『窓ぎわのトットちゃん』
監督:八鍬新之介
感想
これ、劇場で何度か予告編は見ていて、「どうも僕には合わなそうだなあ」と感じていた。それでも見に行ったのは、母が「窓ぎわのトットちゃん」の話をしていた記憶があるのと、八鍬監督の『ドラえもん』が近年の中では結構良かった印象があったから(『のび太の月面探査記』は4.5をつけて「非原作」の中では最良かもしれないって書いてる)
冒頭、景色が映った瞬間、そこには1940年代の日本が広がる。ひと目でわかる。これがどれだけの資料調査に基づいたものか。片渕監督の『この世界の片隅に』を連想させる。
ところが、その印象はほどなく塗り替えられる。主人公(トットちゃん)が登場した瞬間に、「これ、やっぱ苦手かも」と思ってしまった。とにかく演技がね、表情にしろ動きにしろ過剰なのよ。「まじ作画監督だれだよ」って、しばらくのあいだ、かなりノイズになっていた(いちおう書いておくと、この作画監督が書いたEDイラストは素晴らしかったけれどね)。
ただ、それもしばらくすると慣れてくるし、舞台背景がしっかりしているから映画としての芯は外さない。美術と実話ベースの物語に相当助けられている。
もうひとつこの映画で良いと思ったのは、ちゃんとその時代に即して描いていること。どんな時代でも、その時代のなかで必死で生きた人々がいるわけで、そこに対する敬意が感じられない映画は僕は受け入れられない。この映画はそこのところがちゃんとしている。今の時代だったらアウトだと思えるような描写も逃げずに描いているから一瞬びっくりするけれど、それは絶対に必要なこと。
☆☆☆☆★(4.5)
映画『窓ぎわのトットちゃん』あいみょん「あのね」主題歌PV<12月8日(金)公開>