとこないのは中にいる人物が全員同じ香水を使っているからであろう。


「早く行きなさい。入り口で止まられたら邪魔よ。まったく、今まで何を教わってきたのだか…」


金髪の少女は相変わらず無茶なことを言う。行き先も知らない僕に”早く行け”というのだから。


ドンと背中を押された。振り向くと不快そうな顔をした、彼女がいた。


「行き先を言うのを忘れたわ。別に…ただうっかりしただけよ」


何かが聞こえたが無視した。


そのままぐいぐいと押して一番奥の席に、乱暴ではあるが案内した。


一番奥の席。それは一番電話がかかってくることが多い、教頭の席だった。


識別した理由は、ネームプレートだった。しかしそこにいたのは、うっすら禿げた教頭ではなかった。


緑色の作業用ジャージをきた、これまた美人な女性だった。


髪の色も瞳の色もまた緑だった。服の色の溶け込まないのその長い髪は、後ろで乱雑に縛られていた。


「はじめまして、華条アキラ君。私はアリスミール=クゥ=マイアリア。長いからアリスでいいわ」


会ってもいない僕の名前を言って、緑髪の女性はアリスと名乗った。


何故ここに僕をつれきたのかと聞こうとしたら、金髪の少女に阻まれた。


「アリス。このクズにあったのは今がはじめてよね。話を通していたって言うのは嘘ね?さっき自殺しようとしていたわよ。このクズ」


誰か弁護士を呼んでくれ。誰か僕の味方をしてくれる人物はいないのだろうか。


なんだか僕の呼び方があの少女に限って、クズとなっているような気がする。


「蓮火。せっかく来てくださった人に対してそれは失礼でしょ。人には名前があるのだから、それで読んであげないと。ね、華条君?」


僕に話を振るな。無茶振りもいいトコだ。それと来たのではなく強制連行ですよ、アリスさん。


などと思いながら、机の上を見た。女性としては珍しくあまり整理整頓されていない。苦手なのだろうか。


”ヨーロッパ消滅”、”消えた北海道”、”テロ組織いまだ発見されず”などの最近の新聞が広がっている。


世間では北海道を消したのも、ヨーロッパを海の底に沈めたのもテロ組織が行ったものとされているが、果たして事実なのだろうか。


「うん。君は勘がいいね。正解。今回の事件の黒幕は、テロ組織なんてものじゃない。何か別の組織よ」


アリスさんが何を根拠にそんなことを言うのかはわからないが、その口調ははっきりしていて、確信しているようだった。


にしても、そんな簡単に国を沈めるようなことができるのだろうか。


「そうね。確かに現実味を帯びた話ではないわね。国を沈める。その行為は莫大な費用と、膨大な装置、果ては無尽蔵のエネルギーが必要でしょうね。私たちでたとえるのなら、魔術使いではなく、魔法使いでしょうね。でも今回は違う。魔法じゃなくて化学、いや、科学か。人工的に地震を発生させて、大陸さえも無に返す兵器。それがこの話で黒幕が使っているものよ」


はて、さっきから僕は無言で、一言も言葉を口にしていない。なのに、会話が成立しているような気がするぞ。


ん?いつの間にやら部屋中に響いていたバラードが停止している。誰かが止めたのだろう。


いいところだったのに、という私情はさておき職員室中の物音が消えてシンと静まり返っていた。


まさかとは思うが、アリスさんがこの話をするのは初めてなのだろうか。


「あれ?私この話したことなかったっけ?」


天然だこの人。自分で行ったことを忘れるなんて。


「失礼よ、華条君。ま、いいわ。じゃあついでに言っておくわ。私たちがあなたを必要としている理由を教えましょう。あなたの力がほしい。いえ、正確にはあなたが使える契約魔術。それによって召喚される魔獣。その中でも最強と謳われる、炎帝の力がね」


