AKBの話をしよう(PRODUCE48その4)
前回、『PRODUCE48』での人気投票は、スキル、ルックス、タレント性が重視されているという話をした。じつはもうひとつ重要な要素があると思う。それはドラマ性だ。
もちろん、ドラマは世界中あらゆる国で力をもつ普遍的なもの。
日本のアイドル界で先駆的な役割を担ったのは、「平家みちよ」が合格したオーディションに落選した子たちだった。課されたのは、CDを5万枚売ったらメジャーデビューという条件。みずから手売りをする様子が番組で流され、彼女たちは見事に売り切った。彼女たち…「モーニング娘。」が革新的だったのは、そうした裏側のドラマをコンテンツとして見せることにあった。
48においても、ドキュメンタリー映画や総選挙の舞台上でドラマ性は発揮されていた。ただ、ぼくが思うに、48で真にドラマ性が発揮されるのは、むしろファンとメンバーとの一対一の関係においてだ。握手会、SNS…ファン一人一人との小さなドラマが束になって、それはやがて大きな力を生む。48はそうして巨大化していった(逆に言えば、そうした小さなドラマの価値が分からなければ、48の真の価値も決してわからない)。
少し話が逸れた。『PRODUCE48』では、ドラマ性を活かそうとする演出が各所に見られる。とりわけ感じられるのは、意図的に「不公平」な状況を作り出しているということ。ただし、この不公平さは、それがそのまま温存されるのではなく、むしろ乗り越えられるべきものとして提示される。そうして、それが乗り越えられるとき、ドラマが生まれる。
たとえば、ある回のパフォーマンス審査。この審査は別の組との直接対決で行われ、現場投票でその対決に勝てばチームメンバー全員にそれぞれ1000票が加算される。チームメンバーは候補生がみずから選んでいったのだけれど、当然、強い子…つまり、スキルの高い子、人気のある子から順に選ばれていった。
興味深かったのは、ドラフトのように、1巡、2巡…と指名していく形ではなかったこと。そうではなく、まずある候補生がチームメンバーを全員選び、またその次の候補生が全員選び…という形。必然的に、最初の候補生が選んだチームは超強豪(アベンジャーズ)となり…そして、最後まで選ばれなかったメンバーは「あまりもの」チームとなった。
千葉恵里(23位/F)、カン・ヘウォン(41位/F)、浅井七海(42位/D)、佐藤美波(59位/F)、浅井裕華(83位/D)、ハン・チョウォン(88位/B)…(投票順位とスキル評価は当時)
なお悪いことに、パフォーマンスする楽曲と対戦相手を選ぶ権利も、彼女たちにはなかった。徒競走対決で負けてしまったからだ。結果、選ばれた曲はBLACKPINK「BOOMBAYAH」…ゴリゴリのラップ曲。「ムリです…」と泣き出してしまうメンバーたち。
しかも、指名してきた相手は、人気こそ低いものの、スキル面では実力者揃いのオール韓国人チーム…コ・ユジン(26位/A)、 キム・ソヒ(48位/B)、パク・チャンジュ(71位/D)、 ウォン・ソヨン(90位/F)、イ・チェジョン(92位/C)
スキル対決では逆立ちしたって勝てない。「あまりもの」チームにはまともにラップできるメンバーさえいない。しかも、「子ども」メンバー(千葉&佐藤)はレッスンが始まっても死ぬ気でやろうという姿勢にならない…。苦悩するハン班長、厳しい言葉で叱咤するトレーナーたち。ただ黙り込む子どもたち…これはもうアカン…。というところで、トレーナーがこんなことを言った。
「これは大事なことなんだけれど…わたしたちは審査員じゃない。あなたたちの助っ人なの。あなたたちは視聴者から評価されるの。お願いだから何か言って。わたしたちが力を貸せるように言葉を発して!」と。
この先生、いいヤツじゃん!←心の声
そんな言葉が響いたのか、それともその後のチーム会議で何か感じるところがあったのか、次の日のレッスンでは、えりい(千葉恵里)が自らハン班長に教えを乞いに行くシーンが見られた。
えりいが立った!(クララが立った!)SRで実況配信していたゆいりーも拍手。
そして迎えたパフォーマンス当日。いまさら言うまでもないけれど、えりいたちBOOMBAYAH2班は、現場投票で1班に勝利。ベネフィット1000票を得た。
上の動画を見ても分かるように、パフォーマンスの質では明らかに負けていたように思う。でも、人の心を打つのは単にそれだけじゃない…ということをこの回を示していた。頑張る姿勢が心を打つというのは、韓国でもそんなに変わらないらしい。
「あまりもの」が集まったBOOMBAYAH2班のこの「奇跡」は、小さな話題を呼び、とくにチームを引っ張った韓国人2人…ハン班長と、苦手なラップを自ら引き受けて頑張ったカン・ヘウォンは、その後の投票でも大きく順位を伸ばした。
つづく