2025年の年末。南カリフォルニアの砂漠地帯にある瞑想センター「ダンマ・ヴァッダナ(Dhamma Vaddhana)」の体験記。


瞑想の辛さは、合宿に来る前は、座り続ける事の痛み、じっとしている辛さ、かと思ったが、実際に始まってみると、それらは些細なことに過ぎない。本当の試練は、全く別のところにある。


瞑想ホールには色々な種類や形のクッションが用意されていて、自分に合うものを選べる。そのおかげか、座り続ける事に私自身は思っていたほどの苦痛は感じなかった。ただ、体質や慣れもあるようで、隣の席にいた子は足首を痛めて、とても辛そうにしていた。

 

ここでは「何時間もぶっ通しで座り続ける」というストイックなイメージだが、全員でホールに集まる必修の瞑想は、1時間ごとに必ず休憩がある。逆に、もっと長時間座りたい人には、少し物足りないだろう。

 

そんな風に、体の方の準備は万端だったが、私の本当の戦いは「頭の中」で起きていた。

 

普段の私はすこぶる快眠なのだが、この合宿に参加する直前から、なぜか急に寝つきが悪くなった。一晩に3、4時間ほどしか眠れない日が続き、「合宿を前に緊張しているのかな?」と思った。

ところが、合宿が始まってからも一向に眠れない。念のために持参した睡眠導入剤を飲んでも、夜中に目覚めてしまう。


何しろ、頭の中で誰かが永遠に私に話しかけてくる。まるで自分専用のラジオ番組が、一日中ノンストップで流れているかのようだ。朝起きた瞬間から、瞑想中、食事中、そしてベッドで目を閉じている時まで、そのおしゃべりは続く。かなり苦痛だ。

 

瞑想中は「無視、無視」と自分に言い聞かせているので、脳内の「ヤツ」も必死だ。私の気を引こうと、次から次へと興味のありそうな話題を繰り出す。その巧妙な罠にハマり、ふっと意識が持っていかれる、その繰り返し。
嫌な記憶を掘り返されたり、愛犬のことを話題に出して不安にさせられたり。最初の3日間は本当にひどい状態で、「お願いだから消えてくれ!」と祈るばかりだった。

 

ふと周りを見渡すと、他の参加者も険しい顔をしていた。きっと、皆の頭の中でも同じような事が起きているんだろう。

5、6日が過ぎる頃、ようやく心が落ち着きを取り戻し、眠れる時間も少しずつ増えてきた。

 

頭のおしゃべりの次に辛かったのが「睡魔」との戦いだ。とにかく、眠い。
私の前に座っていた人は、最初の数日間、眠りこけて体が激しく揺れていた。いつかこちらに倒れてくるのでは?とドキドキしたが、実は私自身も、かなりの確率で船を漕いでいた。

 

あまりの眠さに、先生との個人面談で「ものすごく眠いのですが」と相談したところ、先生は即答で「みんな眠いんです」。

 

そんな極限状態の瞑想中、なぜか頭の中でずっと流れていた曲があった。
サザンオールスターズの『勝手にシンドバッド』だ。

なぜこの曲なのか? 途中でその理由に気づき、一人で笑ってしまった。
サビの歌詞、「今何時? そうねだいたいね」「今何時? ちょっと待ってて」「今何時? まだ早い」
長い瞑想の最中、私の心は常に「あと何分? まだ終わらないの?」と思い続けていたから。

自分の脳が繰り出した絶妙な選曲に、👍を押してしまった。

 

(続く)