カタカタとキーボードを打つ音もなくなってしまった。誰もがアリスさんの話を聞いているという中で、僕はこの緑髪の女性を敵として認識し始めていた。


確かに、華条家の魔術は召喚魔術に長け、魔界や天界からなにかを召喚し我が力とする一族であるのは間違っていない。


ただ、一族の中でしかそれは語られていない。ましてやあの”炎帝”の話など、父さんとの間でもあまり話したことがないのだ。


それを彼女は、アリスさんはさも当然のように言い放ったのだ。


「え、炎帝って。まさか……」


金髪の少女が動揺している。フム、彼女の母は二十年前にこの皐月町にいたようだね。出なければ炎帝の名すら知らないだろう。


「アリスさん、どこでそれを聞いたのかは知りませんけど炎帝は二十年前に僕の父、華条暁斗が契約した魔獣だ。確かに僕は華条の人間だ。でも召喚をする媒体がない。それに…」


「生きているのかもわからない生物を召喚するのは危険だ、と?」


「なっ!?」


確かに、炎帝は、二十年前に消滅したという話を父さんから聞いた。だから、私は身に着けていないとまで言ったいたのだから本当だろう。


「知るはずもない、ですか?それにしても君は勘がいいなぁ。私が普通の人間ではないと疑い始めているね。うん。間違ってないよ。君の考えていることは」


普通の人間ではないと、彼女はサラリと言う。本人が言うのだから本当なのだろう。


僕からしてみれば普通も何も、自分が普通ではないのだが。


魔術使い。僕のような人の間ではそう呼ばれる。その名のとおり魔術を使うものたちのことだ。


「へぇ。ま、延ばしても埒があかないし。私はご想像のとおり、魔術使いですよ。マイアリア家頭首。介入魔術に自信があるのよ。こと、読心魔術に関しては」


介入魔術。その言葉を聞いて父との魔術鍛錬の話を思い出した。


『いいかいアキラ。この世の人間には二種類ある。魔術を知るものと知らないもの。いくら強大な魔力を持っていたとしても、魔術を知らなければ宝の持ち腐れというものだ。その点から言うと攻撃魔術、いわゆる前線に立って戦う魔術師。通称ブローミルと呼ばれるものはさほど脅威ではない。戦術は戦略にはかなわないからね。でも裏に控える魔術師。自らは手を下さずありとあらゆる手段を使い、ブローミルを援護する魔術師には気をつけろ。中でも有名なのは介入魔術。介入魔術とは精神破壊魔術とも呼ばれ、他人の精神に進入する危険な魔術だ。入られた魔術使いは過去を見られ、行動を読まれ、果ては内側から精神を破壊される。簡単に言えば、廃人にしてしまうんだ。他にも読心魔術や、過去視などがあるが、やはり一番気をつけなければいけないのは精神破壊魔術だろうな』


まずいな、この距離ましてや彼女の術の標的は僕だ。いつ再起不能にされるかわかったものじゃない。


僕は一歩後ろに下がった。


「安心してアキラ君。別に君を捕って食おうというわけじゃないし、さっきも言ったでしょ。君の力を借りたいと。ま、手を貸すかどうかは君次第だし、強制もしない。でもこれだけは覚えておいて。この地球にいる限り、安全な場所なんてないの」


くそ、こんなの選択肢なんてはじめからないじゃないか。


協力しなければいつか起こる天変地異による死。


協力すればこの状況を打開できるかもしれない。


二つに一つ。僕は…。


「協力しよう。可能性が少しでもあるほうを選ぶ。それで世界が変わるのなら」


アリスさんは椅子から立ち上がって僕の手を両手で包み込んだ。


「ありがとう。私たちは華条アキラを全力で歓迎するわ。それじゃみんな自己紹介をよろしく」


といってまた椅子に座ってしまった。


「私は葉月蓮火。魔術使い。それだけよ、あんたみたいなクズとこれ以上話すことなんてないわ」


金髪の少女、葉月さんはそっぽを向いた。握手も無視だ。


アリスさんに聞くと本人他人に触られるのが嫌いならしい。


とっとっととリズミカルな音を立ててこちらにかけてきた少女。


葉月さんや僕と同じく、皐月高校の制服を着ている黒のツインテールの女性は僕の目の前で止まって。


「私は鈴音鶴来。よろしくね、華条君。あ、得意なのは料理と波動魔術よ」


まったく、料理と魔術を同じもののように言うな。何気に怖い。まさか、魔術で料理をっ!?


