邦題:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

73点。

 

ピエロと言ったら、GOGOランプかランランルー♪程度しか思い付かない、スーパーナチュラルホラー。

絵面が酷い割にグロは控えめ。なのに、あらゆる立場を描くそれは恐怖そのもの。

その意味では取っ散らかっている印象があるかも。

全体的には緻密に作られたA級ホラー、初心者さんにどうぞ。

 

 

以下、ネタバレ。って言うか、私見。

 

 

原作の小説は私には合わなさそうなので、読むつもりはありません。ですので、完全に私なりの見方です。

 

なぜ、呼び名が代名詞なんでしょう?

 

何なら、最初のシーンでジョージーにペニーワイズと名乗っています。これが都度で無いから知らないのかもしれませんが、見た目的にも変態ピエロとかで呼ぶのが自然です。その呼び方では映画が終わってしまう事が発覚しました!

単体攻撃は噛み付き、幻覚を利用した物理攻撃、全体攻撃では地上波に乗せて、少しずつ人を狂わせる教育番組をテレビを媒介に垂れ流す超広範囲攻撃と、デスライトにより見る者の魂を奪うソウルスティール。当たらなければどうという事は無い。恐怖に染まった肉体が大の好物で物理攻撃はあまり通らない。心の力を、私にください。

 

船は11世紀、ラテン語、古フランス語では女性名詞であり、それが世界へ広まったと言われています。日本語は基本は名詞に性別の概念がありませんのでピンと来なくて正解です。因みに、最近ではジェンダーの観点から It(中性名詞)と呼ぶ事が増えて来ました。

 

つまり、It はありとあらゆるものを指すので、この方面でタイトルの意味するところを探るのが難しいです。

 

 

舞台はデリー、アメリカの田舎の街。お祭り等のイベントが行われて住みやすそうな雰囲気ですが、その実、殺人や行方不明の数は平均値の6倍であり、中でも子供の犠牲者数はもっと多く、27年周期で大きな事件が起きます。そこに住む人もマイノリティだったり、いろいろと複雑なようです。

 

近所のお婆さんは小さい子が大雨の中、排水溝を覗き込んでいるのに、声をかけたりしません。周囲の人に対する意識の気薄化が見られます。

 

マイクは火事を経験し、両親が焼け死ぬのを見てしまいトラウマになっています。

代々とさつを生業としている家系のようで、見習いマイクに対するお爺さんの教え方も過去の経験の所為か厳しめです。

 

ビルは弟の失踪に責任を感じており、彼を捜す事を贖罪みたく考えている様です。

本当はもうこの世に居ないと心の中では解っているようですが。

父親は既に死んだものと諦めており忘れたいようです。行方不明なら子供の死を認めたくないのが親なんじゃない?

 

ユダヤ教の指導者を父親に持つスタンリーは聖典を読む練習をしています。なのに、父親は彼に皮肉を言う始末。肯定してあげないと、何をするにも臆病な子供になってしまいます。だけど、聖典のヘブル語が上下逆さまですので、父親が正しい?

モディリアーニのジュディスの絵画が怖いようです。特に小さい頃はそういうのありますね。

 

エディの母親はエディの友人の前でもキスの強要です。(ばっちい。)母親に偏った事を散々吹き込まれた挙句、潔癖症みたいになっているのに、肝心の行動はちぐはぐになっています。ベンの治療も彼がしていましたね。

成長過程での取捨選択と言うか、もし母親以外の友達との関わりが無ければ、完全に共依存になってしまっていたでしょう。

母親としてはエディが喘息持ちなので、それが行き過ぎて過保護になり、そうなった感じでしょうか。変態ピエロの超範囲攻撃に晒されているのは間違い無いです。何せその異常性はエディに偽薬を飲ませて病気だと信じ込ませる事で、自分から離れられなくした行為にあります。それがエディにバレた時の表情が鬼気迫って怖過ぎです。

これは一見の価値があるよ!

ラストシーンの儀式でエディは仲間同士で傷口を重ね合わせて仲間の血を体内に入れていますが、これは衛生的にも非常に危険な行為です。子供が真似したらいけないのでカットするべきです。

原作は同じ意味合いを含むもっと酷い儀式でした。キング、マジ頭おかしい。

 

ベンがいじめられている現場を通りすがりの大人2人が見ていますが、助けを求めるも表情一つ動かさず完全にスルーです。

ベンは太っている自分に自信が持てないのか、ビバリーに対する好意について諦めの気持ちが先に来てしまっています。彼、イケてますけどね。

 

薬局のおじさんはベバリー(13歳)の誘惑にメロメロです。

「クラーク・ケントみたい」に返した言葉がその妻である

「ロイス・レイン」ですよ。もうね、このやり取りは身の毛がよだちました。

 

と思ったら、そもそもベバリーは父親に偏執的に愛されていて、それを恐怖に感じていました。父親は超範囲攻撃に長く晒されておかしくなっていると思いたい。あまり現実に在ると思いたくありません。

その影響によってベバリーは自身が女である事は充分に理解しているのに、女である事、特に大人の女になってしまう事が嫌なんですね。男の子だったら下着で川に飛び込むのも平気だし、誰よりも勇敢に振舞っています。でも、振りだけではやっぱり女でしかありません。

結局、ベバリーは性的虐待から逃れる為に父親をその手で殺してしまいました。恐怖を克服した事で変態ピエロに立ち向かえたものです。キスで目覚めてキスで女としてやっていく。捕まらないのはなぜなんだ。

 

不良グループのリーダー、ヘンリーの父親は威圧的な警察官。子供への教育の仕方を犯罪者と同質の物と勘違いしているようです。

そんな父親をヘンリーは文字通り震える程に恐れており、周囲に虚勢を張り、他者に暴力を振るう事で自分のそれから逃げ続けています。そのやり方ではルーザークラブと違って上手く行かないのは明白ですが、これまで述べたように碌な大人が居ませんので彼を正す事が出来ません。結果的に彼は父親を殺してしまいました。

 

リッチーはピエロが怖いと言っていましたが、それは嘘でした。その意味で下調べが足りなかった変態ピエロと戦う突破口になります。

 

 

子供達のそれは変態ピエロを指しますが、それに何を入れるかは観客の自由です。仮に「いじめ」としてみましょう。

いじめに抗えないからルーザー、その集まりでクラブ。皆で団結する事でそれに対抗出来る事が証明されました。子供の割にやる事がエグいのですが、やるなら徹底的に心を折るまではやらないとやり返されるのが世の常なんですよね。

掃除もみんなでやれば短時間で綺麗になります。仲間の協力により、ベバリーも絶対的な恐怖に立ち向かう下地になりました。

 

ここまでの強キャラの最後の言葉が

"He thrusts his fists against the posts and still insists he sees the ghost." 

だとは、恐怖のネタ切れでした。とは言え、最後までビルの吃音症は治らないのね。

 

続編は「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」です。