邦題:ブラック・スワン

73点

 

クラシックバレエの中でも一二を争う有名な演目 "白鳥の湖" 。仮にバレエを全く知らなくても、ナタリー・ポートマンの怪演で惹き込まれちゃうサイコロジカルホラー。

 

当映画に全く関係ありませんが、私は過去に、チャイコフスキーのCDを聴いていた際に鼻血を大量に出して、親がひどく心配し、病院に連れて行かれた事があります。

 

 

~あらすじ~

ニューヨークのバレエ団に所属するニナ(ポートマン)は元バレリーナの母とともにその人生のすべてをダンスに注ぎ込むように生きていた。そんなニナに「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが巡ってくるが、新人ダンサーのリリー(クニス)が現れニナのライバルとなる。役を争いながらも友情を育む2人だったが、やがてニナは自らの心の闇にのみ込まれていく。

(※映画ドットコムより抜粋)

 

 

以下、ネタバレ。って言うか、感想。

 

 

昨今では何でもかんでも鬱映画って言われるけど、これは違います。バレエに完璧を求めた女性の物語であって、その過程を出来るだけ丁寧に描いて、説得力を持たせていると言う事であり、それを、信頼出来ない語り手のニナ視点のみで描くので、目に見えて奇妙な事が起きるといった構図です。

 

 

彼女は繊細過ぎました。どうしても、白鳥の女王を演じたい事から、トマに色仕掛けをした事が負い目になって、素直に結果を喜べず、無意識に自分を責めて、鏡に自分自身を罵る言葉を書いてしまうくらい。

そんな白鳥に対して、黒鳥に求められるものは人間であること。これは相反するものであるから、表現の世界はとても厳しくて残酷ですね。

 

指導者トマはバレエに必要であるならば、それこそ、何でもやる人間として描かれていますが、最終的に一線を超えないところは「セッション」のフレッチャーと違くて良いと思いました。ただ、彼のその境界線なんて、純真なニナには到底理解出来ないでしょう。

 

リリーは顔がキツイニナから見れば、自分に無いものを持っている(と思っている)ライバルなので、蹴落とすべき対象です。ただ、最後の言葉から同じ表現を追求する同士だったと読めます。友達になりたかったのも素直なとこでしょう。

 

母親はニナから見れば、自身が身を置く厳しい表現の世界からとうに逃げ出した人間であり、ある種の足を引っ張る存在の様に描かれています。本来、白鳥の女王として立つ初日の舞台なんて、自分の夢を託し、娘に無理矢理にバレエを指導して来たのであれば、引き摺ってでも連れて行くでしょう。彼女がとった行動は全くの正反対。

ニナを閉じ込めて行かせない様にしたのは、バレエより娘を選んだことを一切、後悔していない事の表れです。同時に、娘を深く愛しており、今までも事あるごとにニナに八つ当たられていたんだろうなと思いました。つまり、逆なんです。

 

 

同じ監督なら「マザー!」の方が遥かに面白いけど、あれは万人にお勧め出来ないしそれなら当映画の方が受け入れられ易いかと思いました。

 

最後、ニナは死んでないけど、復帰はすぐには難しいでしょう。一瞬でも最高の表現が出来れば彼女にとっては本望なのかもしれません。例え、精神が崩壊しようとも。この辺はサイコホラーですね。

 

 

ブラック・スワンの意味合いは大仰。そこまでの意図は無いでしょう。

 
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