「ボクは朝比奈遥子。よろしくね。ボクはみんなと違って魔術使いじゃないけど、機械には強いの。みんな機械だけは弱くって、パソコンすら触れないのよ。雪未さんなんて、マウスを動かすのに体も動くんだもの」


女性にしては珍しいボクという一人称を使っている赤のショートカットの少女。服装は私服なので、中学生といったところだろうか。ちなみに、判断基準は胸。


そういえば話にあった雪未さんとは僕の横でお茶をすすっている、着物姿の女性のことだろうか。


「おっと、拙者の番かな。白乃雪未だ。そなたの父上とは少し顔見知りでな。なるほど、暁斗が言っていた息子がお主か。うむ、よろしく頼む」


なんというか、古風な話し方だな。返事がしづらい。


「あ、そうだ。言い忘れたことがあったわ。私耳が聞こえないから、後ろから声をかけるときは肩をたたいてからお願いね。じゃないと気づかないから」


なるほど、だから読心魔術を常時使っているのか。それは辛いだろう。


ちょうど話が終わったところで、再び職員室のドアが開かれた……。


カツンと綺麗な音を立てて入ってきた女性。葉月さんはもちろん、白乃さんよりも年上。


まるっきり大人の雰囲気だ。


「あら、もういらっしゃってるの?アリス。これ、頼まれたものよ。それとも本人に渡したほうが早いかしら?」


長く腰まである赤い髪。何故だろうか、どこかであったような気がする。


僕はその女性の前に立って。


「華条アキラです。よろしくお願いします」


「知ってるわよそんなこと。それより久しぶりね、アキラ君?五年ぶりだったかしら?」


はて、確かに見覚えはある。彼女も僕のことを知っているらしい。


一言で言おう。


誰だ?


「申し訳ないですが、僕は貴女とどこかでお会いしましたでしょうか?」


「何惚けたこと言ってるのかしら。それとも何、私の顔を忘れてるのかしら?この風月藍梨の顔を」


風月…藍梨…?どこかで……!!!


「あ―――――。藍梨さん!お久しぶりです。以前は五年前の正月でしたっけ。いやぁまだ皐月町に入るとは思いませんでしたよ。すいませんね。父は実家に戻ってまして。で、本日はどのような話を?」


