邦題:野いちご  原訳:宝石店

61点。

 

邦題は英題を訳したものです。人間が老いて身近に死を感じる時、ふと、己の人生を振り返ると、自身が為した貢献よりも、為せなかった後悔の方が先に来る真理と、時を超える普遍的なテーマを扱った正に、人生を辿るロードムービードラマ映画。

 

 

~あらすじ~

年老いた教授・イサクが長年の研究を認められ、名誉博士の称号を贈られることに。ストックホルムから授与式が行われるルンドへの道中、イサクはこれまでの自らの人生を振り返るとともに、ヒッチハイカーの少女など、さまざまな人との出会いを経験していく。

(※映画ナタリーより抜粋)

 

 

以下、見どころ。

 

 

□死ぬことをイメージした悪夢。

時計の針が無いということ。文学的な表現と、白黒映画だからこそ映える美しさをも感じる描写は、感応する人間にはとても恐ろしい映像だと想像するもの。人によっては「エルム街の悪夢」よりもよっぽど。

 

 

□夫婦喧嘩は犬も食わぬ。

途中で同乗する夫婦の神経を逆撫でする物言いや表情は、間違い無く、他人を不快にさせる。どちらの味方をするものでも無いけど、お互いに必要なものは何か、自らもそういうことを人にしてしまってはいないか?を考えさせられるシーンであり、思い当たる人なんかはここで車から降ろされちゃうけど、妻は謝罪が出来る人なのでやり直せると信じたい。何にせよ、この人たちはまだ道半ばだ。

 

 

□お金なんかでは無い、行為(好意)に一貫したプレゼントの描写。

野いちごから始まって、耳が遠い叔父さんにお歌のプレゼント。無償の給油にオイル交換。過去をなぞるように若者たちからも、野の花の束だったり、お歌をプレゼントされる。それは原題が示す宝石に、勝るとも劣らない輝きを放つ。

 

 

□総括。

老人の人生は終幕が近い。けれども、それで終わりでは無いと思えたこと。若者たちと人生のほんの少しの時間を共有したことで、見えないけど何かを成し遂げたのかも知れない。そして、若者たちはこれからも人生を行く。彼らの未来も宝石の如く輝いているようです。これは、静かに死を受け入れていく老人とは対照的に描いたことで広義の意味で、人間が生きていくことを考えさせられるもの。

人の一生とは輝ける宝石であると、一つの解が提示されたのだと考えます。

 

 

その時は解らなくても、後からじわじわ来るタイプの名作映画でした。

 
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