邦題:アザーズ 原訳:他人
70点。
ニコール・キッドマンの緻密な演技を愛でるスーパーナチュラルゴシックホラー。
血も出ない、誰も死なない、格式の高いお上品な映画です。残念だね!
これで夫が帰って来なければ、家族皆で見ても良いのにな。リチャード邪魔。
舞台設定が秀逸で全体的に閉塞感が漂う、明暗を巧みに使い分けて、重厚な雰囲気を醸し出し、ねっとりとした恐怖を演出しています。
以下、ネタバレ。って言うか、考察。
この映画を語るとどうしても、コンセプトが良く似た下記映画の話題が出ます。
分が悪いですね。
「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」に抜かれるまで18年間、歴代ホラー映画興行収入ランキング首位の映画と比較されるとか普通に厳しい。
言っても、どうしてもオチの二番煎じ感を否めませんものね。
年代の確定は出来ませんが、夫が戦争へ向かった事から、①第二次世界大戦中
②終戦後の現代? の2つの時間軸となります。
舞台は現在の英領ジャージー島、ジャージー牛はここが原産の乳牛です。
フランスからの方が近く、イギリスの様でイギリスで無い独特な文化を持っている島です。第二次世界大戦中にドイツ軍に占領された経緯があるので、併せて、
年代①は1940~1945年と推測します。
主演は、ブルース・ウィリスより、普通に、ニコール・キッドマンが好き~、なのでアザーズに一票。神経質に見せる演技は上記背景からも当然の事ですし、暗がりでも映える顔立ちとゴシックな衣装を着こなすスタイルで一流の風格が漂っています。
フィオヌラ・フラナガンもはまり役です。男の子役と帰って来たお父さんのメイクが狙い過ぎ。ま、アザーズですからね。
書類が宙を舞うフレームは一種の感動すら覚えました。視点が変わると言う意味での暗闇から光の演出も効果的です。散りばめた伏線も綺麗に回収していて全体的に丁寧な映画だと思いました。ですが、丁寧な映画であるが故に、驚愕のエンドに繋げる為に描けなかった部分が非常に勿体無い様に思います。
例えば、最初のシーンでグレースが目覚めた後に慌てて二人の子供を抱きしめに行く描写を差し込むとか、そもそも、時代背景を理解していても、グレースがアザーズな理由には繋がらないし、劇中でも触れていません。加えて、リディアとタトルも登場人物としては弱いし、チャールズのシーンが極端な話、無くても大きく影響が無い事も手伝って、緻密では無いなと言う感想です。
ラストシーンのビクターが館を見上げるシーンが印象的で、エンドはどちらとも取れる内容になっております。
仮に、リチャードが帰って来たシーンが一切合切無かったら、最愛の夫の帰宅を家族で待つと言う含みも持たせられて良いのですが。求め過ぎでしょうか。