風月藍梨。十年前悪魔の産物で僕の父、華条暁斗とともに戦った女性。風月茜の妹さん。


いやぁ懐かしい。髪伸ばしたのか。前は肩にかかる位だったのに。


「私はここの保護者みたいなことをしてるわ。それと、これを貴女に渡しにね。ハイこれ。茜の遺品から持ってきたわ。これからの貴女には必要なものでしょ」


白く細い指が持っているのは一冊の本。もともとは白い本だったのだろうが、今ではすっかり色が落ちて茶色くなっている。


十年前。華条暁斗が使用した魔術書。それが彼女の手にある。


華条アキラは最愛の人であった風月茜を死なせてしまった。己の無能ゆえに。


だから彼は魔術を捨てた。二度と悲しむ人がいないようにと。


そのとき、華条暁斗は自分の魔術書を死んだ茜さんに渡した。


それを藍梨さんは受け取って、茜さんの遺品にしたと聞く。


わざわざそれを持ち出したということは……。


「何かが動いてるんですね。藍梨さん。アリスさん、僕は何をしたらいいんですか?教えてください。僕は十年前のように誰かが泣くようなことにはしたくないんです!」


どんっと僕はアリさんの机をたたいた。


もう嫌なんだ。もう…、二度と……。


なぜ、今頃になってこんなことを。


「誰かが泣くようなことか。口を挟むのは好きではないのだが、すでに幾万という人が死んでいるようなのだがな」


後ろの白乃さんが口を開いた。


「確かに…。でもこれ以上被害を出さないように僕は…」


「とりあえずその中身確認してもらえるかしら?一応藍梨が確認してるけど」


僕は魔術書を開き、一番初めの行を読んだ。


        Arius

「初級魔術:アリウス」


英語で呪文を詠唱する。言っておくが本にカタカナで呪文が書いているわけではないので、必然的に英語そのものを読む羽目になったのだ。


ちなみに英語の成績はいい。


ボンと足元で音が鳴って黒い煙が立ち上る。


見れば小さなクレーターが足元にできている。


なるほど射出型の魔術か、それに周りか少し焦げているのを見ると熱関係か。


「本物のようね。じゃソレ貸してくれる?」


アリスさんが何かを納得したような様子で僕に手を伸ばす。


僕は渡すのを躊躇ったが結局葉月さんに取り上げられて、アリスさんの手に渡ってしまった。


葉月さん特有の目で威圧をされる。


無駄な抵抗は二度としないようにしよう。

パラパラとページをめくるアリスさんを尻目に僕は窓にもたれかかった。


外は静かだ。誰もいないのだから当然なのだが、なんだかまるで他人事のように考えてしまう。


「あったわ。それじゃあ……」


めぼしいものでも見つけたのか、アリスさんは立ち上がって魔術書を葉月さんに手渡した。


葉月さんはそれだけで納得したのか、アリスさんが見ていたページを開いたまま職員室を出て行ってしまった。


「それじゃみんな、グランドに行くわよ」


何ともやる気を出させない、掛け声だったがここでじっとしているわけにもいかないので、僕は窓から離れあのせまっちぃグランドに行こうか。

ぐへ、疲れたぜこんちきしょう。


三日かかっての作業でした。とりあえず歴史の始まり/3が終わりました。つーか、なげぇ。


はい。約束どおり、続きを更新します。


えー先日の日記を見なければ話の内容が全くわからないため、一通り目を通してから、お読みください。



しかし、このブログの検索ランキングの一位が”エミヤ 小説”って。


誰だそんなマニアックなもので検索してるやつは。


と、まぁページ稼ぎをしている白銀ノユキでありますが。



先日書き忘れたことを書かせていただきます。



プロローグから始まったあの小説。実はタイトルがありません。


はい、自分でも不便なのですが、いまだに思いつかない始末。


考えながら、fate/stay nightをしていましたが、当然のように思いつかないのでした(バカス)




