「異世界転生もの」がフォーマットとして優れているのは、そこで読者が現実に抱えている問題を処理できるからだ。それは時に現実逃避の色を帯びながら、そういう仕方で受容者と関わっている。時には、『私の息子が異世界転生したっぽい』のようなメタレベルでその世界と向き合う作品も生まれる。
アイドルはおそらく、また別の仕方で受容者と向き合っている。たとえば握手会やSRでの何気ない会話。公演でのアイコンタクト。関係性の美学に照らせば、それ自体が芸術的な所産なのだけれど、誰もそれに気づかないし、作品として残ることもない。(あるいは、それはディオニュソス的な芸術であって、アポロ的な芸術ではない)
アイドル界のどこにもヲタの姿が描き込まれていない。言い換えるとそれは、そこにある筈のものを作品として定着することが出来ていないということ。