周年公演の話をしたかったのだけれど…①(幕の内弁当) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

「周年公演の話をしたかったのだけれど…①」


 なんでもかんでも「個性」という言葉で済まそうとするのは逃げだ、と僕は思う。グループの勝利が目的なら敗因を考える必要があるけれど、メンバーの個性を大事にすることが目的ならそれ以上は何も考える必要がなくなるからだ。

 かつて、「個性」はAKBが勝っていくために必要な戦略だった。みんな違ってみんないい。大人数グループで、メンバーそれぞれに違いがあって、見た人は誰か一人には引っかかるだろう。そういう戦略だ。

 

 でも…いわゆる「アイドル戦国時代」に入っていくと、その戦略は無効化されていく。AKBメンバーの個性というのは「あの子と私はここが違う」というグループ内での「棲み分け」の話に過ぎない。「私はこの点なら世界の誰にも負けない」というような強い個性ではない。したがって、それはどこのグループにも備わっているものだ。

 僕はよく「幕の内弁当」という喩えを用いる。いろんな種類の食品が入っていて、その違いを楽しめる。それが幕の内弁当だ。でも、それぞれの食品が最高級のものだというわけではないから、誰にでも作ることができる。「幕の内弁当」方式自体、AKBが始めたわけではないけれど、フォーマット化してチェーン展開していったのは48だ。さらに各事務所がそれを追いかけ、同様のグループを各地に作っていく。

 

 こうして、日本中に「幕の内弁当」が広まっていった。どこでも食べられるものなら、わざわざ秋葉原に行く必要はない。そこに住んでる以外で秋葉原までコンビニ弁当買いに行く人なんていないでしょ? みんな手近なところで済ませてしまうようになり、AKBはローカルアイドル化していくことになる。

 こうした状況において重要になってくるのが、「あっちの弁当とこっちの弁当は違う」という弁当ごとの個性の違いだ。つまり、グループ内でのメンバーの個性の違い(それはどこのグループにも備わっている)ではなく、グループごとの個性の違い=グループの色が重要になってくるんだ。そうしてはじめて、遠方からもお客さんがやってくるようになる。そこでしか食べられないものがそこにあるからだ。

 

 SKEも勝っていた当時は「体育会系! 黒髪!」でAKBとの個性の違いを明確に打ち出していたし、乃木坂もやはりAKBとの個性の違いを意識していた。僕はある後輩の言葉を思い出す。「乃木坂のほうがスカートが長い」

 AKB自体のプレゼンス(存在感)が弱くなってくると、そことの差異化よりも、グループそれ自体としてどれだけしっかりとしたコンセプトを持っているかが重要になってくる。そのことを誰よりも分かっていたのは、WACKの渡辺Pだ。彼は言う。


ホントに始めたときのクソインディーズの素人のときは、嫌われないと客が増えなかったんですけど、いまは嫌われると逆に客が減る状況になっちゃった。

 

http://dailynewsonline.jp/article/1163318/

 

 BiSは、「アイドルなんてクソだ」と言っていたアイドルグループだ。既存の王道の「アイドルらしさ」にカウンターを仕掛けることで、つまり嫌われることでアイデンティティを維持していた。でも、そんな王道アイドルなんてもうどこにもいない。アイドル界は「アイドルらしくないアイドル」で埋め尽くされてしまった。

 だから、彼は方針を変えた。BiSの次にできたBiSHでは、反抗精神は鳴りを潜めている。何かに反抗して成り立つのではなく、自分自身で成り立つ、言い換えればメジャー志向になったと言ってもいい。3年前の時点で、僕はBiSHが「天下を取る」と書いているのだけれど、それはこんな理由だった↓


BiSHはおそらく、天下を取るだろう。しかしそれは、彼女たちが「アイドルらしくないアイドル」だからではなく、「パンク・アイドル」として透徹したコンセプトを持っているからだ(…というか、正直、これだけのボーカリストを抱えていると、「ミュージシャンとしての資質を持ってるやつがアイドルと言っちゃってる」…みたいな状態)
https://ameblo.jp/flowinvain/entry-12503107256.html

 

 BiSHは、グループとして明確な個性=コンセプトを持っているし、メンバーの個性もある。それも単にグループ内での差異化といった棲み分けレベルのものではなく、日本の中でも有数のボーカリストという強い個性だ。だから強い。しかも松隈サウンド。

 AKBはいったい、これにどうやって勝つのか。それを考えるべきなのに、いまだに「個性を大事に」とか決まり文句のように繰り返されるのを聞くと、頭が痛くなってくる…という話。別に個性はあっても良いけれど、それはいったい何のための個性なのか。

 本当は周年公演の話をしたかったのだけれど、前置きが長くなりすぎた。つづきは次回。

 

 

BiSH / オーケストラ [And yet BiSH moves.]@大阪城ホール