ま、そんな私事は置いといて、言わなければいけないことがあります。




仮に今回の小説の名を”A”と名づけて話を進めます。


私が書いている小説は4つ。


それぞれ、requiem、悪魔の秘宝、灰色のソラの下で、そしてAですね。



時系列順に並べると、灰色のソラの下で→requiem同時期悪魔の秘宝→Aになります。


あ、ちなみに悪魔の秘宝というのは世界規模の魔術戦争。灰色のソラの下で、はrequiemの前の話。噛み砕いて


言うと主人公、覇蛾猟が中心のラブコメです。


さらに説明すると、Aは悪魔の秘宝から二十年後の話です。


とまぁ説明はここまでにして、本編を書きましょうか。





歴史の始まり/1


活気がない町、生気が感じられない商店街。


まだ11時を回ったばかりなのに、皐月高校までの通学路には、誰一人いない。


テレビの音も掃除機をかける音もしない。


―――そして学校。


校門には誰も立っておらず、グラウンドにも誰もいない。


僕は迷わず校内に足を踏み入れた。


教室が無数に並ぶ。その中からは教師の声も答えを発言する生徒の声もしない。


それはこの高校、この町つまり皐月町が死んでいるという証拠だった。


空っぽな教室の前を通り、上り慣れた階段を上がる。


そして僕はこの世で開ける最後の扉に手をかけた。


風が体を突き抜ける。今日は風が強いらしい。天気も人生最後の日の天気は日光の少ない曇天だった。


目の前にはやけに低いフェンス。


昼食のときによく来たそこは、屋上だ。


足が勝手にフェンスのほうに進む。やるべきことはひとつ。


何も恐れることはない。


何も残すことはない。


簡単だ。フェンスを乗り越えた足が止まる。



この掴んだ右手を離すだけ。


そしてそっと、右手をフェンスから離した。


/2


離そうとした右手は、いまだにフェンスを掴んでいた。


理由は簡単。背後から呼び止められたのだ。「この弱虫、と」


呼び止められたとは言いがたい罵倒だったが、この世に残す未練としては十分だった。



なぜこの僕を呼び止めたのかと。


「誰だ!?」


あぁ自分でもありきたりな台詞をはく。


返事がない。もしや、僕の空耳だったのだろうか。


振り返る。それと同時に風が唸る。


ドアの前には確かに人がいた。それも僕と同じ皐月高校の制服を着た女性が。


美少女というのは彼女のことを言うのだろうか。


風にたなびくのは金色の長い髪。わずかな日光が彼女に当たる。


少女が身につけているネックレスが光に反射する。


僕より少し背の低い彼女の眼はきつく、睨み付けている。


「この状況で”誰”とは、クズらしい発言ね。説明するのも面倒だし、簡単に言うわ。そこで行おうとしていること。


今すぐやめなさい。あなたはいいかもしれないけど、困る人もいるのよ。わかったらこっちに来なさい。このクズ」


口調が荒い。僕は何かしたのだろうか。ちなみに彼女の姿を見たのはこれがはじめて、つまり初対面である。


とりあえず、言われたとおりにしよう。


しかしクズとはよく言ったものだ。


少女は僕を見下している。体格差からして僕が見下すはずなのだが、彼女は下から僕を睨み付ける。


金色の瞳は僕に向けて敵意を発している。


引き止めた理由ぐらいは聞いていいだろう。


「一応聞いておこう。何故僕を引き止めた」


あれ、さっき彼女は必要としているって言ったっけ。ではこの質問は愚問である。


「面倒。説明するのは嫌って言ったでしょう。クズはクズらしく、人に流されればいいのよ。意見を持つなんてクズ


には許されないわ」


くれぐれもお間違いないようおねがいしたい。僕の名前は決して”クズ”なんていう愉快な名前ではない。


などと弁解している間。彼女がおとなしくしているはずなどなかったのである。


無言のまま僕の右手(正確には服の裾)を掴み、屋上から引きずり出す。


そのままスピードを落とすことなく、階段を駆け下りる。


危険だ。いつ足を踏み外してもおかしくない状況で、躓きさえしなかった僕を誰か褒めてくれ。


四階から一階。言うまでもないがノンストップ。彼女はどこに向かっているのだろうか。


唐突に金髪の少女が方向を変える。本来ならば階段を下りたら、グラウンドへの道があるだけなのだが、階段の


裏には施設館がある。印刷室をはじめとする、教師が使用する館である。


使用頻度が低いのと、生徒が使用しないということもあって館というのは少し大げさである。


彼女は金色の髪を翻して迷わずその館に向かって足を進めた。無論僕の右手(しつこいようだが服の袖)と掴ん


だままで。


「ちょ、ちょっと。まってくれよ」


「……」


無視ですか。シカトですか。私の発言はすべて却下と。


ふと、足が止まる。えーと、僕の足が止まるということは、彼女の足が止まったと同じことで。?あれ、わかんなく


なってきた。


とりあえず。少女の目的地が職員室、という部屋ということだ。


「はいれ」


拒否はゆるさないと…。こえぇ。


「入りなさいって言ってるの!」


怒られた。入れって言われてから2秒でキレられた。


何故?英語で言うとWhy?彼女に怨まれるようなことを言っただろうか。


がらりとドアが開く。一応言っておこう開けたのは、他ならぬ僕だ。


なのに…。僕は進んでドアを開けて入ろうとしていた僕を、後ろから蹴り飛ばされた。


「早く入りなさいって言ってるの!!」


金髪の少女はあろうことか、僕の尻を足で蹴り飛ばしたのだ。


その勢いで僕は、職員室という空間に足を踏み入れたのであった……。




はーいおしまいです。ごめんなさい。二時間ほどパソコンの前に座りっぱなしでした。


取り合えず、歴史の始まりの1が終了です。


予定では明日に2を更新します。長い間お読みになってありがとうございました。